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食品小売業の2020年のマーチャンダイジングの3大メガキーワードとは!?

少子高齢化と人口減少が加速するなかでオーバーストアが進行しており、業態を問わず熾烈なパイの奪い合いが繰り広げられている。ライフコーポレーション(大阪府/岩崎高治社長)やヤオコー(埼玉県/川野澄人社長)などの大手スーパーマーケット企業ですら、既存店客数の減少という課題に直面しているのが現状だ。このような厳しい事業環境のなか、売上を左右する商品政策(MD)の重要性はますます高くなっている。本稿では、2020年のMDのキーワードをいくつか挙げて、解説していきたい。

業態の垣根を超えた競争激化の中、スーパーマーケットは食品マーチャンダイジングをいっそう進化していかなければならない

「簡便・即食」では部門横断型売場が重要に

 食品小売業界で応えるべき消費者のニーズとして「簡便・即食」が言われるようになって久しい。単身者や働く女性の増加により調理する時間が少なくなっているため、家で簡単に食事ができる総菜や冷凍食品の需要が高まっているのだ。加えて、19年10月からは消費増税がスタート。外食が10%であるのに対し、持ち帰り商品は軽減税率が適用され8%となるため、調理済みの食品を家で食べる「中食」の需要がますます高まっていくだろう。

 「簡便・即食」のニーズに応えるため、多くのSMが拡大カテゴリーとして力を入れているのが総菜だ。従来は総菜部門だけが商品の開発・販売を行っていたが、近年ではより素材や製法にこだわった専門性の高い商品を開発するため、素材を仕入れている生鮮各部門が総菜の開発・販売に携わるというやり方が大きな潮流となっている。また、売場展開の手法としてはベイシア(群馬県/橋本浩英社長)のように、生鮮各部門が開発した総菜を1カ所に集めた売場づくりを行うケースも見られるようになってきた。単に「簡便・即食」のニーズに応えた商品開発に注力するだけではなく、消費者にとって商品を探しやすい売場づくりを行うことも、お客の支持を獲得するためには重要だ。

「健康」に加え「持続可能性」が注目トレンドに

 また、「簡便・即食」に加えてすでに一定の需要がみられるトレンドとしては「健康」が挙げられる。日本政策金融公庫が19年7月に発表した「消費者動向調査:食の志向」によると、回答者のうち食事において重視する考えとして「健康志向」を選んだ割合は43.8%を記録し、第1位となっている。

 このように消費者の健康志向が高まるなか、すでに各社はそのニーズに対応した商品開発に着手している。アクシアル リテイリング(新潟県/原和彦社長)傘下でSMを運営する原信(同)とナルス(新潟県/森山仁社長)は、15年から開始した現代の消費者のニーズに対応した最新MD「ニューコンセプトⅡ+(ツープラス)」の一環で、以前から取り組んでいる独自商品「だし香るシリーズ」を強化。同シリーズは「減塩」の商品となっているが、そのことをセールスポイントとするのではなく、だしのうま味を十分に効かせることで味にこだわった商品となっていることをアピールしたことでヒットシリーズとなっている。

 また、原信・ナルスは「健康」に関する注目商品として「大豆ミート」をはじめとした代替肉を挙げている。

 衣料品や生活雑貨、食品などを取り扱う「無印良品」を展開する良品計画(東京都/松﨑曉社長)は19年9月、「糖質10g以下のお菓子」シリーズを発売。低糖質商品では珍しい30アイテムという種類の豊富さと、低糖質だからと言って妥協せず味のクオリティを高めたことが支持され、計画よりも大幅に売上を伸ばしている。

 「健康」に加え、「持続可能性(サステナビリティ)」も今後注目したいトレンドの1つだ。「ダイヤモンド・チェーンストア1月15日号」で実施した食品小売業のバイヤーを対象としたアンケートによると、今後ヒットする商品のキーワードとして「持続可能性(サステナビリティ)」が昨年より約18ポイントも値を伸ばしている。食品そのものだけではなくパッケージにおいても、容器をリサイクル可能にしたり、プラスチックを使用しないようにしたりするなど、環境に配慮した商品が今後消費者の注目を集めるようになるかもしれない。

ダイヤモンド・チェーンストア1月15日号では、特集「食品マーチャンダイジング2020」を実施。今特集では、有力企業8社の最新MD戦略をまとめている。各社の戦略を参考にすることで、今後のMDの方針を決める上でのヒントが見えてくるだろう。