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人口も店舗数も減少のパチンコ、小売関係者が跡地に熱視線?

最近、筆者自宅の近所にあるパチンコ店が閉店した。休日に店の前を通りかかると、台にかじりついている「パチンカー」の姿が見え、「貴重な休みがもったいないなあ」と他人事ながら心配になったのをよく覚えている。本稿では、減り続けるパチンコ人口とパチンコ店の動向に触れつつ、パチンコ店跡地の活用についても考えてみたい。

fotoVoyager/iStock

減少の一途をたどるパチンコ店

 本来、日本ではギャンブル行為が禁止されている。例外の一つが公営ギャンブルで、「モーターボート競走法」といった法律により公認されている。パチンコは風営法によって規定されており、パチンコ店に対して賞品の提供を認めている。「現金を払い戻さないからギャンブルではない」というレトリックだ。

 ギャンブル全体の景気動向はどうだろうか。競艇・競輪などの公営ギャンブルの人口はある時期までは減少の一途とたどっていたものの、近年はじわりと回復傾向にある。それに一役買っているのが、インターネットおよびスマートフォンの普及だ。近年は舟券、馬券、車券のインターネット購入が浸透しており、スマホ1つあればどこからでもネット投票に参加でき、払戻金も確認できる。

 他方、パチンコは、オンラインパチンコなども最近は登場しているものの、基本はリアル店舗で楽しむモデルであり、人口は減少を続けている。

 警察庁が発表している「2022年全国遊技場店舗数及び機械台数」によると、2022年末時点における、「ぱちんこ遊技機」や「回胴式遊技機(いわゆるパチスロ)」などを設置している遊技場の店舗数は7665店舗。1990年代半ばの約1万8000店舗をピークに減少を続けている。

 最盛期の集客を支えたのが、「フィーバー台」に代表される射幸性の高い機種だ。大当たりを出せば負けを一気に取り戻せるので、多くのパチンカーがのめりこんだ。この頃、パチンコによって身を持ち崩す、「パチンコ依存症」が社会問題化し始める。サラ金に走った挙句の自殺や心中、強盗事件なども相次ぎ、世間を震撼させた。そうした事態を受け、警察庁も重い腰を上げ、出玉率や「連チャン」と呼ばれる連続大当たりも規制され、パチンコの射幸性は徐々に薄れていった。

 意外だが、貸金業法改正に伴う、いわゆる「サラ金規制」も追い打ちをとなったとされている。規制によってパチンコのヘビーユーザーが軍資金を調達できなくなり、店から足が遠のいたのだ。レジャーの多様化などもあって、パチンコ人口はその後減少の一途をたどる。

小売チェーンがパチンコ跡地に熱視線?

 他方、スーパーマーケットやドラッグストア、ディスカウントストアなどの小売チェーンは長年にわたり出店競争を繰り広げている。とくにドラッグストアは大手・中堅ともいまだ出店意欲が旺盛で、毎年100店舗のペースで出店する企業もある。

 上位チェーンは軒並みドミナント戦略を重視しており、限られた商圏に集中出店することで優位なポジションをとろうとする。そのため売上の成長ペースが鈍化したとしても、出店攻勢がストップすることもない。

 そんな背景もあって、小売チェーンの多くは出店場所の確保に四苦八苦している。立地のよい物件は喉から手が出るほど欲しいのである。そうしたなか、大手小売の店舗開発部隊に注目を集めているのが、パチンコ店の跡地だ。

 確かにパチンコ店は、好立地にあることが多い。これはパチンコ店に甘い、日本の建築規制も影響している。建築基準法では、カラオケボックスが営業できる場所であればパチンコ店も営業可能となっている。商店街だけでなく、準住居地域(商業施設と住宅が混在するエリア)でも認められているのである。

 海外のギャンブル施設は、たいてい街はずれや場末にある。だから外国人の多くは日本のパチンコ店の存在に驚くという。「学生や家族連れも多い生活の場にギャンブル施設がある」からだ。見方を変えれば、パチンコ店の跡地は一般的な商業施設に“衣替え”可能な好立地にあるとも言える。加えて、パチンコ店の建物は一定の坪数があり、郊外店舗の場合は大規模な駐車場を設けていることが多く、小売店舗に転用しやすいとされている。パチンコ台だけを撤去したスケルトン店舗には問い合わせが殺到するという。

 たとえば東京都、「渋谷」駅からすぐの場所にある「MEGAドン・キホーテ渋谷本店」はは、渋谷・道玄坂にある「三善ビルディング1・0・9」というビルに出店している。このビルには元々、「パチンコマルハンタワー渋谷店」が入居していた経緯がある。

 パチンコ店の跡地にオープンする新店舗の業態は立地によって異なる。大都市の駅前ならドラッグストア、コンビニ、スーパーマーケット、郊外や地方都市ならディスカウントストアや家電量販店がオープンするケースがよく見られる。

 小売店でなく、温浴施設に生まれ変わるパチンコ店もある。かつて宇宙船のような建物で地元の話題を呼んだ「サンライズ本店」(大阪府東大阪市、2022年1月閉店)の跡地には、日本最大級の温浴施設「花園温泉 サウナクッカ」が7月にオープン予定だ。

 このように、足元ではパチンコ店の改装、スクラップ&ビルドが行われており、この流れは今後も続くと見込まれる。次はどのパチンコ店が、どんな店舗に生まれ変わるのか。好立地にあるケースが多いだけに、店舗開発の関係者は注目しておきたいところだ。