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百貨店売上高ランキング2019! 三越伊勢丹も髙島屋も…インバウンド頼みどこまで続く?

インバウンド(訪日外国人)や国内の富裕層による消費に依存する状況が続く百貨店業界。大手の一部は不採算店舗の閉鎖や譲渡が進めるなど市場全体に停滞ムードが漂っている。一方で、従来の百貨店モデルから脱却すべく、「不動産シフト」の姿勢を鮮明にする企業も現れており、業界はビジネスモデルの大きな転換期を迎えている。売上高ランキングの上位企業を見ていく(ランキングの売上高は単体ベース、ほか当期純利益も記載)。

インバウンド頼みの状況から抜け出せるか

 日本百貨店協会の発表によると、2018年1~12月の全国百貨店売上高は5兆8870億円。既存店ベースでは17年に3年ぶりに前年実績を超えたのも束の間、18年は対前年比0.8%減と減少に転じている。

 売上データを詳しく見ていくと、百貨店業界がインバウンド消費に大きく依存しているという構図が見て取れる。同じく日本百貨店協会の発表によると、18年の「インバウンド売上高」は同25.8%増の3396億円となり、2年連続で増加、購買客数も約524万人に上り、同28.6%増と大きく伸長している。これは“爆買い”に沸いた15年を超える過去最高記録である。

 実際、商品別売上高では、インバウンド需要の大きい「化粧品」が同9.5%増、「美術・装飾・貴金属」が同3.3%増と前年に続き好調だった。一方で、百貨店の主力商品である「衣料品」は同3.1%減、家具や家電を含む「家庭用品」は同5.7%減、「食料品」は同1.9%減と軒並み減少している。過去最高を記録するほどインバウンド売上高は好調に推移したものの、主力商品の落ち込みをカバーするには至らなかった。

 ダイヤモンド・チェーンストア編集部が作成した百貨店の最新期の売上高ランキングトップ10を見ると、10社中5社が減収となった。本記事に掲載していないが、上位30社のランキングを見ると、増収となった企業は11社と前年から2社減った。とくに地方百貨店で減収決算が目立っており、経営環境の厳しさが見て取れる。上位企業の業績と動向を見ていこう。

地方百貨店の“侵食”が始まる?!

百貨店売上高ランキング(2019) 単位:100万円、% ※単体ベース 出所:『ダイヤモンド・チェーンストア』

順位 社名 売上高 増減 当期純利益 増減 決算期 本部
1 髙島屋 729,198 0.6 10,441 20.8 2019/2 大阪
2 大丸松坂屋百貨店 680,428 1.1 17,364 3.0 2019/2 東京
3 三越伊勢丹 659,736 ▲ 2.1 22,354 1289.3 2019/3 東京
4 そごう・西武 615,256 ▲ 10.3 336 2019/2 東京
5 阪急阪神百貨店 452,273 1.2 9,453 ▲ 15.3 2019/3 大阪
6 近鉄百貨店 261,536 0.9 4,290 432.9 2019/2 大阪
7 東急百貨店 190,662 ▲ 1.8 157 141.5 2019/1 東京
8 ジェイアール東海髙島屋 143,518 2.3 3,468 1.7 2019/2 愛知
9 東武百貨店 139,678 ▲ 0.3 1,516 49.1 2019/2 東京
10 小田急百貨店 136,987 ▲ 5.2 1,995 2019/2 東京

 ランキング1位は髙島屋(大阪府)で、2019年2月期の売上高は7291億円(対前期比0.6%増)と微増し、前年に続き首位を維持した。免税売上高が同12%増となる547億円に上り、インバウンド消費の恩恵を大きく受けた格好だ。

 2位はJ.フロントリテイリング(東京都)傘下の大丸松坂屋百貨店(東京都)で、19年2月期の売上高は同1.1%増の6804億円。同社も免税売上高が同22.9%増の588億円と急増している。

 3位は三越伊勢丹(東京都)で、19年3月期の売上高は6597億円で同2.1%減となった。同社は不採算店の整理を進めており、18年3月に「伊勢丹松戸店」を閉店。20年3月期についても3店舗の閉鎖を発表している。

 4位はセブン&アイ・ホールディングス(東京都)グループのそごう・西武(東京都)だ。同社の19年2月期の売上高は同10.3%減の6152億円と2ケタ減収。上位企業のなかでもとくに厳しい結果となった。西武船橋店の閉鎖やそごう神戸店・高槻店の譲渡、既存店売上高の低迷などが要因だ。

 5位はエイチ・ツー・オーリテイリング(大阪府)傘下の阪急阪神百貨店(大阪府)で、2019年3月期の売上高は同1.2%増の4522億円。都市部の店舗でインバウンド消費を取り込んだことで増収となった。

 業界全体に閉塞感が漂う中、新たな動きも出始めている。その1つが、カジュアル衣料のストライプインターナショナル(岡山県)とソフトバンクの合弁会社であるストライプデパートメント(東京都)が19年9月にリリースした、百貨店向けのEC代行運営サービス「DaaS(Department EC as a Service:ダース)」だ。

 同サービスがメーンのターゲットに据えるのは、地方百貨店。前述の通り、地方百貨店の経営環境は厳しさを増しており、自社EC立ち上げなど新規事業への投資金額を捻出しづらい状況となっている。DaaSを利用すれば、百貨店は初期投資なしで自社ECを立ち上げることができる。ストライプデパートメントとしては、百貨店が保有する優良な顧客基盤を手に入れたいという思惑がある。

 ストライプデパートメントではDaaSの第一弾として、大分県地盤のトキハと金沢・富山で店舗展開している大和(石川県)と業務提携を締結しており、それぞれの百貨店の屋号を冠したECをすでにスタートさせている(トキハ、大和とも最新期の当期純利益は大幅な赤字)。ストライプデパートメントによれば、今後も地方百貨店のDaaS参画が目白押しだという。百貨店各社が業績改善に向けた手立てを自力で見いだせないなかでは、このような他業態による百貨店の“侵食”が増えていきそうだ。