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「牡蠣」のレストラン営業、卸売を展開するゼネラル・オイスター、絶好調の要因は?

「牡蠣」の六次化を進めているゼネラル・オイスター(東京都/吉田琇則社長)の2023年3月期の業績がすこぶる好調だ。23年3月期の業績は、売上高が37億6400万円(前年同期比+12億2400万円)とコロナ前の20年3月期の売上高(35億7900万円)を上回った。営業利益は1億2700万円で、20年3月期が1億4700万円と営業赤字だったが、黒字転換。なお、最終利益については「補助金収入」の減少により減益となっている。これら好調の要因について、代表の吉田氏に取材して得たことをまとめていこう。

5月22日東京・御徒町のパルコヤ上野店にオープンした「8TH SEA OYSTER Bar」。「8TH SEA OYSTER」とはゼネラル・オイスターの安全・安心のブランド

「牡蠣が食べたい」会員に支えられた

 同社では、直営店舗(レストラン)事業、牡蠣浄化事業、卸売事業、加工事業などをグループで推進し、2000年4月の創業から消費者に牡蠣を楽しんでもらう役割を開拓してきた。たとえば、牡蠣はかつて「冬の食べ物」とされていたが、今日では一年中楽しむことができる。これは牡蠣に取り組んできた事業家たちの努力の賜物に他ならない。中でもゼネラル・オイスターはその先駆者である。また、同社では「牡蠣好き」の会員組織を2007年2月に立ち上げ、翌年のリーマンショックにあっても店の営業は安定していたという。

 こうして、今後も営業黒字を継続する見通しが立ったゼネラル・オイスター。さらに前連結会計年度の第三者割当増資等により、自己資本比率は42.7%を確保した。これによって、17年3月期第3四半期から続いていた「継続企業の前提に関する注記」の記載を解消した。

 とくに業績を伸ばしているのが「店舗事業」と「卸売事業」の二つだ。まず「店舗事業」は売上高が30億8200万円(22年3月期の21億9700万円に対し+40.3%)、営業利益が4億4400万円(22年3月期の6000万円に対し+639.0%)となっている。

 22年の半ばごろ、コロナが落ち着いてきた段階で、アルコールが出せなくてもランチに活気が見られるようになった。「どこかに何か食べに行こうよ」という気運が高まり、すし店、焼き肉店が活況を呈するようになったが、それと同じように同社の会員に支えられて「牡蠣を食べたい」というお客が来店するようになり、立ち直りは比較的速かった。

 販管費が削減されたことも大きなポイントだ。コロナ禍にあって、スタッフがお客に接触したり、直接注文を取ることを「やらない」ということがお客から歓迎された時期でもあった。「筋肉質な収益体質が定着した」と述べるが、この要素に関しては「コロナが5類感染症となって、外食の世界は人との接触がより求められることになると思われるので、状況は大きく転換していくだろう」と吉田氏は語る。

営業時間短縮化の中でも客単価アップを可能に

 次に「卸売事業」を見ていこう。同事業の売上高は3億3600万円(22年3月期の1億7200万円に対し+94.7%)、営業利益は1億1000万円(22年3月期の6000万円に対し+84.1%)だった。

 好調の要因は、同社の牡蠣を仕入れている飲食店が増えて、その仕入れ量が増え続けていることにある。この現象の背景について、吉田氏はこう語る。

 「たとえば、コース料理が主体のレストランで、当社の牡蠣をコースに入れないでアラカルトでメニューに入れておくと、お客さまはコースにプラスして牡蠣を注文され、客単価が上がっています。客単価3800円の居酒屋が当社の牡蠣を導入したところ、客単価が200円アップしたという例もあります。すべてのお客さまが牡蠣を食べているわけではないですが、牡蠣がきっかけでアルコールの消費量も増えているようです」

ゼネラル・オイスターが提供しているコースメニュー「オイスターペアセット」6578円(税込)の中の「シーフードプラッター」のイメージ

 「コロナを経験して飲食店を取り巻く環境が変わってきています。まず、商業施設などの館が営業時間を短縮化しています。かつては18時の予約と20時30分の予約を入れるということをしていましたが、それができないところが増えてきた。営業時間の短縮化は人手不足もあるでしょう。そのような状況を打開するために『客単価アップ』は必要とされています」

 ちなみに、飲食店が同社の牡蠣をメニュー化する際、特別なことは何も必要ないという。完璧と言える安全性を浄化施設で仕上げていることから、店では牡蠣の殻をむくだけ。同社では牡蠣の保管方向から提供方法にいたるまで、しっかりとした取り扱いの仕方も指導している。このような支援体制を構築していることが、同社の卸売部門の好調を支えていると言える。

 今後の展望について、吉田氏はこう語る。

 「現状、売上高は店舗事業が8割、卸売事業が2割という構成となっています。飲食店に関しては、これから勢いよく出店するという状況にはなりません。一方、卸売のオファーが増えてきていて、こちらは店をつくるといった初期投資が不要なので、これを増やしていきたい。牡蠣の生産から販売までの六次化にしっかりと取り組んで行きます」

同社が「牡蠣」のためにつくったワインのオリジナルブランド「CACCCI(カッキー)」。

 コロナ禍は飲食業界の営業の在り方を大きく転換させた。営業時間の短縮化について指摘があったが、値上げトレンドが継続する中で「客単価アップ」は喫緊の課題と言えるだろう。その点「牡蠣」は飲食業界にさまざまな解決の糸口をもたらしている。