メニュー

衣料品約20万点を回収! イトーヨーカドーが消費者と一緒に取り組むサステナブルな商品開発

SDGs」(持続可能な開発目標)や「サステナブル」「サステナビリティ」という言葉が聞かれるようになって久しい。消費者のサステナブル意識が高まるなか、企業にも持続可能なビジネスモデルの構築が求められるようになっている。そうしたなか、総合スーパー大手のイトーヨーカ堂(東京都/三枝富博社長)もサステナブル戦略を本格化させている。

ポリエステルの再利用に取り組む

 イトーヨーカ堂を傘下に抱えるセブン&アイ・ホールディングス(東京都/井阪隆一社長)が掲げる、「GREEN CHALANGE 2050」では、2050年までにCO2の排出量を実質ゼロにすることや、オリジナル商品の容器で環境配慮型素材を100%使用することなど、さまざまな目標の達成をめざしている。そうしたなか、イトーヨーカ堂は衣料品や住居関連品などを取り扱うライフスタイル事業部を中心にサステナブル戦略を推進している。

 先日行われたオンライン会見では、イトーヨーカ堂の直近の取り組みの成果が発表された。2110月には店舗で衣料品・傘の回収イベントを実施し、衣料品は193015点、傘は5477本回収することができた。回収したポリエステル製の衣料品はペレット加工し、再生糸工場で「RENU」(伊藤忠商事の登録商標)という再生ポリエステル糸にリサイクルされる。

 プライベートブランド「セブンプレミアムライフスタイル」では、「BODY COOLER 汗すぐサラリTシャツ」(1639円:以下税込)など、この「RENU」を使った衣料品を開発して販売しており、イトーヨーカ堂はこの消費者参加型のリサイクル活動を「i:Recycle(アイリサイクル)」と名付け、推進している。「i」にはイトーヨーカドーの頭文字と「私」という意味が掛け合わされている。

買い替えで10%オフになる企画を実施

 223月にも同様の取り組みを実施すると発表しているイトーヨーカ堂。3月121日には衣料品・傘の買い替えキャンペーンを実施する。期間中に店舗で購入した衣料品・傘1点ごとに不要な衣料品・傘を1点引き取る取り組みだ。この際、購入した衣料品・傘は10%割引となる。この企画はイトーヨーカドー108店舗で実施する計画だ。今後の展開について、執行役員ライフスタイル事業部長の梅津尚宏氏は「10月の回収キャンペーンの時にお客さまからの要望があったことから、今後はキャリーケースの回収も検討している」とコメントした。

2022年3月にも衣料品・傘の買い替えキャンペーンを実施する

 また、CO2削減のための取り組みとして、自然保護団体WWFが主催するライトダウンイベント(アースアワー)に参加。イトーヨーカドー111店舗で塔屋や看板の照明を消灯する。なお、このイベントには「セブン‐イレブン」「アカチャンホンポ」などグループの各業態も参加する。

 そのほか、国際女性デーに合わせた企画として、吸水ケアとしても使える「吸水型サニタリーショーツ」など女性の悩みに寄り添ったアイテムの提案を強化する。

サステナブルな視点での商品開発も

 このようなイベントを実施するほか、イトーヨーカ堂はサステナブルな視点を意識した商品開発にも取り組んでいる。セブンプレミアムライフスタイルの「超・形態安定シャツプラス」(3289円)では、付属資材をすべてファイバー紙に変更し、ワイシャツ1枚当たり500㎖ペットボトル0.5本分のプラスチックを削減している。

「超・形態安定シャツプラス」(3289円)では、付属資材をすべてファイバー紙に変更してプラスチックを削減している

 「リサイクルな靴下」(539円)は、2110月に回収した衣料品から「綿・綿ポリエステル」素材を抽出・紡績して開発した商品だ。国内工場でリサイクルし、消臭などの基本的な機能も備えている。

消費者から回収した衣料品を再生して開発した「リサイクルな靴下」

 そのほか、「未来世代との取り組み」をテーマに、子供に寄り添った商品開発にも取り組む。「今治こどもハンカチ」(429円)、「ポケット快適パンツ」(19692739円)では、実際に小学校に訪問し、子供の悩みや要望を聞き取り調査して商品開発に反映させた。「今治こどもハンカチ」では、折り曲げてポケットに入れやすい長方形のデザインを採用したほか、「ポケット快適パンツ」では濡れたハンカチを入れても乾きやすいようにポケット部分がメッシュ素材になっている。

イトーヨーカ堂は「未来世代との取り組み」をテーマに、子供に寄り添った商品開発にも取り組む

 消費者のサステナブル意識が高まるなか、企業がサステナブルな施策に取り組んでいることを消費者に伝えることの重要性も高まっている。梅津氏は「(回収イベントについて)反響の大きさに驚いている。一般的にこういった取り組みは自社の商品のみを回収する企業が多い。われわれは自社商品以外も回収しており、この取り組みが消費者から高評価をいただいている」と手応えを得ている。お客を巻き込みながら取り組むイトーヨーカ堂のサステナブル戦略は、小売がSDGsに取り組むうえで参考になる部分が多いのではないだろうか。