秋は年末商戦に向けてどれだけ準備を整えられるかが問われる季節である。しかし、猛暑と疫病の影響で国産原材料の供給は不安定化。さらに、円安による輸入肉の価格高騰が続き、精肉部門は差別化が難しい環境にある。
こうした中、いかに競争力を上げ、売上と利益を確保するか。本稿では、9月から11月に精肉部門で取り組むべき具体的な商品施策を解説する。
市況分析&今秋の方向性
畜種や部位より調味料の品揃え拡充を
ここ数年、「一年の半分が夏」といえるほど気温の高い日が増えている。夏季に激しい熱波が到来すると、肉豚の出荷予測数量が平年を下回ることは避けられない。豚熱や鳥インフルエンザなどが発生した場合は、原材料の供給はひっ迫していくことが予想される。
2025年は大阪・関西万博の開催に伴うインバウンド消費も考慮に入れた販売管理が求められる。開催地となる大阪府や関西地方の地元商品にフォーカスしたプロモーションが計画されるだろう。しかし、精肉部門が最も注力すべきは、年末商戦につなげるための商品力の強化である。
その一環として、商品に関する情報発信を徹底したい。たとえば、牛豚の合い挽きミンチは価格表示に加え、原産地、牛肉と豚肉の配合割合、解凍工程の有無といった情報を消費者に明確に伝えなければならない。単に安さを訴求するのではなく、商品の品質と価値をしっかりと情報発信することが重要である。
また、鍋スープ、焼き肉のタレなどのバリエーションの多寡も売上を左右する1つの要素だ。地域に根ざした焼肉店や和食割烹店には、店の数だけ個性あるタレやスープが存在しており、実に多様だ。顧客が求めているのは、畜種や部位よりも、こうした豊富な調味料の選択肢であることは明らかである。そのため、畜種や部位にこだわるよりもタレやスープなど、調味料の品揃えを充実させることをおすすめする。
このほか、店舗独自の「味」をつくり出すなど「調味」による売上拡大の可能性は十分にある。その好例が「ハニーマスタード」だ。酸味が利いたマスタードと甘いはちみつがシナジーを生み、過去3年間でローストビーフなどの肉総菜の売上を飛躍的に伸ばした。肉総菜においても、店舗オリジナルの「ソース」と「タレ」が欠かせない存在となっている。
年末商戦では、重点商品となる黒毛和牛A4ランク以上の肩ロースとモモ系の部位の在庫を確保しておく必要がある。
一方、需要が本格化するまでは、
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