日本人の食生活に欠かせない存在であるカレーだが、近年は少子高齢化や世帯人数の減少からレトルトカレーの消費が拡大している。新型コロナウイルスの感染拡大に伴い内食回帰への機運が高まる中、家庭で楽しむカレーの魅力を改めて提案する時期に来ている。
マーケットトレンド
新型コロナの影響を受けカレーの喫食率が増加
KSP-POSによると、2019年7月から20年6月のルウカレーカテゴリーの期間通算金額PIは対前年同期比1.9%増の4543円、数量PIは同0.1%減の24.17となった(図表❶)。
月別の推移をみると19年7月から9月は微増傾向で推移していたが、10月の消費税増税のタイミングで前年割れとなり、それは20年1月まで続いた。2月に入ると新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けて数字が跳ねあがり、4月にピークを迎えている。5月以降は家庭内の在庫を消費するフェーズに移行したことで、数字も落ち着いてきている。
カレーは季節の影響を比較的受けづらいカテゴリーだが、気温が高くなる春から夏にかけて数値が上がり、秋口から冬にかけて数値が下がる傾向にある。しかし今回調査した期間については、新型コロナウイルス感染拡大による学校の休校や外出自粛といった要因も重なったため、20年3月、4月の数字が非常に高くなっている。
ルウカレーはハウス食品の「バーモントカレー」や「ジャワカレー」といった誰もが知るロングセラーブランドを多く持つカテゴリーの一つだ。また定番のブランド以外にもキーマカレーやタコライスなどのひき肉を使うタイプ、カロリーや糖質、塩分などに配慮した健康訴求タイプなど、さまざまな商品が出てきている。
近年はペースト状のルウなど、調理時間の短縮に対応したルウも登場。ハウス食品では、新商品として炒めた具材にルウと水を加えてフライパンでひと煮立ちさせるだけで、野菜のおいしさや食感を楽しめる「ソテーカレー」を2月に投入している。
新型コロナウイルス感染拡大に伴い、家で食事をする機会が増えたことから、老若男女問わず人気の高いカレーの食卓出現率は増加。家で手間ひまをかけてカレーをつくる機会も増えたことで、カレー用の煮込み調味料なども好調に推移している。
外出自粛の影響でまとめ買いも増加
一方、レトルトカレーカテゴリーの19年7月から20年6月の金額PIは対前年同期比10.5%増の4231円、数量PIは同7.4%増の24.45となった(図表❷)。世帯人数の減少や個食対応を背景に、伸長し続けている同カテゴリーだが、月別の推移を見てみると新型コロナウイルスの影響はルウカレー以上に大きく、2月は同18%増、3月、4月は同40%以上の大幅な伸長となっている。
バラエティ感のある品揃えができるのは、レトルトカレーの特徴だ。とくに今期は新型コロナウイルスの影響により外出を控える生活様式がしばらく続いたこともあり、レトルトカレーをまとめ買いしたり、食べ比べをしてみようという層が増えたことも需要の拡大につながっている。
また、3~4袋入りの徳用商品が主通路沿いでアウト展開されるのも定番となった。とくにハウス食品の「プロ クオリティ」シリーズでは、総菜売場で購入したとんかつを載せてカツカレーにするといったシーンの提案により新たな顧客を獲得している。レトルトカレーの代表格である「咖喱屋カレー」では、新商品として2月に「咖喱屋カレー小盛サイズ4袋入り」を発売。小腹が空いた時なら1袋、大盛りで食べたい時は2袋など、食べる量を調整しやすい点がポイントとなっている。
カレーは国民食と呼ばれるほど日本人の食生活に欠かせないメニューであり、ルウカレー、レトルトカレー、それぞれに特性がある。近年は少子高齢化や有職女性の増加に伴い、調理時間のかからないレトルトカレーで済ませる生活者が増えている。そのためルウカレーを使って煮込み料理をする家庭が減ってきており、それが同カテゴリーのマーケットに影響を及ぼしているといわれている。しかしルウカレーは材料となる野菜や肉類など生鮮品との相性もよく、買上点数の向上につながる商材として食品スーパーには欠かせない。今回の新型コロナウイルスの影響により内食回帰も起きており、家族みんなで楽しめるルウカレーの価値を改めて伝えることも必要だろう。
店頭でもレシピ紹介や生鮮売場での関連販売など、生活者のヒントとなるプロモーションを仕掛け、カレーカテゴリー全体の活性化につなげていきたいところだ。
ハウス食品:カレーの食卓出現率上昇ルウカレーで新ブランド2品を投入
カレーカテゴリーを牽引するハウス食品では、2人暮らしの夫婦にちょうどよいペーストタイプのルウカレー「ソテーカレー」、ひき肉と玉ねぎで簡単につくれて、家族みんなでプチごちそうが楽しめる「ごちレピライス」の2ブランドを投入。レトルトでは「咖屋カレー」の小容量タイプ(4袋入り)を発売し、新たな価値を提案している。
フライパン一つで調理簡便・時短の2ブランド
新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けてハウス食品の「バーモントカレー」、「こくまろカレー」、「ジャワカレー」に代表されるルウカレーが好調に推移している。外出自粛や学校休校の期間もあり、家族で食べられる定番メニューのカレーライスは食卓出現率が増加。家で手間ひまかけてつくる機会が増えたことから、カレーにひと手間を加える調味料シリーズ「カレーパートナー」も好調だという。
2020年2月、同社は新商品として夫婦2人暮らしサイズの「ソテーカレー」を発売した。同品は肉や野菜、果実の旨みとともに華やかなスパイスの香りが凝縮された溶けやすいペーストタイプのルウ。炒めた具材にルウと水を加えてフライパンでひと煮立ちさせるだけで、野菜のおいしさや食感を楽しめるカレーを簡単につくることができる。
もう一つの新ブランドは、手軽なのにつくりがいのある“プチごちそうレシピ”をコンセプトとした「ごちレピライス」。同品は家庭の常備食材であるひき肉と玉ねぎをフライパンで炒め、さっと煮込むだけでできあがるルウタイプのメニュー調味料だ。料理サイトでも人気の高い「キーマカレー」と「タコライスソース」の2種類を展開し、どちらも好調に推移している。
ハウス食品では5月より食品ロスの削減のため、“もっとカレーだからできることプロジェクト”を立ち上げた。同企画では家庭で期限が近づいた食材や日頃だと捨ててしまいがちな食材を消費するための解決策の一つとしてカレーづくりを提案しており、専用のホームページも開設されている。
また販促企画として、サントリービールの「金麦」とコラボレーションした共同マイレージキャンペーンも展開。「ジャワカレー」「こくまろカレー」と「金麦」ブランドを対象に、点数を集めると「あいあいカレー皿」がもらえるという内容となっており、「金麦」に合うオリジナルのカレーレシピも、キャンペーンサイト内で紹介されている。
アレンジレシピで楽しむ「プロ クオリティ」が好調
レトルトカレーは、新型コロナウイルス感染拡大を受け、家庭内でのストックが増えているカテゴリーの一つ。たとえば人気の店の味わいを再現した付加価値型のレトルトカレー「選ばれし人気店」シリーズは6アイテムを展開しているが、20・30代の比較的若い層も手に取っており、ブランド内の買い回りも増えているという。
好調の「プロ クオリティ」は、しっかり煮込んだ牛肉・玉ねぎ・トマトの煮溶けた旨みと甘み、デミグラスソースのようなコク深く濃厚なソースが特徴の幅広い年代に支持されるブランド。4袋入りのため、単身者だけでなく家族でも楽しめ、最近では総菜売場で購入したとんかつを載せたカツカレーをはじめ、きのこなどのトッピングでアレンジする消費者も増えているという。同社のホームページでは「プロ クオリティ」を使用したメニュー提案も行っている。
レトルトカレーの定番ブランド「咖屋カレー」では、新商品として2月に「咖屋カレー小盛サイズ4袋入り」を発売した。いつもより少ない量を食べたい時に加え、2袋以上温めて大盛にして食べるなど、適量ニーズにあわせて手軽に楽しむことができる。
ハウス食品ではルウカレー、レトルトカレーともに多様化するニーズに応え、カレーの喫食頻度向上をめざしたいとしている。