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コープさっぽろDX奮闘記 売上3000億企業のデジタル革命への挑戦

コープさっぽろDX奮闘記 売上3000億企業のデジタル革命への挑戦

生活協同組合コープさっぽろ
CIO 執行役員 デジタル推進本部 本部長
長谷川 秀樹 氏

 

コミュニケーションの生産性向上とは

 テクノロジーによって時代は変化しているが、企業人が変化していないことが問題である。デジタル化のステップ1では会計業務のシステム化、ステップ2ではExcelやPCを活用し業務のシステムが進行。ステップ2と、ステップ3のオンラインで情報を共有し”超並列“に仕事を進める「オンライン業務の自働化」の違いが分かりづらい。事務のPCの中にファイルを置き仕事をしている人とクラウドで仕事をしている人は全く違うという点を理解していただきたい。

デジタル化の3ステップ

 仕事とはコミュニケーションがほとんどであるため、DXで生産性を圧倒的に上げるならば、システムをいじるのではなく、広い意味でのコミュニケーションの生産性を上げるべき。コミュニケーションには①口頭で話す ②チャット形式 ③オンラインドキュメントコミュニケーションの3チャンネルがあり、 ③によって爆速的に効率は上がる。

 従来の会議では議案後に質疑と、会議が直列に行われていた。今は会議室でノートPC上の資料を開き、議案説明時に質問は声に出さず入力。1つのドキュメントに対して複数の参加者が同時並行的に質問を書き込む。説明者も画面を見ながら回答し解決、または質問者同士で解決するため議案説明後には質問事項が揃う。資料が紙やPCのCドライブ上ではなく、クラウド上にあるため全員で共有できる。

超並列の会議の進め方

 コープさっぽろの会議は①耳で聞き口頭で話し ②オンライン上で書き込みながら共有し ③Slack上で他のプロジェクトのやり取りも行う。3チャンネルを並行して使うのである。

 議事録は議案の真下にオンラインでリアルタイムに記入。発言などのニュアンスが異なる場合は当事者が議事録に上書きし更新。会議が終わった時点で参加者が納得した議事録が出来上がりどんどん物事は決まり、明確になり、次に進める。

クラウドだからこそできるムダのない資料のつくり方

 コープさっぽろではカレンダー(スケジューラー)に会議資料のリンクが貼ってあり、それを見て会議を始める。ポイントはファイルサーバのどこに資料が入っているのか誰も知らない、知る必要がない。ファイルサーバに置くと、探す時間がかかり、メール添付時も誤植や更新事項が見つかり再送するなど、手間がかかる。コープさっぽろではフォルダ分けはしないで、Googleドライブに挙げる。リンクが出るためスケジューラーに貼る。ドキュメントは常に最新版になっている。

カレンダーに資料のリンクを貼り付け

 会議中にファイルを更新するので、社内ドキュメントは確定版を作らずに最新版を置く。資料の作り方も上司からの資料作成の依頼後、誰かが白紙のドキュメントのリンクを共有する。上司はオンライン上で会議の合間などに見ることができ、コメントのやり取りも随時できるため、やり直しや手戻りが減る。ゼロの状態からドキュメントを共有してコラボレーションワークを行う。紙をシステム化するのではなく、業務自体をオンライン上でやるとどうなるのだろうということを考え直して、システムを組んでいくことが大切である。

コープさっぽろのデジタル化の方針とロードマップ

 アナログをやめて全員がデジタルに行くということではない。お客様にはアナログからデジタルまで幅のあるスケールでサービスを提供するが、社内はデジタル化を推し進める。

 22年度の主要テーマは、店舗業務における「賞味期限POSアラート」や宅配の「ルーティング最適化」、バックオフィスでの「経費・支払業務の改善(不正検知)」などで、AIの活用でかかる経費は月額数万円。23年度は「ノンプログラミングでシステム導入」に力を入れる。各事業部門でできるよう、大研修大会を開き使い方を勉強する。また、業務をITで自動化して業務自体をなくす、「オートマチックシフト」も進めて行く。

 コープさっぽろの「システムアーキテクチャ」について説明する。ステップ1では、ネットワーク、デバイス、セキュリティなど、すべての「テクノロジーインフラを整備」した。PCも配布して、セキュリティ対策も行った。PPAP(パスワード付きzipによってファイルをメール送信する方式)への対策では、知らないドメインからの暗号化付き添付ファイルは受けないよう制御をかけている。ステップ2の「コミュニケーションインフラの整備」では、SlackやGoogleWorkspaceの導入を完了している。ステップ3の「アプリケーションインフラの整備」とステップ4の「アプリケーションシステムの整備」は、現在、進行中。

システムアーキテクチャのステップ

今はSlackの導入など、それほどお金をかけなくてもDXはできると考えている。詳しくは私の書籍やYouTubeを見ていただきたい。「今日より明日の方がよい未来、よい企業になり、よいサービスを提供している」という所に向かって、ともに一歩一歩進んでいきましょう。

※このレポートは2022年11月29日に配信した「DCSオンラインカンファレンス」の講演内容をダイヤモンド・リテイルメディア流通マーケティング局がまとめたものです。