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ユニクロ時代のもう1つの勝ち組、ストライプインターナショナル“100人・100億・1兆円”戦略=石川社長インタビュー

「アース ミュージック&エコロジー」をはじめとした有力ブランドを展開する一方で、ファッションサブスクリプションサービスやホテル、飲食事業を手がけ、アパレル企業の枠を超えた「ファッションIT企業」として成長を続けるストライプインターナショナル(東京都)。世界的アパレル企業が相次いで経営破綻し、国内でも大手チェーンが大規模な店舗閉鎖計画を発表するなど業界全体に逆風が吹く中、存在感を高めている同社はどのような成長戦略を描いているのか。石川康晴社長に聞いた。本稿は、11月19日に公開されたインタビューの後編です。

聞き手=阿部幸治 構成=小野貴之

いしかわ・やすはる
1970年生まれ。岡山県出身。京都大学大学院修了。94年に創業。現在30以上のブランドを展開し、グループ売上高は1300億円を超える。石川文化振興財団の理事長や岡山芸術交流の総合プロデューサーも務めている。

売上ナンバーワン店舗はドーナツ専門店!

──投資リターンを考えると、今後はリアル店舗への投資が難しくなると思われます。

石川  当社の国内アパレル事業は出店ではなく、改装などへの投資がメーンになっていくでしょう。不採算店舗は減損を出してでも閉店していきます。業界全体を見ても、出店する体力があるところはほとんどなく、基本的に国内への出店はネガティブにとらえているところが多いと思います。

──SCにとっても厳しい時代になります。

石川  極端な話かもしれませんが、閉店(廃業)するSCも出てくるでしょう。とくに厳しいのはファストファッションです。アメリカンアパレル、フォーエバー21が日本から撤退したように、今後はファストファッションの大型店が勢いよく閉店していくと思います。そして次の段階では、国内アパレルの中型・小型店が閉店しだすでしょう。

 そうなると、当社のように出店意欲がまだある企業は、条件のよい出店場所が選び放題になります。そこはチャンスであると見ています。

──米国ではアパレルの撤退後にエンターテインメント系のテナントが入るケースが増えています。

石川  これからのSCは飲食とエンタメの時代だと思います。もちろん、当社としてもこの分野に取り組んでいきたいと考えており、来年、飲食事業やエンタメ事業をさらに強化していきます。すでに当社はドーナツ専門店やカフェ&レストランを運営しています。中でもとくに好調なのが、今年3月、京都に開業したドーナツ専門店「koe donuts(コエ ドーナツ)」です。

 現在、当社は国内に約1400店舗を展開していますが、koe donutsが1店舗当たりの売上高1位となっています。アース ミュージック&エコロジーの繁盛店よりも多くの売上をあげているのです。

──なぜ、ドーナツ専門店なのでしょうか。

石川  スターバックスの高級業態「ロースタリー」から着想を得ました。中国・上海の店舗を3年ほど前からリサーチしていて、これから「工場併設型」の時代がくると考えました。

 ドーナツ市場を見てみると、大手コンビニも撤退し、国内外のドーナツ専門店大手も苦戦しています。ですが、ドーナツは国民的おやつであり、嫌いな人はあまりいません。マーケットは大きいです。

──飲食のノウハウはどのように取り込んでいきますか。

石川  業界のプロフェッショナルな人材を獲得しています。会社を買うか人を買うか、です。そこにストライプインターナショナルとしての“デザイン”をのせていくイメージです。koe donutsでは、私たちのこだわりを記した「フィロソフィーブック」を用意しており、お客さまにはそれを読んでから実際にドーナツを食べてもらうようにしています。こうしたデザインの発想はアパレル企業だからできるものです。

 これからはデザイン思考を持ったアパレル企業がどんどん“食”を手がけていく時代になると思います。売上高100億円を飲食事業でつくるアパレル企業も現れてくるでしょう。

19年3月にドーナツ専門店「koe donuts」(京都府京都市)をオープン。「エシカル」などをキーワードとするドーナツをその場でつくってお客に提供している

「100人・100億・1兆円」で成長めざす

「日本のアパレルは3年だけ線香花火のようなAIバブルに酔いしれるわれわれは、“AIバブル後”もすでに見据えている」

──今後の成長戦略について教えてください。

石川  社内では「100人・100億・1兆円」というスローガンを掲げています。プロダクトでもサービスでもよいのですが、優秀な100人の人材が売上高100億円の事業をスケールさせていき、会社全体で1兆円をめざすという考えです。

 アース ミュージック&エコロジーの売上高は現在約300億円ありますが、このようにワンブランドで100億円を達成するのも1つの手でしょう。マレーシアで100億円をめざすということであれば、当社のプロダクトをマレーシアに持っていけばよいと思います。メチャカリのようなサービスの「サービス長」になるのでもよいし、DtoC市場のインフルエンサーを束ねる「ユニット長」になって100億円を積み上げるのもよいです。

 意欲のある人間が自身のバックグラウンドや経験を活用して100億円の売上高をつくっていく。そのようなポテンシャルを持った人材を全世界から集めようというのが基本的な考え方です。

──今後はどのような分野に投資をしていきますか。

石川  この数年間は、ECをなんとかしないといけないという危機感があり、「メチャカリ」のほか、自社ECの「ストライプクラブ」「ストライプデパートメント」にかなりの投資をしてきました。中国やベトナムの事業にも多くのお金を使いました。

 社内から反対する声もありましたが、「10年後のことしか考えていないんだ」と言って投資を続けてきました。その結果、多くの金額を投じたベトナムは今や営業利益率10%の事業に成長しています。中国事業もようやくブレークイーブンを越え、来年から回収フェーズに入ります。

 メチャカリは3年間投資を続けてきて、昨年から黒字化しています。ほかのサブスクリプションサービスが収益化に苦戦する中で、ファッションのサブスクリプションで黒字というのは奇跡的なことではないでしょうか。投資フェーズは赤字が出続けて非常にやきもきする時期ですが、我慢して投資し切るということも重要で、それが当社の成長につながってきました。

 今後の課題はグローバル戦略ブランドである「koe(コエ)」と「ストライプデパートメント」です。koeは現在、アパレル、ホテル、飲食、エンタメとそれぞれの領域で戦略的に投資をしています。3年ほどで、飲食事業を中心にマネタイズしていけると見ています。

 ストライプデパートメントについては、6年間は投資し続けると決めています。現在、ローンチから2年目ですが、取り扱いブランドは1000を超えてきました。これからも挑戦を続けていきます。

ストライプインターナショナル企業概要

本社 岡山県岡山市北区幸町2-8
本部 東京都中央区銀座4-12-15歌舞伎座タワー18F
設立 1995年2月
売上高 1364億円(2018年度、グループ連結)