コロナ禍で冷凍食品の
売上が対前年比20%伸長!
コロナ禍で既存店売上高が振るわないコンビニエンスストア業界。しかし、カテゴリーによっては前年実績を上回る伸びを見せている。その1つが冷凍食品だ。外出自粛により買物頻度を減らす動きがあるなか、長期保存可能で手軽に食べられる点が支持されている。
そうしたなかローソン(東京都/竹増貞信社長)は9月から、“プチ贅沢”や“ごほうび”を打ち出す冷凍食品の「ビストロシリーズ」を新たに投入。メニューだけでなく、商品設計も工夫することで現在の食シーンに対応し、冷凍食品の買い場としての存在感を高めようとしている。
冷凍食品は新型コロナウイルス感染症の影響が出る以前から市場が拡大するカテゴリーとして注目されてきた。
ローソンでも2015年度から19年度の5年間で、売上が2倍以上伸長。コロナ禍では20年4月以降、売上高が対前年同期比で約20%増加しているという。
この傾向を受けてローソンでは冷凍食品の販売をいっそう強化していく方針だ。商品本部デリカ・FF部の前田恵助氏は「消費者が冷凍食品を購入する場所は食品スーパーが中心で、コンビニで購入する人は未だ少数派。冷凍食品の買い場としての存在感を高めていきたい」と説明する。
コンビニに求める商品の特徴は
「手間のかかる」「本格的な味」
しかし食品スーパーに比べてコンビニは冷凍食品の売場スペースは広く確保できないほか、低価格という点でも対抗するのは難しい。
そうしたなかローソンは潜在需要を探るべく消費者調査を実施。その結果、冷凍食品を購入するに当たり、食品スーパーは「価格が安い」「種類が豊富」「供給が安定している」という点が評価されている一方、コンビニでは「時間を選ばずに買える」「手間のかかるメニューが豊富」「手軽で本格的な味わいが楽しめる」という点が支持されている傾向があったという。
なかでもローソンが目を付けたのが、「手間のかかる」「本格的な味」といった、こだわり商品に対するニーズだ。
これをさらに取り込むべく開発したのが、冒頭の「ビストロシリーズ」である。「“ちょっと贅沢な”気分を味わえる冷凍食品」をコンセプトに、ローストビーフ、ラザニア、ビーフストロガノフ、キッシュといった、洋風レストランで提供されているような本格的なメニューを志向した4品目を発売。コロナ禍の外出自粛生活で高まっている「家飲み」や「家庭で外食のような本格メニューを楽しみたい」といった需要に対応できる商品シリーズとして訴求していくという。
ミニサイズが2個入り!
少人数世帯の「適量」を意識
同シリーズの大きなポイントの1つは、その商品設計だ。「少しずつ色んなメニューを食べたい」という需要に対応し、内容量をローストビーフは6~7枚入り、それ以外の商品はミニサイズを2個入りとした。夫婦2人でシェアしたり、単身者が好きな時に少しずつ食べたりと、近年増加する少人数世帯にとって「適量」となる商品をめざしたという。
昨今の冷凍食品では、複数品目がプレートに盛られた一食完結型や、ファミリー向けの容量の多い商品が目立つ。そうしたなか「ローソンとしても従来にない商品設計となるが、現在の消費傾向に即した商品として挑戦した」(前田氏)。
本格派の商品のため、価格はすべて税込399円と、その他の冷凍食品と比較して若干高い。しかし、全4種類を購入して2人でシェアすれば1人当たり金額は約800円であり、手ごろな価格で、外食のような本格的な家飲みシーンを演出できそうだ。
包装が「お皿代わりに」!
設計変更で利用シーンを拡大
さらにローソンは同じく9月、ユニークな包装設計の冷凍食品シリーズを開発した。それが「お皿代わりになる米飯シリーズ」だ。チャーハンや海老ピラフといった既存の米飯メニューの包装を変更。レンジアップ後に袋の上部をハサミでカットすれば、お皿に移さずそのまま食べられるようにして、簡便性を高めた。
主に、会社員や部活動に勤しむ学生向けに、外出先での手軽な食事として、また家庭でも好きなタイミングに食べられるようにストックしておける食事として、利用を獲得したいねらいだ。
このように商品設計の工夫により、現在の食シーンに対応した冷凍食品開発を進めているローソン。これらの商品が消費者に支持され、冷凍食品の買い場として存在感を高めていけるか、注目だ。