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商機はワインの選び方提案にあり!明治屋、マルエツが進めるデジタル活用

お酒を楽しむ機会は、まだ当面のところ家庭内が中心になりそうです。家飲みといってもいろいろですが、食事と共にちょっとしたハレ感を演出したいと考えるなら、やはりワインではないでしょうか。食品スーパー各社も食卓提案に欠かせないキーアイテムとして、ワインにはコロナ以前から力を入れてきました。今回は、ワインをめぐるスーパー各社の最新の取り組みをまとめ、家飲み需要の獲得のヒントを提示します。

たくさんのワインから1本を選ぶことの難しさ

ライフ最大パターンとなるワイン1000品を集積したグランシップ大船駅前店の売場演出

 ワインは単品のクオリティも大事ですが、カテゴリーとしてバラエティを揃えることも欠かせません。さまざまな目的に合わせて選べることが重要です。ワイン売場に200品も揃っていれば相当な印象を与えますが、多少とも専門店風に力を入れた売場になると、品数が400~500品になることも珍しくありません。21年3月オープンのライフグランシップ大船駅前店(横浜市栄区)に至っては、同社最大パターンの1000品を取り扱います。

 ただ、そのときどきに合わせて選べることがワインの楽しさといっても、何を基準に選ぶかとなると、それなりに難しいカテゴリーではあります。私なども「今日はカベルネ・ソーヴィニヨンから選びたい」くらいの気を起こすこともありますが、それ以上の何が分かるわけでもありません。それどころか、以前に買った商品の名前もラベルも覚えていなければ、価格の記憶も消えているので、自分のお気に入りさえ把握できません。どうにかリピートできるのは、馬とかアルパカとか動物のイラストが描いてある場合に限ります・・・。

 何百品もあるワインを前に、知識なし記憶なしのまっさらな状態から今日の1品を選ぶというのは、ワイン市場のボトルネックではないでしょうか。ずらりと並ぶボトルの外見からでは想像しづらいワインの中身をどのように伝えるか、売場は工夫を重ねています。 

書き込みきれない情報はディスプレーで拡張

明治屋PROVISIONS & WINES浦和に導入されたサイネージ

 ワインの個別情報を接客で伝えることができたら、顧客満足は高いものになるでしょう。ただしセルフサービスのスーパーで、全ての顧客を相手にそうはいきません。そこでPOPとか、プライスカードのスペースにも情報を盛り込もうと努力します。しかし狭いところにいくら情報を載せようとしても、伝えられることは限られます。がんばるほどに字も小さくなってしまいます。

 もっと大きく情報を表示する工夫はないのか? 明治屋が3月に開設したPROVISIONS & WINES浦和(さいたま市浦和区)にありました。プライスカードを掲示する棚前面がタッチパネルになっていて、知りたいワインの値札に触れると後方の大きなディスプレーに詳細情報が表示される仕掛けです。

 このサイネージ、操作性はとても直感的ですし情報も見やすいのですが、なかなか高額なようで、同店ではプロモーション用に限定した実験導入だそうです。約300品ある同店のワインの中から選ばれた6品だけが、その詳細情報を見ることができます。しかし、たとえ全ての棚に導入したとしても、ディスプレーをどのように配置するかで悩みそうです。棚のスペースには限りがあるからです。

スマホなら全商品の情報チェックも可能?

マルエツ全店で「SAKELAVO Camera」に対応

 顧客が手にするスマホを活用すれば、ディスプレーを置くスペースの問題は解消されます。マルエツは3月に、スマホのカメラで商品バーコードをスキャンすると、詳細情報が表示されるアプリ「SAKELAVO Camera」をほぼ全店で利用可能にしました。

 アプリはベンチャー企業のSAKELAVOが開発したもので、ワイン約6000種類の分析データに基づき、その商品の味わいを2次元マップとレーダーチャートで表現します。主観ではなく科学的に「味わいの見える化」に取り組むという斬新なアプローチです。

 買物時にこのアプリを使用してみたところ、産地や商品紹介と共に表示されるデータは興味深いのですが、売場にある多くのワインを気の済むまでチェックするのは無理、とも感じました。家でゆっくり考えたい・・・。そのためにはスキャンしたワインのデータを履歴として残して欲しい・・・。アプリの今後に期待です。

そこに現物がある店舗の訴求力はあなどれない

 商品のことをより深く知るには、やはりネットが優れているようです。メーカーは当然、自社商品についてHPで情報発信しています。SNSの有名どころをカバーするだけでなく、キリングループのように、オンラインのメディアプラットフォーム「note」を使う企業も出てきました。noteは広く読み物を集めるサイトで、これを利用するメーカーは、商品に関するストーリーをじっくり説明するといった使い方をしています。

 スペースに制約されないネットは、情報提供の量では有利ですが、実際に購入するかしないかの判断となると、リアル店舗の訴求力は決してあなどれません。

 個人的には、ネットだと「お気に入り」に登録していつまでもそのままということもありますが、店舗では即決で購入することの方が多いように思います。大量陳列されていれば目につきますし、やはり現物がそこにあると違います。

 要するにネットとリアルのいいところを融合すべきということなのですが、試行錯誤が続きそうです。ワインのようにバラエティ豊富なカテゴリーだと、選ぶ楽しさをいかに提供するかも奥が深いと感じます。