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CO2排出量実質ゼロへ! イオンアグリがめざす持続可能な農業

1993年、化学合成農薬や化学肥料をできるだけ使わずに栽培した農産物を中心にスタートしたイオン(千葉県)のプライベートブランド(PB)「グリーンアイ」は、2000年に「トップバリュ グリーンアイ」となり今年で誕生30周年になる。

5つの重点項目を公表!

 イオングループには、イオン直営農場の運営および農産物の生産委託に取り組む農業法人、イオンアグリ創造(千葉県:以下、イオンアグリ)がある。同社は、直営農場を20カ所に有し、埼玉久喜農場のトマトは「イオン農場のまるまる赤トマト」(登録商標)として出荷されている。また、直営農場のうち4農場(埼玉日高農場、兵庫三木里脇農場、大分臼杵農場、大分九重農場)で有機JAS認定を取得しており、この農場で栽培されるオーガニック農作物を「トップバリュ グリーンアイオーガニック」ブランドに統一して販売をしていく。埼玉日高農場では、すでに全耕作地を有機的管理に切り替えており、オーガニック農産物の生産・供給の拡大を図っていく。また年内にも、山梨北杜農場、山梨富士山中湖農場、福井あわら農場、埼玉松伏農場の有機転換を準備している。

 同社は2009年7月、茨城県牛久市の耕作放棄地再生事業から産声を上げた。直営農場のほかに、約300のパートナー農場からも商品供給を行っており、耕作総面積は約400ha(うち、約100haが耕作放棄地を解消したもの)。直営農場での生産品目は約80品目になる。

 この4月に、同社では「イオンアグリが目指す持続可能な農業」として5つの重点項目を明らかにした。ひとつが、先に述べたことと関連する「オーガニック拡大」だ。

 福永庸明社長は次のように語る。

 「この30年でオーガニック商品に対する消費者の意識も変わってきた。われわれのアンケートなどによれば、子どもに食べさせるものとして、オーガニックを食べさせたいという若い親世代の声があがるようになり、とくにZ世代は環境への意識が高い。イオンリテールでも品揃えを増やし、コーナー化するところが増えている。昔のような、“売れない有機”から、“売場で選べるオーガニック”になってきた。われわれも、継続して品数を増やしていきたい」

イオンアグリの福永庸明社長

国内初の「新GGNラベル」農産物を販売!

 そのほかの柱としては「直営農場の化学農薬、化学肥料の削減」「ゼロ・カーボンの取り組み」「プロダクション・ロスのゼロ化」「品質管理・人権尊重のさらなる追求」が掲げられている。

 このうち、品質管理・人権尊重のさらなる追求については、すでに大きな取り組みが動いている。同社の直営農場では、食品の安全性、環境保護、動植物福祉に配慮した持続的な生産活動を実践する農業生産の国際基準「GLOBAL G.A.P.認証」を取得し、「GLOBAL G.A.P.Numberラベル」(以下、GGNラベル)付きの商品を供給してきた。GGNラベルは、GLOBAL G.A.P.認証を受けた、「どこで」「だれが」「どのように」作ったかがわかる、責任ある農産物につけられる国際認証ラベルだ。

 さらに2022年度には、労働者福祉(GRASP= GLOBAL G.A.P. Risk Assessment on Social Practice)に関する基準をクリアし、日本国内で初めて、責任ある農業を可視化するクロスカテゴリの認証「新GGNラベル」を付けた農産物の販売が可能になった。GGNのWebサイト(https://ggn.org/)に認証番号を入力すると、これまでのGGNラベル同様、世界のどこで誰が作ったものかを知ることができる。

 4月26日からは、新GGNラベル付きの農産物4品(「まるまる赤トマト」、ほうれんそう、こまつな、きゅうり)が、関東圏の「イオン」「イオンスタイル」「マックスバリュ」など約200店舗で販売が開始された(近畿、中四国、九州エリアのイオングループ店舗でも順次拡大予定)。「現時点では4品目だが、認証待ちになっている商品もあり、品目は順次、広げていく」(福永社長)

GGNのサイト(https://ggn.org/)にイオンアグリの認証番号を入力すると、イオンアグリの情報を確認することができる。

 「ゼロ・カーボンの取り組み」では、二酸化炭素(CO2)排出量実質ゼロの農業用ハウスの取り組みを開始している。

 そのために新設したイチゴの農業用のハウスでは、ハウス内の採光性と温度ムラを改善、日射比例式給液装置を用いて灌水施肥の最適化を図り、より低コストで生産性の高い栽培体系を構築した。さらに暖房機から発生するCO2を回収し貯蔵する「炭酸ガス貯留システム」を設置し、貯留したCO2をイチゴの株元に局所施用して光合成を促進させることができる。

新GGNラベル付き販売される農産物4品

 こうした技術を組み合わせ、最適化を図ることで、従来の60%のCO2削減が可能になる。残り40%の削減については、ヒートポンプの熱交換効率の向上や、太陽光発電など再生可能エネルギーの自給自足の取り組みを並行して進めていくという。

 同社では、島根安来農場と三重いなべ農場に、それぞれ約65アール、約45アール、合計1.1ヘクタールのハウスを新設。将来的には、両農場で、年間約100トンのイチゴを生産する見込みで、東海、近畿、中四国エリアのイオングループ店舗に供給する予定だ。

 イオンアグリ創造は、こうした施策を通じ、今後も自然資源の持続可能性と事業活動の継続的発展の両立をめざし、自然・生態系・社会と調和のとれた持続可能な農産物の調達に努めていく。