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2020年代はマーケティングが激変!キーワード7つの「香り2.0」に乗り遅れるな!

イメージアップや集客、ブランディング等に香りを活用し、施設の価値を高めている企業が増えておいる。新たな価値を創造してくれるため、「香りマーケティング」はいまや小売業や飲食、ホテル等にとって重要な位置づけのものとなっている。その香りマーケティングの最新トレンドと、来年から始まる2020年代に重要な7つのキーワードを紹介したい。
(本稿は、2019年11月13日から15日にかけて開催された「香りデザイン東京」で行われた香りデザイン東京特別講演会での取材を元に執筆されたものです)

Photo by katleho Seisa

時と場合によって香りが変わる自動車

 「香りマーケティング&ビジネス最前線」をテーマとする講演の冒頭、ゲストスピーカーとして登壇した、香り&臭いビジネス・リサーチャーで、香りマーケティング協会の渡辺昌宏氏は「2020年代は、香り2.0の時代になる」と述べた。

 香りマーケティング協会によれば、「香りマーケティング」は「企業活動において、香りを利用し活かすことによってマーケティング活動を実施し、新たな価値を創造する活動やプロセス」と定義されている。

 さて、「香り2.0」だが、スマートフォンやそれによるSNSの広がりによりWebの世界が進化し、「Web2.0」といった巨大なマーケットに成長していったが、テクノロジーやユーザーの進化により、それと同じような動きが、この10年の間に「香り」の世界にも訪れるということだ。

 先ほど開催された「東京モーターショー2019」では、その兆しが感じられたという。コンセプトカーとして展示されていた自動運転車の車内は、自身が運転している時、自動運転中、疲れたとき、それぞれで車内の香りが切り替わる。「自動運転×香り=空間の経験の進化」により、車内がホテルのスイートルームに変貌するのだ。そればかりではない。自動運転車に搭載の各種センサにより、香りと人体に関するデータが世界中から、ビッグデータとして取得できるようになるのだ。

 香りに対する好み、感じ方は人それぞれだが、すでに、特定のその人だけに、香りを届けることも可能になっている。ダイキン工業のアロマディフューザー「Chiffy」では、空気砲の渦輪にのって、自分の周囲にだけ香りが運ばれてくる。たとえば鎮静効果のある香りに包まれながら、自分だけのリラックスタイムを過ごすことができる。

 

 デジタル疲れが香りマーケティングを加速させる!

 日本特有の事情も、「香り」の世界の進化を後押しするという。

 日本には古くから、衣服に香を焚いたりするなど、ほのかな香りを楽しむ文化が根付いている。柔軟剤が市場性をもったのも、その影響が強い。

 次に「デジタル疲れ」だ。ある調査によれば、2012年のスマホの閲覧時間は40.4分だったのに対し、2018年は3時間5分にもなっている。

 さらに、外資系ホテルのロビーを中心に「香り」の導入が進んでいる。日本国内でのその先駆けは、ウェスティンホテル館内で提供される心地よく洗練された魅惑的な香り「ホワイトティー」。ブランドイメージを表現する香水として販売したり、アメニティグッズにしたり、クリスマスカードに噴霧したりするなど、香りの用途も広がっている。ここ数年、そうした動きは、ホテルだけでなく、フィットネスクラブ、ショッピングセンターにも広がりを見せている。

 また1980年代のワインブームのころには、ソムリエさながらにワインのアロマをかぎ分けることが流行った。親からその影響を受けた子どもたちは、いまや成人となり、いい香り、悪い香りといった、香りの違いがわかる世代に育ったということもある。

 現在、日本国内で香り市場を牽引する企業として、1948年(昭和23年)設立の大洋香料(大阪市/竹内 健社長)、香り演出による空間プロデュースを通じて、効果的なプロモーションを支援する東洋メディアリンクス(東京都/松島 透社長)、ホテルやショップ、商業施設など、全世界3000カ所以上の施設で、天然アロマの機能を生かした、感性に訴えかける空間デザインを提供しているアットアロマ(東京都/片岡郷社長)などがある。

 

 「わが店だけの香り」で差別化してブランディングする

 海外では、日本以上に「香り」の活用が進んでいる。

 渡辺氏が、とくに注目する地域として自ら足を運んで確かめてきたのが、米国ニューヨークと中東のドバイだ。

 ニューヨークでは、The North Faceの旗艦店、復興なった新WTC、1泊5万円からの高級ホテル「SIXTY LES」。The North Faceの旗艦店では、店のブランディングに合わせオリジナルの「ヨセミテの香り」を店内空間に導入した。オリジナルの香りということもあり、どんな香りなのかに関心が集まり、SNSによる拡散、ニュースでの報道により、この「ヨセミテの香り」=The North Faceというイメージを、うまく伝えていた。新WTCでは、最上階の展望台の入り口、ビルを再興した人たちの偉業を讃える映像が流されている地下1階の2か所で、それぞれ「香り」を導入、別々のイメージを想起させるようになっている。SIXTY LESで感じられたのは、「光×ミュージック×香り」による上質な空間の演出だったが、従業員に聞いたところ、香りを演出するアロマは「アマゾンで購入した安価なもの」ということだった。演出の組合せにより、コストをかけなくとも、一流のブランドイメージを訴求できるということだ。

 中東には香りの文化がある。宗教上の理由でお酒を飲まないこの地では、香りによって、客人をもてなすこと(乳香の文化)が古くから行われてきた。

 Armani Hotel Dubai(アルマーニホテルドバイ)では、マッコウクジラの腸内で生成される結石のもつ独特な甘い匂いを振りかけたアンバーグリスコーヒーがふるまわれ、体験したことのない香りにより、ワンランク上の気分に浸ることができる。広さは東京ドーム20個分、世界最大の香水売場のあるThe Dubai Mallでは、数ある入り口のうちの、たった1つ入り口のみで、香りのもてなしが行われている。

 

20年代の香りマーケティング7大キーワード!

 渡辺氏は、講演の締めくくりとして、2020年代「香り」にまつわる、次の7つのキーワードをあげた。

(1)「分香」:香りは、人によって好みが分かれるし、化学物質過敏症の人もいる。安易に、一人の好みで香りを決めてしまわないことが重要。

(2)「見える化」:香りのする場所には芳香マークをつけたり、においセンサを設置したり、たとえば広大な商業施設ではエリアごとの香りを「香りマップ」にするのも効果的。

(3)「伝える化」:プライバシーポリシー同様に、センツポリシーを掲げる施設が増えていく。伝わる言葉(たとえば「ヨセミテの香り」)にしたり、香りのストーリーを構築しておくことが重要。

(4)「差別化」:他社とのポジショニングの違いを明らかにするために、香りの演出で差をつける。

(5)「国際化」:香りの演出により、インバウンド客を店内に惹きつけることも可能。とくに中国人は「ジャスミン」、ニューヨーカーは「バニラ」を好む。日本人が親しむ畳(イグサ)の臭いは、英国人が嫌うなど。

(6)「変化」:不特定多数を意識して体臭を消そうとする人もいれば、多くの人がくさいと思う臭いが集客につながることもある。「パルコのにおい展」(https://nioiten.jp/)では、くさいものの展示に人だかりができているという。

(7)「進化」:たとえば、IoT(モノのインターネット)の機能を備えた次世代のルームディフューザー「Scentee Machina(センティーマキナ)」(https://scentee-machina.jp/)は、それぞれのシーンに合せ、14種類の香りをスマートフォンから切り替えることができるが、こうしたテクノロジーが、スマホアプリを通じて、簡単に手に入るようになっている。