2月7日、ローソン(東京都/竹増貞信社長)は「加盟店経営の安定に向けての新たな施策について」の記者発表を行った。人口減少が続くなか、フランチャイズ(FC)加盟店が1店舗だけで売上・利益を確保するのはますます難しくなると想定した同社は、1人のオーナーが複数店舗を経営することを推奨する。さらに、低利益の加盟店に対する金銭的支援を実施するほか、オーナーの休暇サポートなど加盟店支援に関するさまざまな制度を導入し、持続可能なビジネスモデルの構築をめざす考えだ。
単店経営では利益確保は困難
ローソンが大規模な加盟店支援強化に至った背景には、加盟店の収益性低下がある。人口が減少するなか、売上の伸び悩みや慢性的な人手不足、経費の増加などで利益を確保することが困難になっている。とくに1店舗だけを運営する「単店経営」では、近隣への競合店出店などの影響を一身に受けることになり、複数店舗を運営する場合と比較すると経営上のリスクが高い。
このような状況を受け、ローソンは以前から複数店経営の推進に取り組んできた。同社のFC店舗のうち、複数店を経営するオーナーの店舗数は2015年度の7392店舗から19年度は約9600店舗(見込み)と4年間で2000店舗以上も増加している。
しかし、オーナー数そのものは全体の約58%にあたる約3700人が単店経営となっている。ローソンとしては、複数店経営による安定した運営体制と人材の有効活用により「加盟店によるマチのドミナント経営」をめざす考えだ。「複数店経営していれば、クルー(アルバイト)が都合に応じてほかの店舗のシフトに入るなど、人材を有効活用することができる。小さなエリアで柔軟な運営体制を構築したい」(竹増社長)。
複数店経営が実現した場合、業界最大の150万円の奨励金を支給
今回発表した加盟店支援のための制度は20年3月から順次導入する予定だ。まずは短期的な戦略として、単店で経営が厳しい加盟店へのサポートを実施する。単店経営店舗のうち低利益の約1200店舗を対象に、1年間限定で月4万円を支給する。加えて、対象の加盟店が1年以内に複数店経営に移行した場合には月4万円の支援をさらに2年間延長し、奨励金として150万円を支給する。竹増社長によると、この金額は複数店経営への奨励金としては業界最大とのことだ。
人材確保の面では、採用専用のコールセンターの設置や従業員募集のウェブサイト運営などを行う。加えて、従業員の研修や外国人従業員へのサポートなど、加盟店任せになっていた部分のあった教育面での支援も実施するほか、「オーナーサポート」制度を新たに導入。全国7拠点に専任の社員約100人を配置し、冠婚葬祭など急な用事でオーナーが休暇を取る際に本部から人材を派遣するシステムとなっている。そのほか、複数店経営をめざすオーナーに対して、これまで座学研修が中心だった店長の育成を本部社員(トレーナー)が直接店舗に出向いて指導するプログラムも用意した。
新規加盟オーナーには既存店の運営を任せる
中長期的な戦略としては、新規加盟オーナーに対して、新店ではなく既存店を割り振る計画だ。これまでは新規加盟オーナーに対して新店を任せていたが、今後は直営またはFCの既存店を引き継ぐというかたちに変更する。これによりオーナーは事前に売上がある程度予測できるほか、パート・アルバイト従業員も引き継いで開業できるため、売上に対する不安や求人コスト・教育の負担が軽減できるというメリットがある。「新店では予測日販と実際の売上が乖離してしまうこともあり、オーナー様の不満につながることがあった。(既存店の場合はより正確なデータを提示できるため)きちんと納得して契約していただき、ミスマッチをなくしたい」(竹増社長)。
新規出店については従来の契約方法を見直す。これまでは本部が先に物件を契約し、その後既存加盟店の承諾を得てオープンしていたが、今後は物件の契約前に既存加盟店と相談し、承認を得た後に物件を契約する。本部と既存加盟店双方の判断により出店場所を決定できる仕組みにすることで、より加盟店に寄り添った出店に切り替える考えだ。
そのほか、FC契約では従来の10年契約に加え、5年の短期契約を導入する。「たとえば高齢のオーナーが契約を更新する場合、10年では長いが5年なら継続できるというような状況に柔軟に対応したい」(竹増社長)。なお、5年契約はオーナーの年齢を問わず選択できる。
加盟店支援に約400億円を投入
ローソンは20年度の加盟店支援に約400億円を投入する考えだ。また、本部の数値目標を売上から「店利益」(加盟店の利益)へと変更し、20年度の店利益では対前期比10%増をめざす(19年度は推定5%増)。さらに、店利益を本部の「最重要KPI」(全社員の賞与に対するKPI)に設定することで、本部が加盟店の利益にこだわり、より責任を持つ体制の構築を図る方針だ。
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今回の発表の前日には、経済産業省がコンビニエンスストア(CVS)のあり方に関する有識者会議を開催した。会議では、24時間体制や食品ロス削減などCVSを取り巻くさまざまな社会問題に対し、環境の変化や店舗の状況に応じて柔軟に対応することが提起された。竹増社長は今回の大規模な加盟店支援に関して、「加盟店の利益を守ることが本部の成長につながる」とし、持続可能なビジネスモデルをめざすとしている。もはや社会的インフラとまで言われているCVSの事業を維持するためには、ローソンのような加盟店支援は必要不可欠だろう。