ついにオーケー(神奈川県/二宮涼太郎社長)が進出を果たし、より混沌を極める関西小売市場。業界関係者はその行く先をどのように展望しているのか。そこで本稿では、オーケーの担当経験も持つ某食品メーカーの営業担当者と、国内小売市場に詳しい経営コンサルタントに、匿名を条件に取材を実施した。オーケーは関西でも成功を収めるのか、あるいは死角があるのか。そして関西小売市場はどのように変化していくのか──。関係者ならではのリアルな視点で語ってもらった。
某メーカー営業担当者の視点
オーケーならではの価値は関西でもすぐに理解される
オーケーの進出に注目が集中しているが、そもそも関西では近年、エリア外の有力小売企業が着実に店舗網を広げてきた。
ロピア(神奈川県/髙木勇輔代表)やトライアルホールディングス(福岡県/亀田晃一社長)、バローホールディングス(岐阜県/小池孝幸社長)、さらにコスモス薬品(福岡県/横山英昭社長)やクスリのアオキホールディングス(石川県/青木宏憲社長)などがその代表例だろう。食品スーパー、ディスカウンター、ドラッグストアと、その業態は幅広い。
こうしたなかで、いわば後発組となるオーケーは関西で大きなシェアを獲れるのか? という論点での議論が盛んになっている。
同社の強みは何といっても徹底したEDLP(エブリデー・ロープライス)政策だ。現在の外部環境や景況感を踏まえれば、「節約したい」という消費者ニーズがあるのは間違いない。とくにナショナルブランド(NB)では「同じ商品ならより安く買いたい」という消費者心理が働くのは当然だ。
「節約したい」というニーズのあるマーケットに、より安く販売するプレイヤーが現れればもちろん、目立つ。わかりやすい安さが消費者を惹きつけ、買い場が徐々にシフトし、既存プレイヤーのシェアが侵食されていく。これはいわば必然的な事象であり、関西だけが例外になるということは考えづらい。
ましてや、オーケーの安さをはじめとする魅力は全国ネットの情報番組などでもよく取り上げられ、関西でもすでに一定の知名度がある。そのため、比較的早い段階で関西の消費者にも受け入れられるだろう。
「高品質・Everyday Low Price」を謳うオーケーは、高い品質・商品力と、価格競争力を両立させることで、首都圏で熱烈な支持を集めてきた。「何でもよいからとにかく安いものが買いたい」というよりも、「よい商品を手頃な価格で賢く買いたい」というニーズに寄り添うチェーンだ。
だから首都圏では、比較的所得の高い層が多く住むエリアでも繁盛店が散見される。首都圏と関西とでは購買行動や嗜好に多少の違いはあるだろうが、「賢く買いたい」というニーズは全国共通で存在するため、関西でもオーケーの価値はすぐに理解されると考える。
オーケーのEDLP価格が結局「最安」になる
ただし関西進出にあたっては、ある程度ローカライズしたMD(商品政策)も必要だ。実際にオーケーは出店にあたって、各メーカーに地域性のある商品の供給を要望したと聞いている。EDLPを実現するために既存のMDをベースとしながらも、カテゴリーごとに“関西色”のある商品は差し込んでいくようだ。
また、オーケーはメーカーに対して「地域最安値」を常に求める。これは関西でも同様だ。仮に競合他社が、一部商品についてオーケーの下をくぐる値付けをすれば、オーケーはさらにそれをくぐる価格で対応する。その繰り返しによって、善し悪しは別にして、関西市場全体の売価が“沈下”していくことも考えられる。この消耗戦を耐えられるか、あるいは別の競争軸を見出して生き残っていくか、各社の地力と判断が問われることになるだろう。
価格政策に関しては、
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