メニュー

「デジタル化と小売業の未来」 #10 消費者はもはや店舗で買うものを決めない?ウェブルーミングの台頭

昨今、新型コロナウイルスの影響もありイエナカ消費は全般的に伸びていますが、化粧品やカバンといった外出時に必要な商材は消費が落ちる結果となりました。もちろん店舗で接客ができないという事情もありますが、外出時に必要なものは需要そのものが落ちてきているため、非常に苦戦しています。では、アフターコロナの消費はどのような変化が起こるのでしょうか。これから小売業が対応すべきことを予測するためにも、現状を改めて把握しておきましょう。

Bet_Noire/istock

ウィンドウショッピングの衰退

 新型コロナウイルスを原因とした小売業界を取り巻く変化のなかでも、とくに注目したいのが、情報を得るために実際に店舗の商品を見て回る「ウィンドウショッピング」の衰退です。ウィンドウショッピングが行われる場所の代表格でもある百貨店や大型商業施設などはどこも苦戦を強いられていますが、実はコロナ前からその兆候はありました。

 情報が今ほど多くない時代には、お店に行かないと新商品の情報や季節を感じる商品を知ることができませんでした。しかし、今はネットやSNSなどを中心に情報があふれているため、わざわざ店舗に足を運んで新しい商品を発見したり、季節を感じたりするというウィンドウショッピングならではの楽しみ方が得られなくなっているのです。

ウィンドウショッピングをする人は減少している

 若い人はとくにそうですが、たまたま行ったお店ではじめて出会ったものを購入するという習慣はすでにあまりなく、彼らはふだんからネット上で情報をチェックしています。結果、買いたい、見たり触ったりしたいものがすでに決まった状態で店舗に行くため、漠然と何かを探しに行くリアル店舗でのウィンドウショッピングは、ほぼ行われなくなっているのです。

 

ショールーミングとウェブルーミング

買うものを選択する場は、オフラインからオンラインにシフトしている

 オフラインとオンラインの両方を活用した買物には、お店で見てネットで買う「ショールーミング」と、ネットで見てお店で買う「ウェブルーミング」と呼ばれる2つの買い方があります。そのなかでショールーミング、つまり「モノを選択する場所としてのオフライン店舗」というものはほぼ機能しなくなっており、その場所がネット上に移ってきているのです。

 モノを買う場所として、好きなタイミングで購入できる利便性や実際に触って試すことは今後も必要なことなので、買う場所としてのオフラインがなくなる事はないでしょう。しかし、米国など世界に目を向けると、買物そのものにイノベーションが起こっており、買う場所はオフライン・オンラインで共存しつつ、選択の場所はオンライン上に比重が移っているのです。

日用品や食品もオンラインで選択するのが当たり前になる可能性もある

 私は、お店で見てネットで買うという人は将来的にほとんどいなくなると思っています。すでにアパレルやコスメなどでは、ウェブでウィンドウショッピングをしながらお店にはモノを受け取りに行くというウェブルーミングの買い方が増えています。次第に、食品や日用品などドラッグストアやコンビニ、総合スーパーのような業態で扱われている商品も同じ流れになっていく可能性もあるでしょう。日本では今のところそのような兆候は出ていませんが、世界的な流れを見るとモノを選択する場所とモノを買う場所がさらにネットに移っていくことが予想されます。

 実際に起こっているこれまでの変化と、日本の3年先を行くと言われている米国の小売業の動向を把握することで、これから日本の小売業で起こる変化はある程度予測することが可能です。とくに消費者の購買行動の変化は、ダイレクトに売上に直結しているため対応に遅れが出ないよう先に対応していく必要があるでしょう。もし、ウェブルーミングへの対応ができていないと、今後さらに大きな差につながっていく可能性が高いのです。

 

プロフィール

望月智之(もちづき・ともゆき)

1977年生まれ。株式会社いつも 取締役副社長。東証1 部の経営コンサルティング会社を経て、株式会社いつもを共同創業。同社はD2C・ECコンサルティング会社として、数多くのメーカー企業にデジタルマーケティング支援を提供している。自らはデジタル先進国である米国・中国を定期的に訪れ、最前線の情報を収集。デジタル消費トレンドの専門家として、消費財・ファッション・食品・化粧品のライフスタイル領域を中心に、デジタルシフトやEコマース戦略などのコンサルティングを手掛ける。
ニッポン放送でナビゲーターをつとめる「望月智之 イノベーターズ・クロス」他、「J-WAVE」「東洋経済オンライン」等メディアへの出演・寄稿やセミナー登壇など多数。