神奈川県湘南地区を中心に、スーパーマーケット10店舗を運営するたまや(神奈川県茅ヶ崎市/原浩仁社長)は、輸入牛について、早くからウルグアイ産ビーフを積極的に取り扱い、差別化を図ってきた。高価格や供給難という課題を抱えるコロナ以降、こうした新規産地の開拓戦略が功を奏するかたちとなっている。
差別化を意識して、ウルグアイ産ビーフを導入
たまやでは、2019年の輸入解禁直後から少しずつウルグアイ産ビーフの導入を進め、21年10月時点では、輸入牛のうち、ウルグアイ産ビーフが約28%までウエートを高めている。アメリカ産は約59%、オーストラリア産が約14%と続いている。同社商品部食肉バイヤーの宮本裕幸氏は、産地の変更について次のように説明する。
「当初は供給や価格面でのリスクヘッジを意図していたわけではありません。むしろ産地は多角化するのではなく、管理アイテム数を絞り、効率化を図る意味では一本化したい。しかし、導入当初は、ウルグアイ産ビーフには産地としての目新しさがあり、まだほかの競合店では扱っていなかったため、差別化につながるというねらいがありました。価格面での優位性もあり、当社のEDLP政策にもうまくはまる。味のよさを確認したうえで導入を開始しました。導入後の感想としては、コロナ以降各産地の供給が不安定化し、価格も高くなっているなかで、安定して品質のよい商品が供給されているため、正解だったと考えています」
それまではアメリカ、オーストラリアのアンガス種に絞って輸入牛を扱っていたが、導入後は新しいブランドとして好評で着実に販売量を増やしている。導入当初はグラスフェッドが中心だったが、現在は穀物肥育牛を中心に扱っている。抗生物質や成長促進剤を使用していない点などは、安全・安心に対する関心が高まるなかで、訴求ポイントとしても有効だという。
提案力のある売場づくりが今後ますます重要に
現在同社では輸入牛と国産・和牛の比率が半分ずつ程度。コロナ禍の影響で、売れ筋の内容に変化はあるが、現状の販売動向としては、和牛がやや伸びており、国産牛は減少傾向。輸入牛は微増となっている。
家庭での手づくり需要が高まり、素材としての精肉の売上も好調だったが、現在はむしろ、鍋のアレンジ総菜やミールキット的な商品、レンジ商材といった周辺の関連商材が好調だという。
「こうした流れを受けて、たとえば調味料メーカーとのコラボでローストビーフを提案する企画や、味付け肉の強化なども重要だと考えています。さまざまなバリエーションのメニューを、簡便性が高いかたちで提案していくことがポイントになると見ています」(宮本バイヤー)
店頭では、定番売場で種類や用途別に分類した商品を展開し、和牛の「宮崎牛」を専用コーナーで展開。ウルグアイ産ビーフは棚帯で訴求するほか、催事スペースを活用した提案型の売場を定期的に展開しており、注目度を高めている。
宮本バイヤーは「ウルグアイ産ビーフは今後もブランディング強化が期待できるので、力を入れていきます。レシピ提案などの情報発信についてはメーカーさんの力も借りながら、より提案力のある売場をつくっていきたいと考えています」と語る。