2019年は欧州産ワインに押され、チリワインのシェアは少し下がったものの、輸入スティルワインでは依然として高い構成比を占めている。ワインユーザーからは品質や味覚がよく、コスパが高いワインとして認知されていることから安定した需要を続けている。
20年も引き続きチリワインの強さは健在
昨年10月の消費税増税後にワイン需要は一時的に落ち込んだものの、その後徐々に回復し、新型コロナウイルス感染拡大に伴う「巣ごもり需要」により、輸入スティルワインの販売金額は4月から前年を大きく超えて推移している。
一方、原産国別販売金額では依然、チリワインがトップをキープ。インテージSRIによると、量販市場の輸入スティルワイン(非発泡性ワイン)の原産国別販売金額において、チリワインのシェアは19年7月~20年6月累計で40.25%。前年を1.07%下回る結果となった。2位のフランスは24.14%で前年の横ばい、3位のスペインは10.51%で前年の0.6%増、4位のイタリアは8.96%で前年の0.62%増となった。欧州産ワインが伸びているのは、昨年2月の欧州EPA(経済連携協定)発効により、欧州産ワインが値下げとなったことが需要増につながったようだ。
チリワインは前年よりもシェアを落としたとはいえ、構成比をみれば圧倒的な強さで、コストパフォーマンスの高さや品種の多さなどを理由に、ユーザーから支持されていることは間違いない。
今年10月の酒税改定による消費への影響が懸念されるが、コスパの高いチリワインを中心に訴求することで、需要の拡大を図りたいところだ。
消費の二極化がさらに加速ニーズに対応した品揃えが課題
新型コロナウイルス感染拡大により、節約意識がいっそう高まり、出費を抑える層が増える一方で、コロナ以前とあまり変わらない消費活動が可能なユーザーも一定数存在し、消費は二極化が進むことが予想される。
その点、チリワインは幅広い価格帯が揃っているため、それぞれのニーズに対応した品揃えが可能だ。ボリュームゾーンである低価格ワインで好調なのが、「フロンテラ」ブランド。リーズナブルな価格でありながら、単一品種でつくられており、品種による味わいが楽しめるのが魅力だ。昨年3月に発売した「フロンテラ ピノ・ノワール」は、コストパフォーマンスのよさがユーザーから高い評価を受け、好調に推移している。この秋には1500mlペットボトルの大容量をラインアップした。
また、ブドウの収穫方法や収穫時間、ワインの製造にこだわったワンランク上の「フロンテラ プレミアム」も好調に推移。この秋は、いつもの総菜やお肉を簡単にアレンジしたレシピとワインでプチ・プレミアムな時間を楽しめることをSNSで発信し、購買意欲を喚起する。
1000~1499円価格帯のカテゴリーで人気なのが「カッシェロ・デル・ディアブロ」。これまで交通広告やマイレージキャンペーンなどでブランド認知を高めてきた。最需要期に向けては、「ディアブロ」と相性のよいハロウィンに、動画によるデジタル広告で魅力を配信する。今年のハロウィンはコロナ禍の影響もあり、家で楽しむことが考えられるため、普段よりちょっと贅沢なワインを提案するのがおすすめ。
引き続き、コスパの高さや豊富な品揃えなど、チリワインの魅力を店頭で訴求することで、新たなファンを獲得し、チリワイン市場活性化につなげていくことが大切だ。
メルシャン、「フロンテラ」大容量の品揃え拡大でヘビーユーザー化を促進=注目メーカーマーケティング
世界中で愛される定番ブランドの「フロンテラ」。今春にはパッケージのリニューアルを行い、さらなるブランド力強化を図った。秋に向けては好調のピノ・ノワールの大容量をラインアップし、ワインユーザーのニーズに対応する。一方、「カッシェロ・デル・ディアブロ」は、最需要期に向けてプロモーションを強化し、認知を高めていく。
「フロンテラ」の第3の柱としてピノ・ノワールを育成
豊富なラインアップとフレッシュでバランスがよく飲み飽きない味わいが魅力の「フロンテラ」。手頃な価格で本格的な味わいのデイリーワインとして多くのファンから支持されている。とくに大容量が好調で、2019年は対前年比29%増と大きく伸長*。ワインユーザー化がさらに進んでいる。
また昨年3月に発売した「フロンテラ ピノ・ノワール」も好調で、3月~6月の累計では前年比68%増と成長している*。渋味の少ないやわらかい味わいの芳醇な赤ワインで、食事とも合わせやすい。ユーザーからは「手頃な価格なのに本格的な味わい」と、高く評価されている。
ピノ・ノワールの好調を受け、この秋には1500mlの大容量をラインアップ。19年10月の消費税増税時に大容量商品の購入意向が高まったことから、今年10月の酒税改定時にも同様に大容量商品に需要拡大が期待できそうだ。同社では「フロンテラ」の第3の柱としてピノ・ノワールを育成していく考えだ。
一方、厳選されたブドウと収穫・醸造方法にこだわったワンランク上の「フロンテラプレミアム」も好調。799円までのワインカテゴリーが微増なのに対し、同ブランドのカベルネ・ソーヴィニヨン、シャルドネは市場の伸長を大きく上回って推移している。「おうち時間」を充実させたいニーズが高まり、ちょっと贅沢なワインが求められているようだ。
こうしたニーズが今後も続くことが予想されることから同社では、いつもの総菜やお肉を簡単にアレンジしたレシピとプレミアムシリーズのワインでプチ・プレミアムな時間を楽しめることをSNSで発信し、購買を促進する。秋のレシピは“食欲の秋”にぴったりな簡単でワインがすすむエンタメレシピ新作3品を追加。SNSでの情報発信で購買意欲の高まったユーザーを最後の購買までつなぐため、店頭と連動するツールを用意した。首掛けPOPのQRコードから特設サイトへ誘導し、購入後も情報接点の場をつくり、リピート購入につなげていく。
※メルシャン出荷出積
潜在ユーザーに向けてデジタル広告を配信
量販店のワインの1000~1499円カテゴリーを牽引しているのが「カッシェロ・デル・ディアブロ」。過去4年間で、デジタル各媒体を活用し、集中的に広告を投下してきたことで間口を拡大させ、多くの人から選ばれるブランドとなっている。
この秋は、潜在ユーザーをターゲットに、「悪魔の蔵の伝説」を訴求したデジタル広告を配信し、購買を促進する。また、カッシェロ・デル・ディアブロLINE公式アカウントの“友だち登録者”が累計1.5万人を突破したことから、継続的に情報を発信していく。このカッシェロ・デル・ディアブロLINE公式アカウントから応募するオープンキャンペーンを8月7日~12月31日まで実施。ファン層を拡大し、継続的な情報発信を行い、購買喚起を図る。