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だから、あなたからは買いたくない! 女ゴコロをつかむ売場作りと接客の秘訣

男女の考え方、感じ方の違いを接客やPOPに活かすことができれば、それだけ売上は変わってくる。この数値だけでは捉えにくい女ゴコロにスポットを当て、独自の視点でクライアントのマーケティング活動のサポートを行うのが、女ゴコロマーケティング研究所所長の木田理恵氏。木田氏が「第3回美容・健康食品EXPO」<2020年1月20日~22日の3日間、幕張メッセで開催>で行った「ヘルスケア市場における女ゴコロを掴む店舗づくり」と題する講演内容をまとめた。

Photo by emiekayama

“感情”で動くとされる女性の脳のメカニズム

 物事の思考に関する男女の違いについては諸説あるが、ざっくり、男は左脳、女は右脳といわれてきた。左脳は「考える脳、論理的な、数字に落として考える」、右脳は「感じる脳、イメージをつくる」というものだが、最近では、男女の違いについて、もう少し詳しく語られるようになっている。

 左脳と右脳をつなぐものに脳梁があり、女性はその脳梁が太いため、左右の脳の連携が強く、感じたことと、考えたことが混ざり合い、他人の気持ちを“我が事”のように感じる「共感脳」になりやすい。だから、「店長が気に入らない」とか、「あの一言が気に障る」といった理由だけで、せっかく買い物に出かけたのに、「今日は止めた!」という行動につなることがあるのだという。

 一方、男性の場合は橋梁が細いため、左脳、右脳の独立性が高く、原因、作用、結果、問題を把握して、構造を把握する「システム脳」に近くなる。このシステム脳的思考では、先の買い物をするために出かけたのに「今日は止めた!」と帰ってきてしまう行動を理解することは難しい。

 「スペックにこだわる男、イメージにこだわる女」

 さらに、木田氏は3つの視点から、男女の違いを理解するポイントを述べた。

 一つ目が「スペックにこだわる男、イメージにこだわる女」。

 男性向け情報誌に、商品とスペックを徹底比較する記事が多いのはそのためだという。それに対して女性の場合、スペック、性能が高いというのはもちろんだが、自分の生活がどう変わるかをイメージし、これを持っていたら、「いまよりもっと幸せな気分になれるだろうか」、「自分がどう見えるだろうか」とイメージする。頭の中に「“私の”幸せ」イメージが鮮明に浮かべば浮かぶほど、その商品を買いたいと思う。難しいのは、そのイメージが「すべての女性にとって」ではなく、あくまでも「私だけ」という点だ。

 つぎに「男性は勝負にこだわり」、「女性は共感したい」。

 たとえば、商品に対する質問をする際、男性は店員に商品知識を求める。それも、聞いてよかった、納得できる問題解決につながるような、的確で深い商品知識だ。自分で正しい判断をするための情報収集が質問の目的であり、「勝った!」と思うことが重要で、自分より圧倒的な商品知識をもつ人に対しては信頼を寄せる。その人のお勧めであれば、即購入ということもありうる。

 女性の場合、質問は「相手と親しくなるためのコミュニケーション手段」であって、店員や営業担当者に求めるのは「共感」だ。質問に対し、いきなり的確な情報提供や問題解決をしてしまわず、話をよく聞き、「うれしい」「悲しい」「辛い」「楽しい」「不安」といった感情に共感できると、その人を信頼し、おススメを購入する。

「結果」がよければいい男性、「買い方」にこだわる女性 

 最後が、「結果」がよければいい男性、「買い方」にこだわる女性。

 男性の場合、結果として何が得られるかが重要で、「スペックを調べ、一番安く、一番早く買えるところで買う」。ネット通販向きの買い物スタイルだ。

 女性は、購入プロセスを大切に、楽しく買い物をする。「どんな店で、どんな接客、どんなディスプレイ、どんな風に扱ってくれて、店員とどんな会話をして、どんな雰囲気のなかで、商品を買うか」。買物プロセスも、重要な商品価値の一部分であり、店に共感すれば、多少高くても、そこで買うこともある。「買い方プロセス」が、価格や便利さを上回ることもあるのだ。

 木田氏は、あるドラッグストアでの自身の体験を、世の中に、女性の心理をいまだ理解できていない店が多いことの実例としてあげている。

 突然の頭痛にがまんできなくなった木田氏は、仕事の合間を縫って、近場のドラッグストアに駆け込み、「すぐ効く頭痛薬がありますか」と店員に声をかけたという。

 するとその店員は「これがいいですよ!」と即答した。

 頭痛をがまんしてここまで来て、必死で助けを求めにきたのに、件の店員は顔色ひとつ変えず、同情するそぶりさえみせなかった。

 これでは女性の心は癒されないのだ。

「それはたいへんでしたね、出張中ですか。これから、あなたにぴったりなものを探しましょう」

 多少時間がかかっても、こういう気遣いができる人から頭痛薬を買いたい、と。

 腕利きの営業マンは、こうした男女の思考の違いを言葉巧みに使い分け、実績に結び付ける。たとえば、夫婦で車のショールームを訪れた場合、ご主人には「優れたスペック」、奥さんには「こんなところに出かけるには最高ですよ」と、乗り心地の良さをアピールするのだ。

 なお、ここまで述べてきた男女の違いは、実は、「心における男女の違い」だ。見た目だけで、あるいは性別だけで、簡単に決めつけてしまうと失敗をする。

 お客の行動、言動をしっかり見極めたうえで、心の男女を判断する必要がある。