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地域への密着度を高め17年2月期に営業収益1000億円=マックスバリュ北海道 出戸 社長

イオン(千葉県/岡田元也社長)の傘下で、北海道において食品スーパー(SM)を展開するマックスバリュ北海道(出戸信成社長)。同社は2014年2月期、実に17期ぶりに過去最高益を更新した。業績低迷から抜け出し、中期経営計画では営業収益1000億円を目標に掲げる。経営戦略を出戸社長に聞いた。

既存店売上高は43ヵ月連続で前年をクリア

──2014年2月期業績は、営業収益が904億3900万円、営業利益は13億1100万円、経常利益は13億7100万円、当期純利益は3億7800万円でした。前年の13年2月期が決算期変更による13ヵ月決算でしたが、同期間の相対比較でも増収増益を達成。既存店は43ヵ月連続で前年実績をクリアしています。

マックスバリュ北海道 代表取締役社長
出戸信成(でと・のぶなり)
1965年生まれ。94年4月、札幌フードセンター(現マックスバリュ北海道)入社。99年6月、取締役総合企画室長兼監査室長。2002年2月、マックスバリュ北海道常務取締役営業本部副本部長兼商品部長、03年4月、常務取締役管理本部長、08年4月、常務取締役経営管理・人事・総務担当兼人事本部長。12年2月、取締役開発本部長。12年11月、代表取締役社長就任。

出戸 全従業員が「去年よりも今年」「今年よりも来年」と、お客さまに評価されるようさまざまに努力してきたことが業績に表れた結果だと考えています。

 マックスバリュ北海道は2000年10月、札幌フードセンターと北海道ジャスコの合併により発足しました。スタート当初は営業収益1000億円の目標を掲げ、新規出店やM&A(合併・買収)により企業規模や店舗網を拡大してきました。

 その結果、02年度までは順調に売上が伸びていましたが、03年度から一転して停滞期に入ります。そして07年度、08年度は大幅な営業減益となりました。これは、釧路市や函館市、旭川市エリアへと店舗網を拡げるなかで、既存店の力が弱くなってしまったからです。

 また、当社は03年2月に王子サービスセンター、08年4月にはジョイと合併しました。システム統合をはじめとしたインフラ整備に注力し、“内向き”の施策が中心になってしまったことも業績低迷の一因だったと見ています。

 お客さまの立場になれば、企業規模が大きくなったり、会社同士が合併したりすることは日々の買物にはまったく関係がありません。お客さまは、日常的に利用している店舗に、欲しい商品がお値打ち価格で置いてあれば繰り返しご来店されるでしょう。当社は一時、新規出店に力を入れるあまり、小売業にとって当たり前のことが疎かになっていたのです。

 その反省のもと、09年度からは、新規出店を抑えて、既存店改装への投資を増やしてきました。お客さまのニーズが変化し続けているから、それに対応した売場をつくることで店の魅力を高めていこうと決めたのです。

改装は「つくらない化」とエリア対応が柱

──既存店の改装は、すぐには効果が出なかったと聞いています。

出戸 改装に着手した09年度はあまり成果が出ませんでした。しかし1店舗1店舗と改装を繰り返すうちに、お客さまのニーズのとらえ方や変化への対応の仕方が目に見えて上手になっていき、成果が上がるようになっていきました。

 既存店改装のポイントは、(1)食の「つくらない化」と(2)個店・エリアごとに異なるお客さまのニーズ、に対応することです。

 「つくらない化」については、日本全体でその大きなトレンドがあります。北海道では、とくに札幌市中心部で「つくらない化」が顕著です。シニアの夫婦や単身世帯、子育て中の共働き世帯、そして若年の単身者など、それぞれに「つくらない化」が進んでいます。

 当社では、「簡単・便利・すぐに食べられる」をコンセプトに、とくにデリカゾーンを強化しています。揚げ物や弁当、寿司などの総菜に加え、デザートやベーカリー、そして冷凍食品も増やしています。また、調理用カット野菜をはじめとした加工度を高めた生鮮食品もコーナー化するなど力を入れています。

 もうひとつの個店・エリアごとの対応は、出店政策とも密接に結びついています。

 現在、当社は道央圏に49店舗、道北圏に11店舗、道東圏に4店舗、道南圏に10店舗を展開しています。

 道東圏には、昨年10月、釧路市に「ザ・ビッグ鳥取大通店」を新規出店し、4店舗態勢となりました。それを機に地域に合った品揃えを追求できるよう、道東圏専任の商品部員を、農産、水産、畜産、総菜、日配品の各部門に1人ずつ配置し、商圏内で支持される地元の商品をより調達しやすい態勢にしました。それまでは2割ほどだった地域からの仕入れを3割に増やし、総菜は唐揚げの「釧路ザンギ」のような地元のメニューも販売できるようにしました。

 北海道と一口にいっても、支持される商品はエリアごとに大きく異なります。たとえばジンギスカンに使う羊肉は、札幌では生のラム肉が主流ですが、道北ではたれ漬け肉、道南エリアでは冷凍のスライス肉が好まれます。チェーンストアとして全店舗統一で販売したほうが高効率であることに違いありませんが、一部の商品については地域によって嗜好が大きく異なるのが実態です。

 お客さまからみれば、欲しい商品が置いてあるお店で買物をするのが当然ですから、チェーンストアとしては地域で異なる食の嗜好に対応しなくてはなりません。それを実現するには、ドミナント化を図って効率を高め、専任の商品部員を配置できるだけの費用を捻出する必要があります。つまり、個店・エリア対応とドミナント化はクルマの両輪なのです。

──既存店のテコ入れという意味では、10年度から展開をスタートしたディスカウントストア(DS)「ザ・ビッグ」もお客から大きな支持を得ています。

出戸 そうですね。若年のお客さまにまとめ買いしていただきたいと始めたDS「ザ・ビッグ」は、今では売上の3割を占めるまでになっています。主にエリアの競合状況や商圏の特性を見極めたうえで、SMの既存店を「ザ・ビッグ」に業態転換してきました。一連の改装・転換を通じて、「ここの店舗はSMでいこう」「ここはDSに転換しよう」と、2つのフォーマットの使い分けのノウハウを習得することができました。

──14年2月期は、既存店売上高の牽引役である「ザ・ビッグ」への業態転換がありませんでした。それにもかかわらず、既存店は前年実績をクリアしています。

出戸 既存店を10店舗改装したことに加えて、ここ数年取り組んできた小さな改善の積み重ねがお客さまから評価されてきていることが大きいと思います。

 たとえば、イオングループのSM事業会社で行われている、パートタイマーによる改善運動「マイストア委員会」の取り組みをはじめ、昨年からは接客とクレンリネスのコンクールを独自に開始しました。

 小売業にとって接客やクレンリネスは基礎基本です。従業員が「このお店はお客さまからどう見えるのか」と意識して日々の業務に当たることで、お店の雰囲気も大きく変わってきます。

 お客さまが、すべての買物を当社の店舗でしているとは考えていません。時間帯や曜日、家庭のイベントなどに合わせて、複数のチェーンの店舗を使い分けしているのが実態でしょう。

 当社は改装オープンの際に、店舗の改善度合いをそれまで足が遠のいていたお客さまに知っていただくことを重視しています。当社の店舗の変化がお客さまに評価され、われわれの店舗への来店回数が増えているのだと考えています。

コンスタントに新規出店続ける

──17年2月期を最終年度とする新中期経営計画では、営業収益1000億円の達成を再び掲げました。15年2月期は営業収益920億円を見込んでいます。

出戸 既存店の改装を継続し、コンスタントに新規出店できれば十分達成可能な数値です。

 たとえば、道東エリアは4店舗ではまだまだ少ない。道南エリアの函館市は現在2店舗が営業中ですが、よりきめ細かな地域対応をするためには新規出店し、強固なドミナントを構築する必要があります。現状は店舗のチーフが地域商材の仕入れを兼任していますが、専任の仕入れ担当者を配置できるように、もっと店数を増やしたいと考えています。

──北海道はオーバーストア化傾向が顕著で、競争は激化の一途をたどっています。出店余地も限られるのではないですか?

出戸 新規出店のメーンは、最もボリュームが大きく、人口も増えている札幌市周辺になります。札幌市については、売場面積2000~2500平方メートルクラスの店舗を出店できる敷地はとても少なく、1年間に数物件出てくるかどうかです。郊外ならば、物件数は増えますが、そのぶん商圏人口は薄くなります。当社は小型SM「マックスバリュ エクスプレス」や小型DS「ザ・ビッグ エクスプレス」を展開していますから、立地や商圏に最適な店舗サイズ、フォーマットを駆使し、ドミナントのメッシュを縮めていきたいと考えています。

 一方、道北、道南、道東エリアにも新規出店していきます。北海道内には、人口10万人以上の都市がいくつかあります。たとえば函館市は27万人、釧路市は18万人、苫小牧市は17万人、旭川市は約35万人が住んでいます。人口の減少は進むにせよ、ある程度大きな都市にはまだまだ新規出店できる余地があると考えています。

M&Aにも前向き

──さて、13年10月には、帯広市のいちまる(加藤祐功社長)と業務・資本提携を締結し、40.5%を出資しました。どのようなシナジーを期待していますか。

出戸 いちまるは帯広エリアのことをよく知っていて、産地や生産者、メーカーとの結びつきも強い。商品の仕入れや開発に大きな力を発揮すると思います。実は、14年3月から、イオン北海道、ダイエー、いちまる、当社の4社で、商品や販売促進施策について情報交換をする「4社会」がスタートしました。4社共通、もしくは同じフォーマットで実施したほうがよいMD(商品政策)や販促について協議を開始しています。イオン北海道、いちまる、当社からは社長以下経営幹部が出席し、ダイエーからは北海道事業本部長が参加しています。「4社会」はまだ始まったばかりですが、今後は4社が協力して取り組む施策がどんどん増えていくと思います。また、北海道発のプライベートブランド「トップバリュ」商品の開発もすでに始まっています。

──北海道では大手によるグループ化や中小SMチェーンの合従連衡の動きが一段落したとはいえ、今後も業界再編劇が起こると考えられます。マックスバリュ北海道のM&Aに対する考え方を教えてください。

出戸 よい話があれば前向きに検討したいと考えています。

 たとえば、当社が釧路市へ初進出したのは03年10月。進出当初から苦戦し、現在の4店舗態勢で地域対応ができるまで約10年かかりました。飛び地に進出した場合は、お客さまから支持を得られるようになるには時間がかかるものなのです。

 ですから、すでに地域ごとにドミナント化を進め、お客さまから支持を得ているチェーンとタッグを組めるのであればそうしていきたい。地域のことをいちばんよく知っているチェーンとともに事業を展開できることが理想です。

 そしてドミナントエリアをより強固なものにできれば、地域で支持されている商品をよりお値打ち価格で提供できるようにもなるでしょう。地域に密着したチェーンとタッグを組むことは、結果的にはお客さまの食生活の向上に貢献できることだと考えています。