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ユニクロにやられっぱなしではいられない! 中堅アパレルチェーンのフォロワー戦略

国内アパレル産業は、ユニクロを展開するファーストリテイリング1強だ。そんななか、売上高500~1500億円ほどの中堅アパレル企業はいかに勝ち残っていくか、各社のユニークな戦略に迫った。

コロナ禍にも拘わらずハニーズの業績が好調だ

国内アパレルの市場構造

 矢野経済研究所によれば、2021年の国内アパレル産業の市場規模は、約7兆6000億円だった。対前年比1.3%増とわずかに前年を上回ったものの、コロナ前の2019年(市場規模9兆1700億円)の水準は遠い。

 このうち、長年アパレル業界のトップを独走する「ユニクロ」のシェアはどれほどあるのだろうか。ユニクロの運営元であるファーストリテイリング(山口県)の2022年8月期の売上収益は2兆3011億円に達しており、このうち国内ユニクロ事業の売上高は8102億円に上る(GUなどユニクロ以外のブランドは含んでいない)。マーケット規模を踏まえると、シェアは1割強といったところで、ライバルにも十分チャンスはある。

 アパレル企業の売上高ランキングを見てみると、ファーストリテイリング以下には、低価格路線を徹底するしまむら(埼玉県)、「グローバルワーク」「ニコアンド」「ローリーズファーム」などの人気ブランドを抱えるアダストリア(東京都)、豊富な品揃えと手ごろな値段により子育て世代の支持を集める西松屋チェーン(兵庫県)などの有力チェーンがひしめいている。

 その次に控えるのが、今回取り上げる中堅アパレルだ。本稿では、売上高500~1500億円規模のチェーンを中堅アパレルと定義したうえで(ただし、紳士服専門店はのぞく)、いくつか注目企業をピックアップしてみたい。

苦境に立つセレクトショップ

 まず注目したいのは、売上高1183億円(2022年3月期実績)のユナイテッドアローズ(東京都)だ。

 同社はセレクトショップに特化することで一時代を築いてきた。もともとセレクトショップ業態を開拓してきたのは1976年にオープンしたビームス(東京都)であり、そのビームスの主要メンバーだった重松理氏が設立したのがユナイテッドアローズだ。

 ビームスと同じようなセレクトショップ業態をとりつつ、細かい品揃えなどで差別化することでユナイテッドアローズは市場を開拓してきた。売上高は今やビームスを大きく超える。そんな同社も、業績はコロナ禍による落ち込みから回復できないでいる。

 低価格なファストファッションと海外系のハイブランドに挟まれ、セレクトショップは苦境に立たされている。セレクトショップ次の打ち手が注視される。

独自路線、コバンザメ……中堅アパレルの戦略

 アパレル業界全般が低調に推移している中で、業績を伸ばしていているのがワークマン(群馬県)だ。近年の業績の伸びは凄まじく、22年3月期の売上高は1162億円とユナイテッドアローズを射程圏内にとらえている。

 ワークマンは建設作業労働者向けの作業着・衣料品の専門店として圧倒的なトップシェアを築いてきた。2018年からは一般向けの高機能ウエアを扱う新業態「ワークマンプラス」をスタートし、3期連続でCAGRを2ケタ台に乗せた。とくに2020年3月期の売上高は対前期比37%増と驚異的な伸びを見せている。プロ向け作業着が持つ高い機能性(耐久性・柔軟性・軽量)と低価格が、カジュアルウエアの世界で消費者の支持を集めた格好だ。

 最近は女性ユーザーからも支持を集めており、2020年10月には女性をメインターゲットに据えた新業態「#ワークマン女子」の展開をスタートしている。「低価格・高機能のカジュアルウエア」という新市場(ブルーオーシャン)を開拓したからこそ、ワークマンは急成長できたのである。

 もう1つ注目したいのが、ヤング層をターゲットとする低価格ブランド主体のアパレル企業であるハニーズホールディングス(福島県)だ。中国に縫製工場を擁し、企画・製造・小売まで手掛けるSPA(製造小売)に支えられたクイックレスポンスを強みとする同社。他ブランドが売り出した流行の商品をすぐにオマージュして低価格で売り出すフォロワー戦略により、消費者の支持を集めている。

 ハニーズホールディングスの2022年5月期の売上高は、対前期比5.1%増の476億円と、コロナ禍にあっても前期実績を上回った。2013年5月期の売上高619億円をピークに低落傾向にあったものの、2020年3月期を底に持ち直すしぶとさを見せている。

 一方で収益性は安定しており、2022年5月期には売上高営業利益率を2ケタに乗せている(10.5%)。しまむらや西松屋チェーンも売上高営業利益率は1ケタ台であることを考えると、健闘していると言っていい。

 

 中堅チェーンは果敢なチャレンジが大事な一方で、自らのケイパビリティ(組織能力)を省みないと痛い目に遭うこともある。たとえばハニーズホールディングスは、急成長を続ける中国に進出したことがあるが、同業間の厳しい競争環境においてプレゼンスを発揮することなく、2018年に完全撤退している。他社に追随して海外に飛び出しても、成功することは難しい。

 アパレルは、多様なブランドがあってこそ、リーディングブランドも光る。「ユニクロ」は確かに優れたブランドではあるものの、どこへ行ってもユニクロばかりではつまらない。消費者の選択肢を増やすためにも、中堅アパレルチェーンには健闘してもらいたい。