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「スーパーは10店舗くらいが効率良い」 バロー田代正美社長が試行錯誤する「脱チェーンストア」マネジメント!

バローホールディングス(岐阜県/田代正美社長)は、この8月に同社傘下のタチヤ(愛知県/坂本勝社長)が100%出資する形で、てらお食品(千葉県/武田大輔社長)を事業会社の1つに加えた。てらお食品は、「生鮮市場てらお」の店名で、西船橋店、八千代店、白井店(いずれも千葉県)の3店舗のみを展開する食品スーパー企業。しかし、その販売力は強烈で売上高は約50億円に達する。

タチヤの生鮮食品が入るVドラッグフレッシュプラス岐阜県庁西店(岐阜県)

タチヤ方式導入で業績急回復!

  バローホールディングスは、2018年にてらお食品の株式の18%を取得。その後、既存3店舗中の1店舗を閉鎖し2店舗にタチヤ方式を導入したところ、大きな赤字を抱えていた企業が僅か1年で黒字転換を果たした。19年に入ってから、1店舗を開業し、現在3店舗。12月にはさらに1店舗を新規出店する計画だ。

※タチヤ方式とは
・仕入担当責任制:担当が市場で仕入れる
・相対販売:担当が売場で直接販売
・個店仕入れ、個店販売、売り切れ御免
・生鮮食品売上構成比率80%
・18時閉店、毎水曜休、お盆・正月1週間休
・POPはダンボール チラシなし ポイントなし

 そのてらお食品の今後の展開について田代社長は、興味深い発言をしている。

 「食品スーパーは10店舗くらいの規模の効率がもっともいいような気がする」。

 その理由は、「社長は10店舗なら、店長や従業員の性格や家族構成を含め、すべて把握することが可能で細かく注意しながらマネジメントできる」からだ。

 逆に100200店舗になると、全てを理解するのは難しくなる。大組織ゆえにどうしても情報伝達は遅くなり、政策も後手後手に回ってしまう。

 そこで、新たな考えとして、てらお食品を10店舗展開しドミナントエリアを構築したら、そこで出店をストップして完結させ、既存店舗の成長で企業をマネジメントしていく――。

 次のドミナントエリアでは、別の社長を立て、「てらお食品2」ともいうべき企業を設立して、また10店舗の展開で完結させるというものだ。

  チェーンストアの定義は11店舗以上を展開することであるから、そのギリギリでチェーンストアにならないという考えだ。

 田代社長が言うには、「従来型のチェーンストアは、収益低減の法則から抜け出せない。生鮮食品の集荷がネックであり、必要数量を集めるのが非常に難しい。結局、規模が大きくなるにつれ、高く買わざるを得なくなる」。

 

10店舗規模で高収益を上げる強いチェーン! 

 このような話を同じバローグループのホームセンター(HC)事業中間持ち株会社アレンザホールディングス(東京都)の浅倉俊一社長にすると、「確かにその通り。10店舗くらいだと、店長のクセや棚割りやクリンリネスにまで目が届き、マネジメントは楽だ」とうなずいた。

 そのことと関係があるのかどうかは分からないが、宮崎県都城市に本部を構えるHC企業のハンズマン(大薗誠司社長)の収益性は非常に高い。

 20196月期の売上高は312億円(対前期比0.5%増)とHC業界では25位に過ぎないが、ROA(総資産経常利益率)は12.8%と上場企業1位、ROE(自己資本当期純利益率)は12.5%と上場企業2位の数字を叩きだしている。

タチヤの生鮮食品が入るVドラッグフレッシュプラス岐阜県庁西店(岐阜県)

 店舗面積1万㎡に22SKUをビジュアルマーチャンダイジングで展開する商売は圧巻。どの企業とも違う独自性は本当に素晴らしい、の一言に尽きる。

 ところでその店舗数といえば11。実は、田代社長が指摘した10店舗前後のマネジメントのしやすい規模である。

 実際、従業員の顔が見えている、というのはその通りのようで、大薗社長が社員の給与や賞与を公平な視点ですべてチェックしているという話を聞いた。

 

 さて、そのハンズマンは2020年に大阪府松原市に開業する。

 初の九州以外の店舗であり、12号店めとなる。

 果たして、そのことと経営効率がいかに関与しているか否か、興味の目をもって注目していきたい。