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2022年の家飲み市場はどうなる?ねらい目は「誰かと家飲み」と「即食&トレンドおつまみ」

コロナ禍により大きく拡大した家飲み市場。コロナ禍3年めとなる2022年の市場動向について考察を行った。また、家飲みマーケットの現状をシーン、年代、おつまみなどさまざまな軸から分析することで変化する家飲みニーズをつかみ、生活者により喜んでもらえるためのヒントを提案したい。

家飲み市場のこれから

 CRESTによると8月の飲食店全体の実績はコロナ禍前の2019年8月比で57.7%であるが、居酒屋業態は同12.9%と緊急事態宣言が大きく影響して非常に厳しい状況が続いている。METIPOSによると小売店のアルコール飲料の8月実績は19年8月比でドラッグストア118%、スーパー107%、コンビニ96%となっており外飲みができない分、家飲み市場はコンビニを除き拡大してきている。

外飲み、家飲みに大きな影響を与えていた緊急事態宣言は10月に解除され、これに伴い飲食店で酒類の提供が再開、家飲み市場は今後どのようになっていくのだろうか? i-stock/recep-bg

 外飲み、家飲みに大きな影響を与えていた緊急事態宣言は10月に解除され、これに伴い飲食店で酒類の提供が再開、家飲み市場は今後どのようになっていくのだろうか?

 緊急事態宣言が家飲み市場に及ぼす影響をKSP-POSで分析してみた。【図1】は1.緊急事態宣言、2.まん延防止等重点措置、3.何も発出されていない期間と21年を3つに分けてそれぞれの期間中の首都圏の食品スーパーの酒類の19年同期間比を見たものである。緊急事態宣言中は113%と大きく伸びており影響の大きさがわかるが、一方で何も発出されていない期間でも107%と増加しており、宣言が出ていなくても外飲みが自粛されている背景がうかがえた。博報堂生活総合研究所の「新型コロナウイルスに関する生活者調査」(調査期間:2021年4月)によるとコロナ禍後でも今の生活を維持したいと考えている生活者は56.3%と過半数を超えている。イギリスやイスラエルなどワクチン接種が日本より進んでいる国でも新規感染者数は明確な減少傾向になっていない。22年1月に第6波の可能性が示唆されている。これらの状況を考慮すると感染予防をしながら生活するという習慣が維持され、今後の家飲み市場は19年比で110%前後程度で推移していくことが予想される。

出典:㈱KSP-SP「KSP-POS」より食未来研究室作成
※2021年1月4日~9月19日までの期間。各期間は東京都。
酒類の売上は首都圏の2021年と2019年の同期間の比較。

 家でお酒を楽しんでもらい市場を活性化していくために、コロナ禍における家飲みでどんなシーンが増えてきているのか?どんなコトが求められてきているのか?家飲みマーケットの詳細を見ていきたい。

「1人」で家飲みは減少「誰かと一緒」に家飲みが増加

 コロナ禍前とくらべて、家飲みは誰のどのようなシーンが伸びてきているのだろうか?【図2】はそれぞれの家飲み機会数について、2021年1月-8月と19年同期間との増減数を算出することで、どのような家飲みが増えているのか減っているのかを調べたものである。

出典:エヌピーディー·ジャパン㈱「CREST」より食未来研究室作成
※2021年1月~8月と2019年同期間の比較。

 大きな傾向としては「1人」で家飲みするシーンは減少し、「誰かと一緒」に家飲みする機会が増えたと言える。飲食店でお酒を楽しみながら皆でワイワイする、というシーンがコロナ禍で難しくなり、「飲食店」から「家」へと場所がシフトしていることがうかがえる。コロナ禍前の家飲みとは「家で1人お酒をじっくり味わう」というものだったが、コロナ禍での家飲みにおけるお酒の役割は「会話と一緒に楽しむコミュニケーションツール」としてのウェートが高まっていると考えられる。

 また、年代別の動向はどうなっているのか?【図3】はスーパーでのアルコール飲料の若年層(20-40代)と高齢層の(60-80代)の売上金額について19年9月から12カ月移動平均をとり、その推移を指数で表したものである。高齢層も増加していたが直近では減少傾向になってしまっている。若年層の伸びが大きく、高止まりしていることから家飲み市場はとくに若年層が大きく牽引していることがわかる。

出典:マギー㈱ i-codeMSデータより食未来研究室作成
※2019年9月~2020年8月の売上を1とした12か月移動平均値の指数

若年層を取り込めるトレンドをおさえたおつまみ提案を

 クラフトビールやノンアルコールビール、ハードセルツァー(アルコール入り炭酸水)など比較的新しいカテゴリーは若年層の売上構成比が高く、彼らがトレンドに敏感であることを示している。お酒のおつまみとなるものについても同様のことが言え、定番のおつまみ以外にも飲む席で話のネタになるようなトレンドを意識した品揃えを考えていく必要がある。

 今の大きなトレンドのひとつとして、手づくり疲れが顕著になってきていることがあげられる。定番つまみの餃子でデータを見てみよう。

 【図4】はアルコール飲料と一緒に買われる餃子関連商品の推移を見たものであるが、餃子の皮が2021年の2月をピークに減少傾向が続いており、逆に即食できる餃子総菜が大きく伸びてきている。去年は手づくり餃子がトレンドだったのでチーズやキムチなどの餃子のタネやつけだれの提案が効果的だったが、今はご当地餃子企画などを総菜部で展開するほうが生活者に喜んでもらえるのではないだろうか。

出典:マギー㈱ i-codeMSデータより食未来研究室作成
※2019年9月~2020年8月の売上を1とした12カ月移動平均値の指数

 スーパーでアルコール類と一緒に買われやすいカテゴリーについて「トレンド好きの若年層」、「即食品シフト」というキーワードを反映させた展開事例を表にまとめたので参考にしていただきたい。

 コロナ禍により外出が制限され楽しみが減った分、家で刺激を求める傾向が増えてきている。「香り」もその一つで、さまざまなフレーバーの中で「燻製、スモーク」商品が伸びてきている。アルコール飲料との相性もよいのでつまみ菓子や加工肉でこれらの商品の品揃えを検討していただければと思う。

 また、若年層でお刺身の購入が19年9月比で118%と大きく伸びてきており、丼や手巻き寿司などでよく食べられている。高齢層はそのままお刺身として食べるが、若年層はお米や野菜などと組み合わせて食べることが多いので、カルパッチョやセビーチェなど生活者の検索頻度が増えてきているメニューの総菜化はねらい目であると思われる。

 から揚げも定番のつまみだが、直近ではたれが絡んでいるから揚げが人気になってきている。ヤンニョムチキンは若年層に人気の韓国由来のメニューで、すでに総菜品や冷凍食品で商品化されている。同じく韓国料理でフライドチキンに甘辛い味のハニーマスタードを絡めて食べる韓国風フライドチキンや、アメリカ風中華の定番オレンジチキンなどもおつまみアイテムとしておすすめである。

食未来研究室ホームページ : https://nsk-shokumirai.com/