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蒼天を衝くか?東京老舗製麺メーカーが商品化した、渋沢栄一の愛した“スーパーフード”とは

40年以上の歳月で約300万食のロングセラー商品「満さくうどん」シリーズを造り続ける乾麺メーカーの玉川食品株式会社(東京都北区/関根康弘社長)は、「いいものは、いい」の家訓を引き継ぐ製麺業界で注目される企業の一つである。今では都内唯一となった自社乾麺工場を持ち、同社の製造する2商品は、東京都北区の実施する同区の著名人であり、新一万円札の顔にもなる渋沢栄一のPRを目的とした「東京北区渋沢栄一プロジェクト」の助成対象事業にも選定された。本記事では、その模様をレポートする。

渋沢栄一に関連した新機軸の商品を開発

 玉川食品は創業が昭和10年の老舗。麺好きの間ではファンも数多く、“東京のうどん”“満さくうどん”で知名度の高い乾麺メーカーである。昔ながらの独特な製法を引き継ぎ、人手間をかけた伝統職人技を活かした商品開発を特徴としている。老舗麺屋「江戸玉川屋」として、宮内庁の御用達品や、業務用麺や給食麺(都内6区、175校の学校給食指定工場認定)、一般消費者向け商品を製造する。 製造するのはうどん、そば、冷麦などの和麺だけでなく、パスタ、中華麺なども幅広く手がける。

 2020年始めからのコロナ禍で、休校による給食の中止や、外食需要の減少などにより急激に売り上げが減少したが、捲土重来の精神と反転攻勢の経営姿勢に立ち返った。
 その中での取り組みの一つが、前述の「東京北区渋沢栄一プロジェクト」への参加である。商品開発の面では1年以上前から準備を進め、渋沢栄一の生涯を描いたNHK大河ドラマ「青天を衝け」の放映開始に合わせ、販売に踏み切った。

 渋沢栄一にちなんだ新商品は、 「オートミール&プロテインパスタ」と「オートミール&プロテインうどん」(いずれも1袋100g/本体価格400円)の2商品。「渋沢栄一翁が晩年愛したスーパーフードにプロテインをプラス」したことが特徴の商品だ。パスタのパッケージオモテ面にはデフォルメした40代の渋沢栄一の似顔絵を、うどんのパッケージには60代のものを使用。前述の文言も大きく掲載し、渋沢栄一を深く印象付けるパッケージになっている。いずれの商品にも使用されているオートミールは、ビタミン・ミネラル・食物繊維が豊富な食材で、さらに、そこにタンパク質(プロテイン)を加えた。

「いいものは、いい」というシンプルな商品開発

 同社の関根康弘社長はこの取り組みについて、「わが社が北区にあり、渋沢栄一ゆかりの土地であることが商品開発の始まり。大河ドラマや2024年には新一万円札の図柄にもなることを追い風に、“渋沢ブーム”に積極的に取り組んでいきたいと考えている」と語った。

東京都北区・飛鳥山にある「渋沢×北区 飛鳥山おみやげ館」

 今回開発した2商品は、かつて渋沢栄一が邸を構えた東京都北区・飛鳥山にある「渋沢×北区 飛鳥山おみやげ館」をはじめ、生地である埼玉県深谷市の「渋沢栄一 青天を衝け 深谷大河ドラマ館」の土産コーナー、同区赤羽駅附属の商業施設「エキュート赤羽」などでも販売されている。「大河ドラマ放映開始(2月14日)以来、新商品の売れ行きは上々で、着実に売れている手応えを感じている。自社WEB サイトでも注目を集めており、コロナ禍が続き自宅での調理が好まれる傾向と、世代を問わず食べやすい麺という形で栄養を摂取できることがその要因ではないかと考えている」(関根氏)。

 さらに、北区以外のスーパーマーケットやショッピングセンターからも問い合わせが増え始めている。 しかし、単に渋沢栄一に便乗した商品が売れるというものではない。東京都北区という土地に根付いた企業であること、渋沢栄一が栄養食品として晩年愛したオートミールといった、深いつながりを重要視した商品を、伝統的な職人技を用いて製造していることが成功の秘訣だ。

 三代続く同社の商品開発のモットーは「いいものは、いい」だ。シンプルに商品の良さを追求する、玉川食品の新機軸の展開を注視したい。