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コロナ禍における「家飲み」の実態と市場拡大のヒント

新型コロナウイルス感染拡大による外出自粛の影響で、家飲み需要が拡大している。そこで今回は家庭の食卓を継続的に観察してきた食MAPデータから、コロナ禍における「家飲み」の実態にスポットをあて食卓傾向を探っていく。

ahirao_photo/i-stock

家族世帯、単身世帯ともに家飲みが増加

 家庭内で飲酒をした割合(以下「飲酒率」)は1回目の緊急事態宣言が発令された2020年4月~5月にかけて大きく増加した後、2021年2月時点においても前年と比べ高い水準を維持している。とくに主人の飲酒率の増加が大きく、次いで主婦となる。主人と主婦の推移を見ると、増加のタイミングが重なっており「夫婦飲み」需要を推測することができそうだ。単身世帯は、家族世帯と比べると増加幅は少ないが、前年と比べ増加傾向となり「家族世帯・単身世帯」ともにコロナ禍において家飲みが定着している【図表①】。

分析期間:2020/3/1~2021/2/28 食卓機会:夕食
出典:食MAP®
※飲酒率:夕食で飲酒をしたメンバーの割合

主婦世帯のおつまみは「食事メニュー」、単身世帯のおつまみは「菓子類・野菜」

分析期間:2019/9/1~2020/2/29、2020/9/1~2021/2/28 食卓機会:夕食
出典:食MAP®
※通常差=アルコール同時TI値-通常TI値 ※前年差=2020年度アルコール同時TI値-2019年度アルコール同時TI値 ※前年差がプラスのメニューを表示

 図表②は2020年9月~2021年2月期にアルコールと同時飲食をしたつくり方別メニューを、通常差順にランキングしたものだ。通常差からはアルコールとの相性を把握することができ、前年差からはトレンドを把握することができる。主婦世帯は魚介の刺身・たたきやにぎり寿司などの「鮮魚」、キムチ・カクテキやぬか漬け、野菜のマリネなどの「漬物類」、ハムそのまま・しゃぶしゃぶ・焼き鳥などの「肉メニュー」がアルコールと相性がよく、前年と比べ増加している。主婦世帯は、おつまみに「食事メニュー」を選ぶ傾向が読み取れる。

 また、ランクインしているアイスクリームの同時出現TI値は、主人:17.1、主婦:29.9となり、主婦が牽引していることもわかっているため、ターゲット訴求が効果的だ。

 単身世帯は、より手軽に食べられるポテトチップスやその他ナッツ類などの「菓子・ナッツ」を選ぶ一方で、ミックス野菜サラダやかぼちゃの煮物、鶏肉と野菜の和風煮などの「野菜メニュー」がアルコールと相性がよく、前年と比べ増加している。単身世帯がおつまみに野菜をうまく活用して、栄養バランスを気にしている点は興味深い。

 主婦世帯・単身世帯のいずれも、総菜や市販品、残り物を活用している点は共通しており、おつまみ市場において「簡便」、「即食」がキーワードとなる。

 家飲みが増加し、おつまみを毎回手づくりする作業は簡単なことではなく、さまざまな選択肢を駆使することは合理的な行動ともいえる。また、簡便傾向が高いおつまみの中にも世帯構成による違いがあるため、より細やかな提案が必要となりそうだ。

※食MAP®データにつきまして無断転載は禁止とさせていただきます。