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生活者の健康意識とヘルス・トレンドがわかる「ウェルネストレンド白書」

長引くコロナ禍で生活者の健康意識はますます高まっている。こうしたなか、健康・ウェルネス市場を事業領域とする企業にとって願ってもない調査レポートが発売された。その名は「ウェルネストレンド白書」(発行/一般社団法人ウェルネス総合研究所)。10代から70代までの生活者を対象に健康・ウェルネスに関する意識と行動を分析したもので、21年12月に発刊されると、22年5月には早くも第二弾が刊行された。マーケターから注目を集める「ウェルネストレンド白書」とはどんなものなのか。同書の監修者で海外のヘルストレンドに深く精通し、健康食品業界のビジネスにおいて、国内外650以上のプロジェクトに参画し、数々のヒット商品の開発に携わる武田猛氏に発刊の背景や同書の特長、活用方法について聞いた。

生活者4,600名以上に直接調査

 人生100年時代といわれる今、「できるだけ長く心身ともに健康に過ごしたい」という生活者のニーズが高まっている。これに伴い、健康・ウェルネス市場は拡大の一途にある。長引くコロナ禍でその勢いはよりいっそう増しているといえるだろう。

 こうしたなか、独自の視点で健康・ウェルネスに関する情報の収集・集積・発信を行っているのが一般社団法人ウェルネス総合研究所(東京都/萩原千史代表理事、以下「ウェルネス総研」)だ。2020年8月に設立、ビジネスの側面から健康・ウェルネス市場の発展に貢献し、人々の健康やQOL向上をサポートしていくことをミッションとしている。

 その取り組みの一つとして、21年12月に発刊したのが「ウェルネストレンド白書」だ。20代から70代までの4,600名以上の生活者を対象に、健康・ウェルネスに関する調査を行い、意識と行動を分析。それに基づき、今後予測されるヘルス・トレンドシナリオを洞察してまとめている。発刊のねらいは何なのか。

 ウェルネス総研の理事であり、同書を監修した武田猛氏(株式会社グローバルニュートリショングループ代表取締役)によれば、「現場で本当に使えるデータを提供したかった」と話す。

 「これまで健康・ウェルネス業界では、企業にヒアリングを行って数字を積み上げていく市場調査が主流でした。しかし、企業が話す数字と現場では乖離がある。例えば、企業が“美肌効果”という位置づけで商品を発売しても、消費者は美肌のために購入していないかしもれない。どんな目的で、どんなものを購入し、どのように使っているのか。生活者に直接聞く調査が必要だと考えたのです」(武田氏)

生活者を『7つの健康セグメント』に分類

 「ウェルネストレンド白書」が従来の市場調査と大きく異なる点はもう一つある。それは、膨大な数のデータをプロファイリング分析によって、生活者を7つの健康セグメントに分類していることだ。

 「これまでの調査では『20代女性』『70代男性』といった性別や年齢を切り口にした分類がほとんどでした。しかしこれでは、マーケティングや商品開発の現場では通用しません。20歳の人と29歳の人をひとくくりにすることは難しい上、ライフスタイルや健康情報へのリテラシーなどが違いますから。そこで、同じような価値観をもつ人に分けられないかとグルーピングしてみたところ、浮かび上がってきたのが7つの健康セグメントでした」(武田氏)

図表1 7つの健康セグメント

 こうした「生活者の特徴的な健康志向セグメント」と「健康食品素材に求めるベネフィット」、「健康食品素材の認知・摂取意向」の3軸をクロスさせて俯瞰的分析を行っているのが「ウェルネストレンド白書」だ。

 ちなみに、Vol.2ではVol.1とは異なる20代から70代までの4,600名の生活者に調査を行っているが、7つの健康セグメントの出現率はVol.1とほぼ同じだったという。つまり、7つの健康セグメントは今の日本を代表するセグメントといえるだろう。

Vol.2の新たなみどころとは

 「ウェルネストレンド白書Vol.1」が21年12月に発刊されてからわずか半年後の今年5月、「同Vol.2」が刊行された。異例の早さともいえるが、武田氏によれば、「変化の多い今の時代だからこそ、年に一度の調査では間に合わない。半年に一度、調査を行うことで、より現場の変化に対応したデータを提供できる」と力を込める。

 武田氏を筆頭に、グローバルな視点をもち、日本の健康・ウェルネス市場に精通したスタッフが、仮説を立て、それを裏付ける形で調査を行い、考察しているため、市場の動向をタイムリーに反映しているのが同書の強みだ。実際、Vol.2では三大栄養素である「タンパク質」「脂質」「糖質」の志向性を深掘りしているが、背景にあるのはプロテインや糖質オフなどに対する関心の高まりだ。Vol.1にはない新たな調査・分析であり、Vol.2のみどころでもある。

図表2 三大栄養素摂取傾向

 「調査をしていくと、Z世代などの若い世代はSDGsに関して強い思いがあり、サステナビリティという観点から食事や食品を選択する傾向にあることがわかります。これは欧米で進んでいたことですが、コロナ禍の影響で日本でも浸透。時代が一気に進んだことが調査結果から読み取れます」(武田氏)

 体感ではわかっていてもなかなか実証できなかったことが、同白書の中で数値化・データ化されることで明白になり、より説得性をもつというわけだ。

 また、Vol.2のもう一つのみどころとして、「トレンドワード」や「健康生活度と幸福度の相関関係」についても分析していることが挙げられる。例えば、「アダプトゲン」はメンタルフードの分野では進んでいるトレンドワードではあるものの、認知率はまだ高いとはいえない。だからこそ、今どのくらいの認知があるのか。7つの健康セグメントで認知率の差はあるのかを調査している。

図表3 アダプトゲン認知詳細

 「結論から言うと、新しい情報に対して感度の高い『トレーニング大好き層』が他の健康セグメントよりも高い認知率を獲得しました。つまり、この層をうまく開拓していくことが今後のカギ。これまでは健康・ウェルネス市場といえば、シニア女性がリードしてきましたが、これからは20~30代が6割を占める『トレーニング大好き層』も着目したいところでしょう」(武田氏)

 健康セグメントという切り口があればこそわかる気づきだ。

顧客化やファンづくりに活用できる

 今の時代を反映した調査レポートとなっている「ウェルネストレンド白書Vol.2」だが、具体的にはどのように活用すればよいのだろうか。

 「自社の顧客に対しては調査・分析していても、他社の顧客や業界全体についてはあまり関心をもたれない企業が多いようです。しかし、このノンカスタマーこそ注目すべき。どのように顧客化していくかを考えるときに、7つの健康セグメントが役立ちます」(武田氏)

 例えば、顧客の多くが70代女性という商品の場合、新規顧客獲得としていきなり40代や50代の女性をターゲットにしようと考えがちだ。しかし、それは現実的ではない。ではどうするか。

 「同じ70代でも7つの健康セグメントのどの層がとれていないのか。それを明らかにすることで、その層へのアプローチを考え、行動変容を促し、顧客化していくことができるでしょう」(武田氏)

 今回のVol.2では、各セグメントにおける健康情報源の取り方が明らかになったため、選択すべきメディアや優先順位をカスタマイズして、より有効なアプローチを検討することができるようになった。

 「健康・ウェルネス領域で事業を展開している企業や団体の方々にとって、マーケティングや商品開発などを考えていく上でのヒントとして『ウェルネストレンド白書』を使っていただきたいと思っています。今後、『ウェルネストレンド白書』はさらにブラッシュアップを続け、年内にはVol.3を刊行予定です。今、欧米の健康・ウェルネス市場では、身体に良いものを添加するのは第1世代であり、良い素材を厳選して商品化する第2世代に入っています。日本でもその兆しが見えており、Vol.3ではそうしたトレンドを深掘りするなど、現場で役に立つ調査を加えていきたいと考えています」(武田氏)

(武田氏プロフィール)

武田 猛

株式会社グローバルニュートリション代表取締役
一般社団法人ウェルネス総合研究理事

18年間の実務経験と18年間のコンサルタント経験を積み、36年間一貫して健康食品業界でビジネスに携わり、国内外650以上のプロジェクトを実施。「世界全体の中で日本を位置づけ、自らのビジネスを正確に位置づける」という「グローバルセンス」に基づき、先行する欧米トレンドを取り入れたコンセプトメイキングに定評があり、数々のヒット商品の開発に関わる。