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バイオーダーのパスタに 対面販売のサラダ… スリーエフが再出店をめざす小型フォーマット

コンビニストア業界で売上高5位のスリーエフ(神奈川県/山口浩志社長)は6月24日、「gooz (グーツ)JR横浜タワー店」(神奈川県横浜市:以下、JR横浜タワー店)をオープンした。売場面積は約35坪と小型ながら、近隣の自社店舗で製造した弁当を配送し出来たてメニューを充実させるほか、観光客のニーズにも対応して独自の存在価値を発揮しようとしている。

6月24日にオープンした「gooz JR横浜タワー店」。黄色と緑のトレードカラーが印象的な内装デザインだ

商業施設・オフィスが入る
新・駅ビル「JR横浜タワー」に出店

 JR横浜タワー店が入るのは、JR「横浜」駅に直結し、商業施設「ニュウマン横浜」や「シャル横浜」なども入居する地下3階・地上26階建ての大型ビル「JR横浜タワー」内。新型コロナウイルス感染拡大の影響によりビルの自体の開業が延期になっていたが6月24日に全面オープンした。

 「gooz」のコンセプトは「出来たて感の訴求による、あたたかさ、和み、やすらぎを感じて頂ける店」。店内に厨房を設置し、出来たて商品の提供を強化したフォーマットだ。

 最大で9店を営業していた時期もあったが、不採算店舗の閉鎖を行ったことから、現在は、2004年に開業した1号店の「いちょう並木通り店」(神奈川県横浜市)のほか、高速道路のパーキングエリア内店舗「gooz EXPRESS」2店を展開。今回オープンしたJR横浜タワー店を合わせると計4店となる。

「gooz」を象徴する商品の1つであるドリップコーヒー「グーツコーヒー」。カップのサイズを12・16オンスの2種類から選び、異なるフレーバーをブレンドしたり、ミルク・砂糖を加えたりと、好みの味にカスタマイズできる

日常利用と観光客の
双方のニーズに対応!

 スリーエフは18年3月、主力フォーマットであった「スリーエフ」の全店を、資本業務提携を結ぶローソンとのダブルブランド店舗「ローソン・スリーエフ」に転換。運営はローソンとの合弁会社で、スリーエフの連結子会社であるエル・ティーエフ(神奈川県/山口浩志社長:以下、LTF)が担い、スリーエフは「gooz」の運営、LTFの経営管理、商品の企画開発および供給などに事業を縮小している。

 そうした体制になってからでは初の新規出店となる「JR横浜タワー店」。きっかけは、JR横浜タワーを運営するJR東日本から依頼を受けたことだ。

 大手コンビニチェーンではなく「gooz」が出店することとなった要因の1つが、同店が特殊な立地にあることだ。JR横浜タワーの商業施設フロアとオフィスフロアとの境界となる12階で、屋外広場「うみそらデッキ」に隣接している。さらに売場面積は36.9坪(約120㎡)と一般のコンビニと比較して小さい。

 スリーエフの山口浩志社長は「goozは売場面積が限られるなかでも、オフィスのビジネスパーソンの日常使いとともに、観光や買物に来た人の需要の双方に対応した店づくりができる」と説明する。

近隣の自社店舗から
出来たて弁当を配送

 では、実際にどのような店づくりをしているのか。

 まず、小型でありながら、出来たて商品を幅広く提供しているのが特徴だ。

 スリーエフは同店のオープンに先がけて19年9月、1号店の「いちょう並木通り店」を大幅改装して厨房を拡大し、店内調理の総菜のさらなる強化を図っている。

 JR横浜タワー店では、厨房スペースが限られることから「いちょう並木通り店」で製造した弁当や総菜約30SKUを店舗に配送して販売。そのほか、同店で高い支持を得ている商品として、対面販売する店内調理のサラダや、注文を受けてからチョコレートを溶かして提供する「チョコレートドリンク」などを導入している。

 このように「いちょう並木通り店」から商品供給を行うほか、オペレーションの省力化により、店内調理を強化した店舗でありながら、運営コストは一般的なコンビニと同水準に抑えることができているという。

同じ横浜市内にある「いちょう並木通り店」で製造する弁当や総菜を約30SKU販売している
対面販売のサラダ。全15種類ほどあるメニューのなかから日替わりで8種類を用意する。単品で190円、3品で560円(ともに税込:以下同)で容器に入れて提供する

 また、同店からの取り組みとして、バイオーダーのパスタの販売にも挑戦。最新調理機を使って冷凍麺を約1分で解凍し、フライパンで温めたソースを絡めて注文を受けてから約3分で提供する。

新たな取り組みとして、バイオーダーによるパスタの販売にも挑戦している
筆者が購入した「パスタ(カルボナーラ)の総菜セット」(750円)。総菜は対面販売のメニューのなかから好きなものを選べる

 

横浜ならではの
こだわり商品を提供

 

ペパーミント味の「うみそらソフトクリーム」。横浜の海と空をイメ―ジした色が特徴で、人工着色料は使っていない。隣接する屋外デッキの利用者の購入をねらう

 観光や買物に来た人への対応では、横浜ならではの商品の提供に注力する。

 たとえば、横浜の海と空をイメ―ジした青色を特徴とするペパーミント味の「うみそらソフトクリーム」を販売するほか、「よこはまおやつプロジェクト」と称し、地元の専門店のスイーツを集積したコーナーを設置。また、横浜に本社を置く書籍チェーンである有隣堂のセレクト雑貨・文房具のコーナーも展開している。

地元の専門店のスイーツを集積した「よこはまおやつプロジェクト」コーナー。「いちょう並木通り店」では月間2000個ほど売れる人気ぶりだ
横浜に本社を置く書籍チェーンである有隣堂のセレクト雑貨・文房具のコーナー

 一方、コンビニの商品の取り扱いは、菓子や飲料、雑貨などの約700SKUに絞り込んだ。前述の出来たてメニューやこだわりの菓子・雑貨を合わせたSKU数は約1000で一般的なコンビニの3分の1ほどとなっている。

コンビニの商品の取り扱いは、菓子や飲料、雑貨などの約700SKUに絞り込んだ

 

目標日販は47.5万円
横浜エリアでの
小型店展開を進める

 今後「gooz」は、JR横浜タワー店のような「gooz」の小型店を横浜エリア周辺に増やしていきたい考えだ。「いちょう並木通り店」で製造した弁当や総菜を供給し、その他の品揃えは商圏特性に応じて変えていくという。具体的な次の出店計画は未定だが、山口社長は「今回のように日常的な利用と観光ニーズの双方への対応が必要とされる物件を獲得していきたい」と語っている。

 JR横浜タワー店の平均日販の目標は47万5000円。ただ開店後1週間の実績では、新型コロナウイルスの影響で外出自粛、リモートワークが広がっていることから計画値の3分の1程度にとどまっているという。

 スリーエフはJR横浜タワー店の出店をはずみに、大手チェーンの寡占化が進むコンビニ市場で再び新規出店を進めていけるか、注目だ。

 

「gooz JR横浜タワー店」概要
所在地   :神奈川県横浜市西区南幸 1 丁目-1-1 「JR横浜タワー」12階
営業時間  :平日8:00~21:00、土日祝9:00~19:00
売場面積  :約36.9坪
取り扱い品目:グーツコーヒー、対面販売デリカ、出来たてパスタ、弁当、総菜、パン、ソフトクリーム、ドリンク、クラフトビール、菓子、雑貨など
従業員数  :21人