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月次不振のセブン-イレブン 次の打ち手は「酒類の関連販売」と「立地・地域対応」強化

9月、10月は大手3社で
セブンだけが前年割れ!

 セブン-イレブン・ジャパン(東京都:以下、セブン-イレブン)の既存店売上高が振るわない。2021年度上期(3~8月)の伸長率は対前年同期比で101.5%。新型コロナウイルス(コロナ)感染拡大の影響で売上が大きく落ち込んだ20年度上期(対前年同期97.0%)と比較しても微増にとどまり、19年度の水準には回復していない。

 さらに下期に入ってからの9月、10月では、ファミリーマート(東京都)、ローソン(東京都)は両月ともに前年実績を上回っているにもかかわらず、セブン-イレブンのみ99.8%、99.0%と前年割れとなっている。

 こうした状況下でセブン-イレブンはどのような施策を打つのか。同社の下期商品政策説明会の内容から、とくに注目される取り組みを紹介する。

セブン-イレブンは圧倒的ナンバーワンの存在ながら、月次不振が続いている

 セブン-イレブンの業績が振るわない背景には、やはり、コロナ禍での消費環境の激変がある。同社は今後、とくに対応を急ぐべき点に「ワンストップショッピングニーズ」「健康志向の高まり」「在宅ニーズ・内食の増加と飽き」「行動制限・日常の変化」の大きく4つを挙げる。

 同社執行役員商品本部長の青山誠一氏は「感染症が収束するまでの一時しのぎではなく、これら4つの需要の変化を新しい日常・価値観と捉えて対応・改革を進めていく必要性がある」と語った。

デリカ開発の新たな軸は
「洋風おつまみ」「高付加価値」

 こうした方針のもと、セブン-イレブンは下期、どのような商品を投入していくのか。

 まずコンビニの主力商品である中食商品においては、「新たな品揃え」と「味・品質」を追求した商品の提供に力を注ぐ。

 「新たな品揃え」については、21年度上期のカテゴリー別商品売上動向では、サラダや総菜などの「デリカ」のほか、牛乳や卵などの日配品、パン、冷凍食品、カット野菜などの「食卓応援」カテゴリーの商品などが好調だった。

 このうち「デリカ」では、とくにカップに入った小容量総菜シリーズ「カップデリ」の支持が高いことを受けて、下期に新たな品揃えを加える。これまでは、「サラダ」「副菜」「おつまみ」を軸に商品開発を進めてきたが、ここに「洋風おつまみ」「高付加価値」を加える。

 たとえば「洋風おつまみ」では、「魚介と野菜のアヒージョ」(298円:以下、税抜)、「ブロッコリーペペロンチーノサラダ」を、「高付加価値」では、「3種きのこと根菜のバルサミコ和え」「ローストビーフ根菜サラダ」といった、デパ地下総菜を意識したメニューを発売する。

「カップデリ」シリーズでは、「洋風おつまみ」「高付加価値」をテーマに開発した商品もラインアップに加える

こだわりの「パスタ」の提案で
酒類販売にもつなげる

 コロナ禍で継続して取り組んできた「味・品質」の追求では、プライベートブランド「セブンプレミアム」の冷凍食品を強化する。

 具体的には「レンジで旅するシリーズ~イタリア編~」と銘打ち、「ジェノベーゼ」「ゴルゴンゾーラ」「アラビアータ」(各298円)の冷凍パスタ3品目を12月13日週までに全国の店舗で販売。また、こだわりの冷凍パスタソースも発売予定で、「ボロネーゼ」「蟹トマトクリームソース」「ペスカトーレ」の3品目を、11月8日週から一部の店舗で先行販売する。

 パスタを強化する理由の1つは、酒類との相性がよいメニューであるためだ。味・品質を追求したパスタメニューを提案し、ワインなどの関連購買につなげる。実際に「レンジで旅するシリーズ」の商品は、約130~140gと小容量で、かつ「麺よりも具材のほうが多いのでは?」と思うほどで、食事というよりワインのつまみに近い商品だ。

「レンジで旅するシリーズ」の「ゴルゴンゾーラ」と「ジェノベーゼ」
ゴルゴンゾーラは大きなカマンベールチーズが入る。食事というよりワインのつまみに近い商品だ

食感、量感にこだわる
低糖質パンを開発

  健康志向への対応もこれまで以上に進める。セブン-イレブンではあまり開発が進んでいない領域として、健康に配慮したパンを挙げ、「糖質控えめ」シリーズを投入する。
 一般的に低糖質のパンは、どうしても食感にパサつきがある傾向にある。こうしたなかセブン-イレブンは、「黄えんどう豆」という栄養成分が豊富でありながら低糖質な素材を小麦粉に混ぜ込むことで、しっとりと弾力のある食感の商品を開発していくという。11月15日週からは「シナモンロール」(118円)、「ハムチーズデニッシュ」(148円)の販売を開始している。

「糖質控えめ」シリーズの「シナモンロール」

立地別に品揃えや
売場レイアウトを変える!

 さらにセブン-イレブンは、立地別、地域別ニーズへの対応もいっそう推進する。これまで以上に細かいニーズに対応することで、売上増を図りたい考えだ。

 同社はコロナ禍で消費者のコンビニを利用するシーンが大きく変わるなか、立地別によって店舗を「住宅型」「都市型」「郊外型」の3つに大きく分類。「住宅型」をベースとしつつ、「都市型」「郊外型」ではそれぞれの需要に応じて棚割りや品揃えを変更してきた。たとえばコーヒー飲料の売場では、「都市型」店舗ではチルドカップ商品を、「郊外型立地」ではボトル缶商品を広げるといったものだ。

 さらに立地別に新しい売場レイアウトの導入も進める。

 住宅型、郊外型立地には、家飲み需要に対応するべく酒類売場を拡充した「新レイアウト2020」を、都市型立地には、都市部の狭小店でも充実した品揃えを提供する「都市型狭小店舗」と呼ぶレイアウトを採用。21年8月時点で、順に約6900店、約1200店に導入済みだ。その結果、導入店では売上高が、順に1万8700円、1万4700円増加する効果が出ている。(19年度と20年度の差、導入店と未導入店での比較)
 これを受けて同社は21年度末までに導入店を順に1万2000店、1500店まで広げる計画だ。

家飲み需要に対応するべく酒類売場を拡充した「新レイアウト2020」

スーパーで売れている
低価格の頻度品も販売へ

 地域別対応については、都市部よりも経済状況が悪化している地方や、価格競争が激化している地域において、低価格ニーズに対応できる商品を充実させる。

 具体的には、セブン&アイ・ホールディングス(東京都)グループの食品スーパーで販売し、売上高上位にランクインする「セブンプレミアム」商品を導入する。たとえば、パウチサラダや加工肉、スパゲティ麺、大容量の焼酎やワイン、菓子といった、購入頻度が高い日常使いの商品群で、一部対象店舗で実験販売したところ着実に売れる成果が出た。すでに現在、北海道や東北、東海エリアの店舗に投入しているという。

 青山氏は「品揃えに対して『コンビニとはこういうものだ』と前例にとらわれ過ぎていたことが大きな反省にある。新しい日常・価値観のなかで需要が見込めるようであれば、これまでコンビニで見られなかった品揃えや取り組みでも積極的に挑戦していきたい」と語っている。