コロナ禍で外飲みしづらい状況が続いたことで、家飲み需要が高まり、ウイスキー市場は好調に推移している。市場をけん引するのは国産ウイスキーだが、家飲みが定着するなか、輸入ウイスキーも拡大傾向にある。父の日のギフトなど需要期を迎える今、さらなる市場の盛り上がりが期待できそうだ。
ハイボール缶をきっかけに、瓶ウイスキーへのシフトも
KSP-POSデータによると、2021年3月から22年2月のウイスキー全体の期間通算金額PIは対前年同期比0.1%増の5774円、数量PIは同2.7%減の3.99となった。金額PIが21年4月から8月までは前年を下回ったのは、コロナ禍の特需があった前年の反動とみられる。しかしながら、21年9月以降はプラスに転じ、21年11月と22年1月はわずかに下回ったものの、ウイスキー市場は全体として好調に推移している。
市場をけん引するのは、サントリースピリッツの「角瓶」や「トリスクラシック」、アサヒビールの「ブラックニッカ」などの国産ウイスキーだ。とくに、これらのハイボール缶によって、ウイスキーになじみのなかった層も飲用するようになり、ビール類やチューハイなど他のRTDからの流入が加速。ウイスキーユーザーの間口が拡大している。
一方で、ハイボール缶をきっかけに瓶ウイスキーへの移行も進んでいる。長引くコロナ禍で家飲みが定着するなか、消費者のウイスキーに対する関心が高まり、ハイボール以外の飲み方でも味わってみたいと瓶ウイスキーへランクアップ。さらに、輸入ウイスキーやプレミアムウイスキーを手に取ってみる消費者も増えている。実際、輸入ウイスキー市場は、国産ウイスキーに比べて伸長率が大きい。なかでも、キリンビールが日本国内の輸入・販売を手がけるスコッチウイスキーの「ホワイトホース」は、若年層をターゲットにしたプロモーションが成功し、女性の購入率が上がっている。
「ちょっといいものを」プレミアム品の需要が拡大
家飲みをきっかけにウイスキーの需要が高まるなか、どのブランドも大容量商品が好調だ。背景には、コロナ禍で来店頻度を抑えたいという消費者意識のほか、家庭でのウイスキーの飲用が根付いてきたことがあるだろう。
一方で、「ちょっといいものを飲んでみたい」というプレミアム志向も高まっている。ウイスキーの世界は奥深いだけに、知れば知るほど興味も湧いていく。こうしたニーズに応えようと、メーカー各社はさまざまな取り組みを行っている。
たとえば、サントリースピリッツでは、同社が手がけるプレミアムウイスキーの小容量サイズ(ハーフボトル350ml)を取り揃え、「今夜はどれをハーフボトる?」をキャッチコピーに、気軽にいろんなスタイルで楽しめるようにプロモーションを展開している。プレミアムウイスキーを味わってみたいが、いきなりフルボトルを購入するのはハードルが高い。そこでハーフボトルでいろいろ試してみて、気に入ったものをフルボトルで楽しんでもらおうというねらいだ。
また、キリンビールでは普段の家飲みには「ホワイトホース ファインオールド」を、ちょっといいものを飲みたいときには「ホワイトホース」のプレミアム品の「ホワイトホース12年」とシーンで選ぶことを提案し、プロモーションに力を入れている。
6月の父の日に向けてギフト需要が増える今、贈り物にも最適なプレミアムウイスキーはさらに注目されることだろう。売場でしっかりアピールすることで、ウイスキー市場はいっそう盛り上がりを見せそうだ。