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データで見る流通
アジア太平洋地域で成長を見せるスモールフォーマット

文=高橋 統

ニールセン クライアントビジネスパートナー アソシエイトディレクター

 

 アジア太平洋地域では、シンガポールを除く国々で、世帯サイズが縮小している。これは、都市化が進み、単身世帯および核家族が増加した影響によるものだ。それにより、住居サイズや世帯ごとの消費量も縮小し、1回当たりの買物量の減少という影響も及ぼしている。上記の生活様式の変化を受け、消費者の買物スタイルも変わってきている。「大型店でのまとめ買い」タイプの買物は頻度を減らし、「コンビニエンスストア(CVS)」や「ミニマーケット」と呼ばれる“スモールフォーマット(小型店)”での日々の買物やついで買いの機会が増えてきている。

 

 図表1はチャネル別での売上シェアのアジア平均である。数字の変化は小さいが、全体的な傾向として大型店から小型店へのシフトが見られる。これは消費者ニーズの遷移という面が当然あるが、リテーラー側の投資という面もある。アジア全体での小売店の店舗数伸長率は9%であったが、ミニマーケットは平均を超える10%の伸びを示し、昨年から2万店ほど数を増やしている。

 

 

 では、アジア太平洋地域の消費者は買物する店をどのように決めているだろうか。聞き取り調査によると、「価格」が重要な要素であることは想像に難くないが、次いで僅差で「製品の品質」と「便利さ」が挙がっている。世界平均に対しても、これら2つの要素は相対的に重要度が高い傾向が見られる。

 

 「製品の品質」に対する意識は、アジアで共通してみられる食品の鮮度に対する関心の高さや、近年発生している異物混入や偽装などの食品問題から来ていると予想される。

 

 交通事情や手段に改善の余地のあるアジアの途上国で、「便利さ」についての意識が高いのも頷ける結果である。都市部であっても渋滞がひどく、大型店へ買物に行くのは大変である。また、大きいサイズの商品を購入するのは家計への負担が重いため小サイズを高頻度で買うなどの買物事情も考えられる。よって、規模が小さい代わりに住宅近隣に出店しやすく、日常的な買物先としての小型店が今後も伸長する素地は、とくにアジアで十分にあると推察される。消費者を取り巻く環境が変わるなかで、ニーズも多様化し、従来のマスマーケット戦略ではカバーしきれない層が増加することが予想される。

 

スモールフォーマット伸長の例:ベトナム

 小型店が伸長している代表例といえるのがベトナムだ。同国の小売市場は「トラディショナルトレード(伝統的小売)」の占める割合が8割を超えるが「モダントレード(近代的小売)」も伸長し始めている。

 

 図表2はチャネル別の近代的小売店舗数の推移だ。フランスのビッグ・シー(Big C)や、韓国のロッテマート(Lotte Mart)の参入でハイパーマーケットと呼ばれる大型店も存在するが店舗数は微増にとどまる。一方、CVSやミニマーケットは店舗数を大きく伸ばし消費者の生活に浸透してきていることがうかがえる。今後も伸びが予想されそうだ。

 

 

(「ダイヤモンド・チェーンストア」2016年2/1号)