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シングルモルトに均一価格制導入!酒税法改正下でのイオンリカーの戦略

イオン(千葉県/岡田元也社長)傘下で酒類事業を展開するイオンリカー(千葉県/神戸一明社長)は822日、「イオンリカー事業戦略発表会」を開催した。そのなかで、202010月から2610月までの間に実施される段階的な酒税法改正に向けた長期的な取り組みを発表。ウイスキー事業の拡大や、自然派ワインの売上高構成比率の向上などに注力する方針を明らかにした。

イオンリカーの神戸一明社長

段階的な酒税法改正への対応が必要

 イオンリカー代表取締役社長の神戸一明氏は、事業戦略発表会において「現在はハイボールやチューハイなど、手軽に飲めるRTD(ready to drink、缶を開けてすぐ飲める酒類飲料)商品の消費量が伸びているが、お酒本来の味を楽しめる日本酒や洋酒、ワインの強化に取り組みたい。目先の消費増税だけにとらわれるのではなく、酒税法の改正を見据えた戦略が必要だ」と話した(編集部注・ちなみに酒類は酒税込みの本体価格に消費税が上乗せされる典型的な二重課税商品である)

 酒類市場では、2610月までに段階的に実施される酒税法の改正によって、チューハイや発泡酒、ワインなどの税率が上がる一方、ウイスキーは税率が変わらず、ビールや日本酒はむしろ減税となる。イオンリカーは好調なワインに加えて税率が上がらないウイスキーや日本酒の販売にも力を入れ、酒類業界の主流であるビール中心の商品戦略とは一線を画す考えだ。

ウイスキーの直輸入比率30%へ

イオンリカーで取り扱う直輸入ウイスキー

 ウイスキーについては、高品質の商品をより低価格で提供するため、現在約15%の直輸入比率を来年度には30%に高め、販売本数では輸入ウイスキー全体で年間50万本をめざす。

 現在、イオンリカーでは直輸入のスコッチウイスキーの販売を強化しており、980円(以下税抜)の均一価格で提供している。また、高価格帯の商品についても、市場価格を下回る価格で販売することで買いやすさを追求する。具体的には1912月頃から、市場価格35004000円のものを2980円、45005000円のものを3980円の均一価格で提供。「シャクルトン」(探検家アーネスト・シャクルトンに由来するハイランド)、「タムナヴ―リン」(スペイサイド)、「ジュラ12年」(ジュラ島)など、シングルモルトの新商品を販売する予定だ。

純米大吟醸(税込980円)

 日本酒に関しては、現在多くの酒蔵と正規代理店契約を締結しており、直接取引によって安定した供給と品質の保持に努めている。今後の目標としては、現在月間2万本強の販売本数を年間30万本に高める考えだ。

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イオンリカーが展開するワインのブランディング戦略とは?

ワインのブランディングを強化

 ワインについては、2030代のミレニアル世代を中心とした普段ワインを飲まない層へのアプローチに注力し、さまざまなブランディング戦略を展開する。

「イオンワインアワード」では、ワインのプロが6種類のワインを厳選する

 今年で3年目となる「イオンワインアワード」では、イオンリカーに所属するソムリエやアドバイザーなど100人のワイン専門家が、ブラインドテイスティング(ワインのボトルやラベルを隠してテイスティングすること)で6種類のワインを厳選。選出されたワインは全店で展開する予定だ。ワイン事業統括部部長の加藤修一氏は「初心者がワインを選ぶのは難しい。専門家が選んだおいしいワインを安心して飲んでいただきたい」と話す。

 また、昨年初めて開催した「ワールドワインフェス」を今年も11月に開催することを発表した。9カ国26生産者を招き、来場者と生産者が直接触れ合う機会をつくる。今年初の取り組みとしては、各ブースに自動翻訳機の「ポケトーク」を設置することでコミュニケーションをより円滑にする。

 店舗での販売戦略としては、直輸入ワインを31000円で販売することで、普段ワインを飲まない人も気軽に購入できるようにする。また、ワインへのハードルを下げるため、ワインの派生商品の販売にも注力。1911月からは、シードルをベースにアールグレイやカモミールなど紅茶のフレーバーをつけた、低アルコールのスパークリングティーを発売する予定だ。

映画「東京ワイン会ピープル」とのコラボワイン

 そのほか、104日公開予定の映画「東京ワイン会ピープル」とコラボしたチリ産のオーガニックワインも発売する。ミレニアル世代に向けて、初心者でも飲みやすい赤ワインの「メロウルージュ」、白ワインの「ミストブラン」(各1780円)の2種類を展開する。

自然派ワインの取扱を拡大

イオンリカーは、環境に配慮した製法で作られた自然派ワインの取扱を強化する

 また、イオンリカーはワイン業界の持続可能性についての取り組みを強化する方針も明らかにした。「世界的な異常気象の影響で、ワインが製造できなくなった地域もある。当社としては、環境に配慮した自然派ワインの製造に取り組むワイナリーを応援し、ワイン業界の持続可能性に貢献したい」(加藤氏)。

 18年時点でイオンリカーが取り扱う自然派ワインは29品目、ワインのカテゴリーに占める売上高構成比は2.1%となっている。これを20年には100品目・同10%に、25年には200品目・同30%に拡大する考えだ。

25年には都内で25店舗展開

 イオンリカーは今春、都内の30坪程度の小型店6店舗を閉店しており、現在は都内に7店舗、神奈川県に1店舗を展開している。「(小型店では)デイリーユースの店をめざしたが、酒は嗜好性が高く売場面積が一定以上なければお客の支持を得られない。今後の出店は商品をフルラインで品揃え可能な70坪規模の店舗に絞りたい」(神戸社長)。現在は出店に適した物件を探している最中で、25年までをめどに都内で直営専門店25店舗体制をめざす。

 日本の酒類市場は、人口減少と若者の酒離れが進行していることから長年縮小傾向にある。また、10月から開始される消費増税により、消費者は節約志向をますます強めると予想される。このような状況下では、イオンリカーのようにビールだけでなくウイスキーや日本酒、ワインなど多くのカテゴリーで強みを持ち、多方面から消費者にアピールすることが重要になるだろう。