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無印良品、初の木造店舗と出店戦略 SM隣接店に手ごたえ、1000店体制へ

良品計画(東京都/堂前宣夫社長)は9月、佐賀県唐津市に「無印良品 唐津(以下、唐津店)」、大分県日田市に「無印良品 日田(以下、日田店)」を相次いでオープンした。いずれも無印良品初となる“木造建築”店舗だ。同社が木造建築で店舗をつくるねらいと、地方で食品スーパー(SM)とともに出店する戦略の成果と今後についてまとめた。

木造建築の店舗を初めてつくった理由

 良品計画はなぜ木造建築の無印良品店舗をつくったのか?「無印良品」は、ブランドに引きずられる「大量消費社会へのアンチテーゼ」として1980年、西友のプライベートブランド(PB)として誕生した。

 「素材の選択」「工程の点検」「包装の簡略化」を通じて、見栄えやブランドではなく、品質本位で、原料にこだわり、機能に着目した商品開発コンセプトが消費者の支持を集めた。当時はまだなかった「ESG」の視点からブランドが生まれている点が特徴で、83年開業の1号店から、『木・金・土』をコンセプトに木材や鉄、土や石などの天然素材を使い、廃材を什器に活用するなどして、店づくりを行ってきた。

 そうしたなかで良品計画は現在、4つのESG(環境・社会・ガバナンス)重要課題を掲げる。このうち「資源循環型・自然共生型・持続可能な社会の実現」「地域課題解決と地域活性化の実現」の2項目を事業を通じて解決するために、木造店舗を開発した。

9月6日オープンの「無印良品 唐津」(佐賀県唐津市町田2030-1)。外壁材には経年変化の少ない焼き杉を使用

 日本の林業は需要減少に伴い衰退しており、従事者の高齢化と担い手不足、そして放置林の増加が指摘されて久しい。土砂崩れの発生や水源林の保存、動物の住処減少といった諸問題とも直結しており、林業の保全が急務となっている。

 良品計画では、店舗や住宅に積極的に国産材を使うことで需要を下支えし、植林→育成→間伐材利用→管理→適正伐採→適正利用という、持続可能な「森林サイクル」を構築したい考えだ。

 そこで同社は2023年、農林水産省と木材利用に関する協定を締結。28年3月末までの5年間で1万㎡を目安に国産材を活用する。具体的には、年間60~70店舗の新規出店のうち5店舗ほどを木造店舗にしたい考えだ。

CO2排出量ゼロの店、外販もねらう

 その1、2号店が今回の唐津店、日田店というわけだ。木造店舗はグループ企業でハウスメーカーのMUJI HOUSEが設計し、「無印良品の家」でも採用している耐震性能に優れた「SE構法」を採用。省エネ技術を組み合わせることで、木造2店舗は『ZEB』評価を取得している。

木造建築のため、鉄骨造りと比べると柱は一回り太く、柱間のスパンも短い。一方で木造の柱は、「オブジェ」や「デザイン」としても認識できるため、居心地のよい空間づくりに役立っている。木材を使った家具との相性もよい

 ZEBはネット・ゼロ・エネルギー・ビルの略称で、『ZEB』は「カギゼブ」と読む。ZEB認証には複数のランクがあり、『ZEB』は100%以上の再エネ・省エネを実現する最高ランクに位置づけられる。両店舗は、高性能断熱材や高効率空調による省エネと太陽光発電と蓄電池を活用した創エネの組み合わせで「一次エネルギー消費量のゼロ化」を実現する。

 今回の木造店舗は従来の鉄骨造りの無印良品店舗と比べて、

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