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連載 スーパーマーケットの2020 #2 U.S.M.H

ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(東京都:以下、U.S.M.H)は、イオン(千葉県)系の食品スーパー3社が統合し、2015年に設立された持ち株会社である。2020年2月期の営業収益は6916億円と業界2位の規模。首位のライフコーポレーション(大阪府:以下、ライフ)を追う好敵手である。

イオンSM事業の中核を担う

 U.S.M.Hは親会社、イオンの岡田元也会長の「食品スーパー業界は非常の多くのプレイヤーがいて、同質の競争をしている。同志を集めながら、違う食品スーパーのビジネスを可能にしていく」という考えの下、誕生した。

 U.S.M.Hの設立は2015年。マルエツ(東京都)、カスミ(茨城県)、マックスバリュ関東(東京都)の3社が経営統合して発足した。イオンと提携関係にあるベルク(埼玉県)やいなげや(東京都)にもU.S.M.Hへの合流を求めたが、実現せず現在に至っている。

 イオンの2020年2月期におけるSM(食品スーパー)事業の売上高は3兆2243億円と、国内最大の事業規模を誇る。このうちU.S.M.Hは、イオンSM事業の売上高全体の約2割を占める規模。U.S.M.HはイオンのSM事業の中核的な役割を担っており、イオン傘下の食品スーパー企業に「模範」を示す役割を期待されていると言っていい。

足元業績は絶好調も業績予想は据え置き

 ほかの食品スーパーと同様に、U.S.M.Hの足元業績も好調に推移している。2021年2月期の第1四半期業績では、新型コロナウイルス感染拡大による巣篭もり消費の活発化によって、増収・大幅増益を果たしている。

 傘下3社の個別業績を見ていくと、売上高はマルエツが対前年同期比11.9%増の1010億円、カスミが同8.3%増の708億円、マックスバリュ関東が同14.6%増の123億円といずれも2ケタかそれに近い伸びを示している。

 チラシおよび特売の自粛などにより、粗利益率も大幅に改善しており、連結営業利益は77億円と前年同期との比較で約5.2倍となっている。ただ、新型コロナウイルス感染拡大の影響が見通せないことから、通期業績予想は期初予想を据え置いている。この好調ぶりに株式市場も反応しており、現在のU.S.M.Hの株価は昨年末から20%以上上昇している。

収益性改善へ、中期経営計画が進行中!

 U.S.M.Hは現在、2022年度(23年2月期)を最終年度とする第2次中期経営計画を推進している。23年2月期に20年2月期から474億円上乗せした売上高7390億円の達成をめざす。「コスト」「デジタル」「フォーマット」の3つの改革により、23年2月期までに営業利益は130億円、営業利益率は1.8%にまで引き上げるとしている。

 ただ、業界からは「首位を競うライフと比べると、利益率が物足りない」(ある食品卸の関係者)という声が聞こえてくる(20年2月期、ライフは営業利益率2%に対し、U.S.M.Hは1.4%)。

 U.S.M.Hは3社の統合によって規模を拡大している。人員削減などを実行するとなれば話は別だが、短期間で即座に利益をねん出するのは至難の業。そのため、新規出店だけで規模を拡大してきたライフと比べると状況が異なるというのだ。現在実行中の中期経営計画では、収益性を改革できるかが焦点となる。

規模の利益をどう具現化するか

 「U.S.M.Hは3社のシナジー効果が、まだ十分に発現されていないのではないか。その意味で伸び代がある」(前出の食品卸関係者)という声もある。

 統合から5年が経過しようとしている現在、U.S.M.H傘下の3社による共同仕入れや、販売促進策の共有化が本格化している。また、同じイオン系のドラッグストアであるウエルシアホールディングス(東京都)とは、医薬品や家庭用品などの共同調達を実施していくことで合意。イオンのグループ企業を巻き込んだ、「規模の利益」の具現化は着実に進行している。

 「コロナ収束が長引けば、小商圏で日常必需品を販売する食品スーパーはますます強さを発揮する」(ある経営コンサルタント)といわれている。強い追い風が吹く中で、U.S.M.Hは約7000億円という規模の潜在力をいかに引き出せるか。真価が問われている。