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新連載 PB徹底分析! 使ってみてわかった! 「ビオラル」の意外な魅力とは

食品小売の商品政策(MD)において、プライベートブランド(PB)商品はもはや珍しいものではなくなった。近年はスーパーマーケットだけでなく、ドラッグストアなども食品PBを積極的に投入しており、あまり知られていない優れたPBも多数存在する。PBがあふれるようになった現在、どんなPBが消費者から支持を集めているのだろうか。大手小売のグロサリー部門を担当していた松永進之介氏が、小売業各社のPB商品を現場目線でレポートする本連載。第1回は、スーパーマーケット大手のライフコーポレーション(大阪府:以下、ライフ)が展開するナチュラル・オーガニックブランド「BIO-RAL(ビオラル)」を解説してもらう。
※本文中の価格はすべて本体価格

大船駅前店が入居する大型複合施設「グランシップ」
大船駅前店が入居する大型複合施設「グランシップ」

「ビオラル」商品を実際に購入!

 連載第1回で取り上げたいのは、ライフが展開する「ビオラル」だ。ビオラルの商品、売場を確認するため、2021年2月にオープンした同社の大型店「ライフ グランシップ大船駅前店」(神奈川県横浜市;以下、大船店)に足を運んだ。

 まず、ライフでは「ビオラル」のほか、自社PBの「スマイルライフ」、プレミアムラインの「ライフプレミアム」に加え、ヤオコー(埼玉県)との共同開発による「スターセレクト」を大きく4つのラインでPBを展開している。

 ビオラルがこれまでのPBとの大きな異なるのは、1つのブランドとして単独で店を出店しているという点だ。小売発祥の商品ブランドをそのまま店として出店していくのは、会社としてもかなりの熱量を込めた取り組みということがわかる。そんなビオラル商品と売場展開について紹介していきたい。

 まず、筆者が気になった商品を紹介していく。店内を歩いていると、ビオラルPBの中でもPOPヘッダーが「BIO-RAL」ではなく「おすすめ」となっているものがあったため、それらの商品をいくつか購入した。

 最初に紹介したいのが、「化学調味料不使用のポテトチップスうすしお味/コンソメ味」(98円)である。

 オーガニックや無添加、環境配慮型の商品は、通常の商品と比べて単価が高くなるが、そうした商品が実際にどういうものなのか気になっているという方には手が出しやすい価格帯およびアイテムである。

 中身を見てみると、ポテトチップスは薄切りにカットされており、食感もよい。化学調味料不使用とあって優しい口当たりで、とても食べやすい印象を筆者は受けた。低単価であるため、消費者にビオラル商材を知ってもらうためにはよい商品と言える。それだけに、ビオラル店内や地下の「ライフ」でも、定番売場だけでの展開だったのが少々もったいなく感じた。

意外と安い? “ビオラル入門”となる商品

 続いて見ていきたいのが、「有機麦茶 32袋」(258円)である。

 麦茶パックもコンスタントに売れる商品のひとつである。同商品の最大の特徴は、有機JAS規格の認証を受けているという点だろう。麦茶は1日の中でも口にする機会が多い商品であるため、ブランドを知ってもらうためのアプローチに適した商品である。大人だけではなく子供も飲用できるため、販売しやすい商品とも言えるだろう。

 先述のポテトチップスと同様に、この商品も良心的な価格設定となっている。イオン(千葉県)が販売する「トップバリュ グリーアイ」の「オーガニックむぎ茶」は24袋入で298円なので、ビオラルの方が安い。安価で買えるのはやはり大きな強みである。

 「おすすめ」で最後に紹介する商品は「国産小麦まるごと全粒粉うどん」(本体価格278円)だ。

 こちらのうどんは200g(2人前)で278円と、やや高めの価格設定となっている。既存のうどんとの大きな違いは「食物繊維を豊富に含んだ全粒粉100%使用のうどん」というところにあるだろう。

 こちらの商品には、手書きPOPが添えられており、「1食で約1/3日分の食物繊維が摂れる」「鉄分やビタミンB1も含まれる」と商品の特徴がわかりやすく伝えられていた。うどんは定番的なアイテムであり、乾麺、生麺、冷食などで多くのPBが出ているが、このような特徴的な商品はそう多くない。実際に同商品を茹でて食べてみたが、通常のうどんと同様においしく食べることができた。「健康志向で食生活を気にしているものの、食事はおいしく召し上がりたい」という方におすすめしたい商品である。

高価格な高付加価値商品も!

 次に「お試し価格」というPOPヘッダーで目に留まった商品を紹介する。最初に見ていきたいのが「高知県産生姜汁を使ったジンジャーエール」(お試し価格198円)だ。

 ジンジャーエールとしては高価格となるこちらの商品は、着色料や香料が不使用となっているほか、生姜汁が11%含まれており、味や香りも一般的なジンジャーエールとは全く異なる商品に仕上がっている。筆者も実際に飲んでみたが、味が濃く、非常に満足できる味だった。ただ、売価の高さもあり、販売者としては消費者に対して普及品のジンジャーエールとの違いを大きくアピールしないと販売が難しいであろう。

 食品では総菜の取り扱いもあり、総菜売場で販売していた弁当を購入してみた。「お弁当・お惣菜大賞2022」でも入選している「国産有機玄米と鮭ハラス塩麹焼きの海苔弁当」(本体価格980円)だ。

 

 弁当で980円(税込1058.4円)となると、「デパ地下か!?」という印象になる消費者もいることだろう。量も決して多くないが、塩麹で旨味を引き出した「鮭ハラス」、店内で手焼きした「だし巻き玉子」を使用した、こだわりの位置付けの商品とみられる。

 また、種類は少ないものの、ビオラルではノンフーズ商品の展開も一部あったため、簡単ではあるが紹介する。ドッグフード・キャットフードと重曹である。

 ドッグフードとキャットフードはビオラル店内でもフェースが多くとられており、視察日には広告商材やアプリでのポイント付与などのプロモーションも行われていた。

PB拡販の難しさ

 ここまでは商品について見てきたが、ここからは売場や販売方法にフォーカスしてみたい。

 まず前提としてPBの販売は、現場からするとかなり難しい。筆者も小売チェーンの現場で働いていた時は、PB拡販を意識してきたが、消費者はNB(ナショナルブランド)商品を求めることが多いと常に感じていた。それでも、大々的なエンド展開や販促物の徹底、NB品との比較販売など、PBの販売には徹底して力を入れてきた。

 それぞれの商品群において、PBが売上点数1位となるケースは珍しいかと思われる。ただ、従来のPBはNBより価格も安く、その点ではまだ、大きく区別できる点があっただろう。

 今回取り上げたビオラルは、紹介してきたとおり、価格が高い。もちろん、一般的なオーガニック商品と比べたら安いが、普段からこのジャンルを購入している層は、価格よりも品質を気にしている方が多いと思われる。それを踏まえると、こうしたジャンルを買わない層へのアプローチがもっと必要になるのでないだろうか。

もっとアピールできる!? 課題は売場での展開!

 今回、売場に足を運んでみて気になったのは、売場でのアプローチや商品展開が物足りないという点だ。食べたり使えば価値を感じられる商品が並ぶだけに、もったいないと思う。とくに大船店は地下にある「ライフ」とうまく連携が取れていないように感じた。

 地下にスーパーマーケットがあるのであれば、エンドやクロスMDの展開を強化するなど、ビオラルに興味を持ってもらうための取り組みができるはずだ。ほかの既存店ではビオラルを集合展開をしていることも多いが、1階にビオラル店舗がある大船店では、「ライフ」売場でのビオラルの展開が少ない印象を受けた。

既存の「ライフ」店舗では、ビオラルを集合展開しているケースも多い(写真は『ダイヤモンド・チェーンストアより』)

 店内にはいくつかはエンド展開やクロスMDがみられたが、陳列量も多くなく、売場ではあまり目立っていなかった。先ほど紹介したジンジャーエールも飲料売場のエンドに展開していたが、棚1枚のみの陳列で、商品のよさや特徴が伝わらず、高いジンジャーエールが並んでいるだけという印象を受けてしまうお客もいるだろう。

 もちろん、売場スペースやバックヤードにおける在庫量、年間契約などの投入……と現場にはさまざまな事情があり、ビオラルのみを拡販するわけにはいかないが、「今はブランドの成長期」と思い切って、販促物を含め大々的に売場での展開を強化してはいかがだろうか。

 オーガニック市場は年々拡大しており、消費者の健康志向も高まっている中、ビオラルというPBが今後拡大を続けていくのは間違いない。商品開発、売場展開を含め、ビオラルの発展に期待したい。