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「レノア」「アリエール」「ボールド」がこの人口減の日本で成長できている秘密

P&Gジャパン(以下、P&G)は、革新的な製品開発力とライフスタイルの変化に合わせたラインアップ強化で成長を続けてきた。ファブリックケアの市場動向と今期のマーケティング施策についてファブリックケア事業代表を務める大平貴洋氏にきいた。

大平 貴洋氏
P&Gジャパン 執行役員 ファブリックケア事業代表 大平 貴洋氏

市場成長に必要不可欠な
3つの視点とは?

―直近のファブリックケアの市場環境をどのように見ていますか?

大平:まず24年の市場全体を振り返ると衣料用洗剤・柔軟剤共に、金額ベースで前期比二桁に近い成長と、引き続き好調を維持しています。ただし衣料用洗剤と柔軟剤では好調の要因が少し異なります。

 世帯浸透率が100%に近い衣料用洗剤の場合、昨年発売した「アリエールMiRAi」のような革新的な製品や高付加価値型の製品が投入されることで、1回あたりのお洗濯単価がアップし成長につながっています。一方の柔軟剤は、未使用者や離脱者による新規使用や、使用頻度の向上を図ることにより、成長を続けているカテゴリーとなっています。

―成長を加速させていくために重視している点があれば教えて下さい。

大平:まず世の中の動きとして、少子高齢化に伴う人口減少により洗剤市場も縮小すると考えられていますが、実際には、女性やシニア層の就業が増加するなど、消費者のライフスタイルが変わり、一人ひとりの外出する機会が増え、着替える回数も増加。それに伴い洗濯物の量が増えるなど、洗濯を取り巻く環境も変化しており、そこに市場拡大の機会を見ています。

 このような洗濯環境の変化は、ライフスタイルの変化に伴いこれからも継続、加速していくと考えており、その中でファブリックケア市場を成長させていくための視点は、第1に、時間効率がより重要になる中で、まとめ洗いなど、これまで以上にタフな洗濯環境でも十分な成果を出せる「優れた製品便益」、第2に、洗濯するものの種類や仕上がりに対する高い期待値に対応できる「洗濯するものやシーンに合わせた製品ラインアップ」、第3に、高まる衛生意識に対応できる「ニオイや菌対策が可能な付加価値製品」の3点があると考えています。

 当社は除菌や消臭、簡便性など、日々変化していく消費者のお悩みを解決する製品の開発により10年以上安定的に高い成長率を維持してきました。今後もライフスタイルや時代の変化から生まれたニーズを汲み取り、消費者の生活を更に豊かにしていける製品を開発し続けていきたいと考えています。

―24年、特に成長に寄与したブランドはありますか?

大平:柔軟剤は当社がリードさせていただいているカテゴリーということもありますが、今期は新セグメントを創造したすすぎ消臭剤の「レノアクエン酸in超消臭」や衣類の香りづけ専用ビーズ「レノアアロマジュエル」が特に好調でした。

 この2ブランドはこれまで柔軟剤を使われていなかった新規ユーザーの方に手に取っていただく機会が多く、ニオイや香りに関するニーズの多様化にお応えすることで、柔軟剤の世帯浸透率向上やカテゴリーの成長に大きく貢献しています。とはいえ柔軟剤の世帯浸透率は6割程度であり、今後マーケットを拡大していくには未使用者へ新しい価値を提案していくことが重要です。

 近年は衣料用洗剤に消臭や除菌、香りといった機能が加わることで、柔軟剤をどのように使用してよいのか分からない消費者も多い。当社としては柔軟剤をプラスで使用する意味や価値を改めてお伝えすることで、消費者にとって最高のお洗濯体験を実現し、マーケットの拡大に貢献していきたいと考えています。

人気の香水や世界的 フレグランスメゾンとコ ラボした香りが楽しめる 「レノア アロマジュエル」。ビーズの粒が見える「ビーグマ」のキャ ラクターを活用した店頭販促物も用意

好調の「アロマジュエル」に
人気のホワイトムスクを採用

―25年のマーケティング戦略について教えてください。

大平:まず柔軟剤については、世帯浸透率の向上が大きな課題となっています。また柔軟剤ユーザーであっても、吸水性の高いスポーツウェアなど洗うものによっては柔軟剤を使用しないこともある。間口の拡大だけでなく使用頻度の向上といった奥行きの拡大もマーケットを拡げるための重要なポイントです。

―そのような考えの下、今期はどのような製品を展開していきますか?

大平:まず今年3月、「レノアアロマジュエル」のリニューアルを行いました。同ブランドはこれまでも世界的フレグランスメゾンとコラボし、5つ星ホテルの極上の香りを再現した「ホワイトティーの香り」や、人気の香水から着想を得た「ブルーミングブロッサムの香り」が好評を得ていますが、今期はトレンドの香りである「ホワイトムスクの香り」をラインアップに加えました。

 ビーズ剤型は好調に推移していますが、世帯浸透率は10%以下であり、形状や使い方がイメージできないために使用されていない方が多くいらっしゃいます。実際、シリンダー状のケースにビーズ剤を入れ、粒が見える形での店頭プロモーションを行ったところ売上が大きく伸びました。この成功事例を活かし、「アロマジュエル」の粒を透明なクマのボトルに詰めて作った公式キャラクター「ビーグマ」をコミュニケーションで活用し、今まで未使用でいた消費者に新しい価値を提案していきたいと考えています。

 また5月には機能系のビーズ剤である「レノア煮沸レベル消臭抗菌ビーズ」も消臭成分を現行品の約10倍まで高めた形でリニューアルを行います。また、プロモーションについては「レノアアロマジュエル」のピンクの「ビーグマ」と連動し、青の「ビーグマ」を採用することで、ビーズ剤型の使用者拡大を目指します。同時に抗菌ビーズから男性向けの新バリアントも今春に投下します。

 男性の身だしなみに対する意識が年々向上している中で特にニオイの悩みを解決するコスメ市場は過去5年で1.5倍になっています。そこで、男性用フレグランスで上位を占めるムスクの香りを抗菌ビーズにも採用し、男性のニオイに対するお悩みの解決を目指します。

―液体タイプの柔軟剤についてはいかがでしょうか?

大平:液体タイプの「レノア」については3月下旬に「レノア超消臭1WEEK」シリーズをフルリニューアルしました。中でも「部屋干しおひさまの香り」と「SPORTSフレッシュシトラスの香り」の2品は洗濯製品初の湿気バリア成分(※1)を新たに配合し、カビ臭や雑菌臭、生乾き臭をブロックすることで、さわやかな仕上がりを実現します。

 ニオイの原因となるアミノ酸と菌が結びつく作用を防ぐこのテクノロジーを、TVCMをはじめとしたコミュニケーションでもしっかりと発信していきます。さらに「レノアオードリュクス」もパッケージを含め、4月にフルリニューアルを行いました。「レノアオードリュクス」は最高のお洗濯体験を実現・感じていただくために、洗濯中・後だけではなく、着用中のシーンでも感じる事ができる上質な香りに加え、高級感のあるパッケージへと進化しました。

(左)洗濯製品初の湿気バリア成分※1 を配合し、ニオイの原因にアプローチする「レノア超消臭1WEEK」シリーズ(右2品)フルリニューアルにより中身 とデザインにこだわった製品に進化した 「レノアオードリュクス」

―コロナ禍以降、消費者の香りに対するニーズも多様化しているように感じます。

大平:そうですね。近年は香水の代わりに柔軟剤を使用するという方も増えており、リニューアルした「レノアハピネス夢ふわタッチ」シリーズは、シャインマスカットやホワイトムスクなどの香りも集めています。従来のファブリックケアで使用されてきた香りではなく、その枠を超えた新たな香りを展開したことで、消費者の選択肢は広がり、新たな柔軟剤の可能性を見出すことができたと感じています。

 また、香りに対する異なる好みに合わせて、微香などの香りを控えめにした製品も展開することで、より幅広い消費者に柔軟剤を手に取っていただけるよう取り組んでいます。

「アリエール」「ボールド」「ジェルボール」 
ニーズに合わせた多彩なラインアップ

―衣料用洗剤カテゴリーのマーケティング戦略を教えて下さい。

大平:まず今年2月に「アリエールジェルボールプロ」シリーズをリニューアルしました。今回のリニューアルでは4層構造のうちの1層に「漂白剤つけ置きパワー(※3)」を注入することで、40℃のお湯で30分間、漂白剤につけ置きした後に液体洗剤(※4)で洗濯するのと同等の洗浄・消臭力を実現。同品は多くのバイヤー様から高い評価をいただいており、“完全楽スゴ洗剤”をキャッチコピーに、ジェルボールならではの簡便性と高い機能性を伝えていきます。

(左2点)1粒で30分漂白剤つけ置き級(※2)の洗浄・消臭力を叶える “完全楽スゴ洗剤” 「アリエール ジェルボール プロ」シリーズ (右)3月にフルリニューアルし消臭・抗菌成分をアップさせた「アリエール 超抗菌プレミアム 部屋干し超消臭」

 また液体洗剤の「アリエール超抗菌プレミアム」シリーズも3月にフルリニューアルを実施しました。消臭・抗菌成分をアップさせたほか、「アリエール超抗菌プレミアム洗濯槽まるごと除菌」は、抗菌洗剤を超えた除菌力で衣類だけでなく洗濯槽(※5)まで除菌する効果を付与した「金のアリエール」として訴求していきます。

 さらにブランドのコミュニケーションについても約12年ぶりに大幅刷新しました。セレブリティには今田美桜さん、山本耕史さんを起用し、洗濯科学の「アリエール」として、『「ありえない」を「ありえーる」にする』ブランドである点を伝えていきます。

―好調の「ボールド」についてはいかがですか?

大平:「ボールドジェルボール4D」は洗浄力に加え、香り、消臭、ふんわり柔らか、シワ防止効果(※6)という4つの効果で高い評価をいただいています。今期のリニューアルでは消臭成分を強化することで天日干しレベルの消臭力を実現。コミュニケーションでは洗濯大名を演じるセレブリティである菊池風磨さんに加え、松平健さんを起用し、インパクトのあるビジュアルで天日干し級の爽やかさを訴求します。

 またこれまで「ボールド」はピンクの「華やかプレミアムブロッサムの香り」をメーンに訴求してきましたが、今期は青の「爽やかフレッシュフラワーサボンの香り」も合わせて訴求し、新たな客層にアプローチします。

消臭・ふわふわ・香り・シワ&黄ばみ防 止の4つの機能で天日干し級の爽やかさを実現する「ボールド ジェルボール4D」

―最後に小売業に向けたメッセージをお願いいたします。

大平:当社は衣料用洗剤と柔軟剤、それぞれのカテゴリーにおいて、消費者のニーズに合わせた豊富なブランド展開が強みとなっています。これからも未使用者への価値を創造し、革新的な製品開発とコミュニケーションによって市場拡大に貢献していきたいと考えております。引き続き小売店様と協働させて頂き、最高のお洗濯体験を消費者の方に届ける事が出来ると嬉しく思います。

※1:P&G製品内
※2:自社の洗浄・消臭力実験結果による。2024年11月時点の酸素系液体漂白剤で30分のぬるま湯のつけ置きした後に自社液体洗剤で洗浄した場合との比較(P&G調べ)汚れの度合いにより、汚れ落ちの程度は異なります。
※3:自社の洗浄・消臭力実験結果による。2024年11月時点の酸素系液体漂白剤で30分のぬるま湯のつけ置きした後に自社液体洗剤で洗浄した場合との比較(P&G調べ)汚れの度合いにより、汚れ落ちの程度は異なります。
※4:自社液体洗剤との比較
※5:洗濯実験環境下で複数回洗浄後の菌数を評価。全ての菌の巣を除去するわけではありません。カビは除去できません。
※6:弊社他洗剤比、平均洗濯物量(P&G調べ)時。

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