寒い冬が去り、春の訪れとともにスイーツ売場は華やかな印象に。菓子店では、ホワイトデーや卒園・入学といったイベントに対応する一方で、いちごや桜といった春ならではの限定スイーツにも力を入れている。足元では、キリスト教の行事「イースター」や、フランスのエイプリルフール「ポワソン・ダブリル」などで食べられる海外発祥のスイーツも知名度が高まっているようだ。
やっぱり強い「いちごスイーツ」
春のスイーツの代表格といえば「いちご」。毎年、各地の商業施設やホテルなどで開催される「いちごスイーツフェア」はやはり集客効果が大きく、いちごという食材のもつ影響力の大きさを改めて感じさせられる。
従来は春に開催されていたいちごフェアだが、最近では、いちごの本来の旬が1月であることや、1月15日の「いちごの日」にちなんで1月にフェアを開催する店も増えており、いちごスイーツを売りにする期間が長期化しているようだ。
たとえば成城石井(神奈川県)では、2023年1月に同社初の「いちごフェア」を開催。店舗とオンラインのダブル開催で、店舗に足を運べない消費者も楽しめるような内容にしていた点も注目だ。
「桜スイーツ」は、年々バリエーションが増加中!
また近年、いちごに次ぐ日本ならではの春のスイーツとして人気が高まっているのが「桜」だ。桜餅やゼリーといった従来の和スイーツでは、「なんとなく渋いイメージ」があったが、最近では桜のパフェや桜のケーキ、桜のドーナツなど商品が多様化し、若い世代にも親しまれるようになった。かわいらしいピンク色の見た目が、昨今の「映え」とも通じ、コンビニでも毎年発売されるなど、春のスイーツとして定着しつつある。
かわいくて日本でも人気!キリストの復活を祝う「イースター」
これら日本の四季を感じる春スイーツに加え、海外の文化に由来する春スイーツも年々盛り上がりを見せている。その中でも日本で最も知名度があると思われるのが、「イースター」だ。
イースターは、イエス・キリストの復活を祝うお祭りで、日本では「復活祭」と呼ばれる。基本的に、春分の日の後の最初の満月から数えて最初の日曜日に祝うため、毎年日付が変わり、たとえば23年は4月9日となる。
シンボルの卵やうさぎが愛らしいことから、日本でもイースターのお菓子として卵やうさぎのデザインのチョコレートや焼き菓子などが発売されるようになって久しい。スーパーのお菓子売場にも、3月になるとイースターデザインの袋菓子が多数並ぶようになった。
ちなみに、イースターのお菓子はほかにもある。フランス・アルザス地方特有なのは「アニョー・パスカル」という子羊のかたちのケーキ。卵黄と卵白を別立てにしたスポンジ生地を、陶器の型でじっくりと焼き上げて作るもので、素朴な愛らしさは格別だ。
また、イギリスには、「シムネルケーキ」という、スパイスとドライフルーツをたっぷり入れ、マジパンで飾ったケーキがある。いずれも日本ではまだあまり知られていないが、今後新たなトレンドになるかもしれない。
フランスのエイプリルフールは「ポワソン・ダブリル」!
また、近年フランス菓子店を中心に広まりつつあるのが、「ポワソン・ダブリル」という魚のかたちのスイーツだ。エイプリルフールである4月1日のことをフランスでは「ポワソン・ダブリル(Poisson d’Avril)」と呼び、子供たちが魚の形に切り取った紙を誰かの背中に貼っていたずらをしたり、魚をモチーフにしたお菓子を食べたりする習慣があるという。
魚のかたちをしたお菓子は、チョコレートやケーキ、パイなどがあるが、日本でよく見られるようになったのは魚を形をしたパイだ。季節柄、具材にいちごが使われることも多く、それぞれの職人の個性あふれるデザインとともに、スイーツファンを中心に年々注目が高まっている。
一昔前、スイーツ業界で3月のメインイベントといえば「ホワイトデー」だったが、バレンタインデーの義理チョコ文化が廃れ、自分へのご褒美チョコが主流になってきたことから、ホワイトデーのインパクトが薄まりつつあると筆者は感じている。
新年に食べるフランスのお菓子「ガレット・デ・ロワ」が年々知名度を得ているように、イースターやポワソン・ダブリルといった海外の文化に由来するスイーツが、ホワイトデーに代わる新たな春の販促商品として浸透していくかもしれない。