メニュー

SHEIN TOKYO「売らない店」現地レポート!担当者が明かす、低価格3つの理由とは

2022年11月、中国発のファッションブランド「SHEIN」(シーイン)が、東京・原宿に初めての常設店舗「SHEIN TOKYO」(シーイン トーキョー)をオープンした。「SHEIN TOKYO」は、試着などをして気に入ったアイテムのQRコードを読み取ると、ECの商品ページに飛び、商品を購入できる、ショールーミング形式をとっている。SHEIN TOKYOとはどのような店づくりをしているのか。現地に足を運んだ。SHEIN TOKYO外観

顧客とのハブとなる「SHEIN TOKYO」

 SHEINが2022年11月13日にオープンしたリアル店舗「SHEIN TOKYO」は、東京・渋谷の「原宿」駅から徒歩8分の場所にある。周辺アパレルショップが密集するキャットストリートに出店した。

 なお、SHEINは2022年10月から、「SHEIN OSAKA POPUP」を大阪に出店している。大阪店は23年1月27日までの期間限定のポップアップストアの位置付けだが、SHEIN TOKYOは常設の店舗だ。

 「SHEIN TOKYO」の店内を見ていこう。店舗は地上2階建てで、店内には3サイズ約350SKUを揃える。1階にはウィメンズアイテムを「トレンドアイテム」「ストリート系」「プラスサイズ」とテーマ別に商品を陳列している。

入り口すぐにはトレンドコーナーを配置。
プラスサイズアイテムも取りそろえる。


 そのほか、1階にはメンズアイテム、子供服やペットウェア、ルームウェアなどが展示されている。

 2階には、シーズンファッションのほか、小物、アクセサリー、シューズ、化粧品をラインアップする。

2階コスメコーナー。「SHEGLAM コンプレクション プロロングラスティング ソフトマットファンデーション」は31色を揃える。


 マネキンは、人気女性ファッション誌「CanCam(キャンキャン)」にコーディネートを依頼。日本人好みのスタイルを提案するなどの工夫も見られた。

 SHEINの担当者は「より多くのお客さまに『SHEIN』のブランド、およびサービスを知っていただくために、日本でも有数の最先端ファッションの発信地として知られる原宿・明治神宮前エリアを選定した。お客さまとSHEINをつなぐハブとなるよう、ファッション媒体およびインフルエンサーとのタイアップのほか、定期的にイベントを開催することで、SHEINを身近に感じていただくためのタッチポイントとしていきたい」と話す。

発信したくなる仕掛けが多数

 売場の随所に来店客の発信を促す仕掛けがある点にも注目だ。たとえば、1階にはテイストの違う3つの試着室を用意するほか、同じく1階の中央にはカートやバッグをディスプレーしたフォトスポットを設置。思わず写真を撮ってSNSに投稿したくなるような仕掛けが目を引く。

テーマの違う3つの試着室を用意。

 

 2階には、SNSで話題になったアクセサリーやギフトカードが当たる「SHEINガチャ」を設置する。参加方法もユニークで、店内の様子をSNSに投稿するとガチャを1回まわすことでき、Google口コミに投稿すると2回目に挑戦できる。

ガチャで当たる景品。

 「自然とお客さまがSNSで発信する仕組みを取り入れることで、消費者にSHEINのサービスや『ファッションスタイルに関係なく誰もが無条件に自分自身を表現できる』という企業理念への理解を促進することをねらう。また口コミを、商品やサービスの改善に生かし、日本中で愛されるブランドをめざす」(SHEIN担当者)。 

小売の常識覆す!担当者が明かす、
SHEINが圧倒的安さを実現できる3つの理由とは

 SHEINの担当者は今後の課題について、「SHEINの安さを支えるビジネスモデルは、今までの小売産業の常識を超える複雑な内容になっており、世の中にまだ理解されていないのが現状だ。そのため今後は、なぜ当社が手ごろな値段で豊富な商品を展開することができるのかという理由を開示していく」と話す。

 この「商品を安価に提供できる理由」は3つあると担当者は説明する。「商品の少量多品種生産」「追加生産時における生産量とタイミングの最適化」「商品企画から発売の超短期化」だ。

 まず、「商品の少量多品種生産」について。

 SHEIN担当者は「SHEINは数千におよぶサプライヤー工場と、先進的なITシステムで効率よく連携している。これにより、毎日数千点におよぶ新商品について、100~200点単位での小ロット生産を実現できている」と説明する。

 2つ目の理由が「追加生産時における生産量とタイミングの最適化」だ。ECサイトが主な販売経路であるSHEINでは、各商品の販売状況をリアルタイムでモニタリングし、販売量やスピードで各商品の再生産の量やタイミングを精緻に推定している。そのため、必要な商品量だけ適切なタイミングで再生産を行う、「生産量の最適化」に成功した。

 「EC販売とオンデマンド生産による独自の供給モデルを成立させたことにより、回転率が大幅に改善され、通常25~40%といわれている余剰在庫水準を1ケタ台まで引き下げることができている」(SHEIN担当者)。

 3つ目の理由は、商品企画から発売までを「超短期化」したことだ。SHEINでは、工場付近にメガ倉庫を構え、そこから世界中の消費者に商品を直接発送している。このことにより商品企画からお客の手元に届く発売までの期間を通常2~3週間程度まで超短期化することに成功したという。

 SHEIN担当者は「このように、時間や物流における“ムダ”を徹底的に抑え、より安い商品価格を実現し、消費者に還元している」と述べた。

SHEINが自らを「環境問題解決の先行者」と語る理由とは?

 サステナビリティ意識の欠如が取り沙汰されるSHEINだが、「当社はサステナビリティを促進する取り組みを多く行っており、そのことも発信していく予定だ」(SHEIN担当者)と話す。

 たとえば、前述した平均余剰在庫水準の引き下げにより、ファッション業界で一般的だった『大量生産・大量廃棄』から脱却し、環境問題の解決につなげたい考えだ。ほかにもSHEINは、2022年6月に、衣類の循環維持や衣類廃棄物の削減、衣類廃棄物の影響を受けた地域の環境改善や修復を支援する「EPR基金(拡大生産者責任基金)」を設立している。

 「22年5月にはリサイクルポリエステルを使用した新コレクション『evoluSHEIN』の発表も行っている。われわれはむしろファッション業界における環境問題解決の先行者といっていいだろう」(SHEIN担当者)。

 SHEIN担当者は「ビジネスモデルや社会的な取り組みを積極的に発信していくことで、消費者に『SHEIN』についてより深く理解してもらいたい」と今後の展望を話す。