積極的なM&A(合併・買収)を継続しつつ、「八ヶ岳連峰経営」を標榜し、各エリアで高いシェアを誇る食品スーパー(SM)が緩やかに連帯することで成長を図ってきたアークス(北海道)グループ。そのトップである横山清社長は、混沌とする食品小売市場のこれからをどう展望するのか、語ってもらった。
今後3年で勝負の行方は見えてくる
──SMを取り巻く現在の事業環境をどのようにとらえていますか。
横山 SM各社の2023年度の売上高はおおむね前期実績を超えて推移しているようですが、値上げが影響しているところも大きいでしょう。日本では1990年代から「失われた30年」と呼ばれるデフレの時代が続きましたが、2022年以降、エネルギー価格や原材料価格の高騰、円安などに伴ってコスト増加分を価格に転嫁せざるを得なくなり、今まさに「新しい価格体系」へ移行している局面だと考えています。
それと同時に、コロナ禍を機に消費者の購買行動が変化し、これに伴って「価値変容」も起こっています。そのうえで、たとえばサラダ油の値上げ幅が受容価格帯を超えると、代替品の米油に切り替えるといった「行動変容」も発生します。SMはそうした変容をとらえつつ、お客さまに納得いただける「納得価格」を提供することが何よりも重要です。
近年は、安さよりも商圏ニーズに合わせた品揃えや商品のおいしさ、品質の高さ、わくわく感のある売場づくりを積極的に打ち出すSMがよく見られます。しかし、良質な商品と優れたサービスを提供すれば、お客さまは「価格をまったく気にしない」というわけでもありません。結局のところ、新しい価格体系への移行が完了するまでは、「いい商品を安く売る」ことの重要性は不変だとあらためて感じています。
──ドラッグストア(DgS)やコンビニエンスストア(CVS)など、従来の業態の垣根を超えた競争もますます激しくなっています。
横山 SMとは一般に、150坪以上の店舗でセルフサービス方式の販売形態を採用し、食品の売上高構成比が70~75%の業態を指します。相対的に収益性の低い業態であるものの、食品を中心に生活必需品を提供するライフラインとしてその需要が消失することはなく、店舗は販売チャネルの1つとしてこれからも不可欠です。
一方、上位5~6社で市場シェア9割超を占めるDgSや、大手3社の寡占状態となっているCVSに比べて、SMはまだ寡占化が進んでいません。北海道で言えば、いずれも地場のアークスグループ、コープさっぽろ、イオン北海道の“3強体制”が続いてきましたが、近年はトライアルカンパニー(福岡県)が
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