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「食を通じたライフデザイン企業」めざし、新しいSMを創造=光洋 平田 炎 社長

大阪府に本部を構え、近畿エリアで店舗展開する光洋。競争が激化するなか、新たな品揃え、店づくりに取り組み、消費者の支持獲得をめざしている。イオングループが進める食品スーパー(SM)事業の再編も視野に、今後の展望、課題についてどのように考えているのか。同社の平田炎社長に聞いた。

ピーコックストアを再生

──取り巻く競争環境をいかに認識していますか。

ひらた・あつし●1964年生まれ。87年6月、ますや(現マックスバリュ九州)入社。2009年5月イオンSM事業戦略チーム。10年4月マックスバリュ北海道取締役。13年5月同社取締役営業統括本部長兼営業推進部長。14年3月光洋顧問、同年5月より光洋代表取締役社長(現任)。

平田 当社は京阪神を中心とする近畿エリアで81店を展開しています。商勢圏では同業態のSMだけでなく、食品を積極的に扱うドラッグストア、またディスカウントストアも台頭、業態の枠を超えた競争が激化しているのが現状です。

──それに対し、どのような方針で事業を行っていますか。

平田 「Design Your Eat」をコーポレートメッセージに掲げ、種々の施策に力を入れています。いうまでもなく「Eat」は食べること。同じ食べるなら、おいしく、楽しいほうがいい。また、たまにはいつもと違うものも喜ばれるはずです。当社の店舗は、そんな商品を提供する場所でありたい。つまり食を通じてお客さまの日々の生活はもちろん、当社にとっても満足度の高い、「食を通じたライフデザイン企業」をめざしています。

──近年の業績推移を教えてください。

平田 私が社長になったのは2014年。以来、店舗網の活性化策により既存店ベースの売上高は伸長を続けていましたが、16年度上期からは下降傾向、下期からは再び上昇に転じました。17年度下期からは好調な業績が一巡したことで伸長率が鈍化し始め、18年秋口からは多くのSM企業と同様に低迷しました。ただ19年度に入り、直近は上昇機運にあります。

──社長就任後、順調だった既存店売上高が16年上期から下がったのはなぜですか。

平田 大きな要因は16年3月、イオンマーケット(東京都/乾哲也社長)から京阪神地区のピーコックストア(旧大丸ピーコック)23店を継承したことです。不振な状態を立て直そうと、積極的に人員を投入したほか投資も行いました。その間、光洋の店舗に手が行き届かず既存店業績がしばらく低迷したのです。その後下期からはテコ入れが功を奏しV字回復を果たしました。ピーコックストアだけについていえば当初赤字でしたが、営業損益を13億円改善、黒字転換できました。振り返れば文化の異なる企業が融合することの難しさを経験しました。

──他方、イオングループでは、全国にある事業会社の再編を進めています。近畿エリアにおいて光洋は今後、ダイエー(東京都/近澤靖英社長)を存続会社とする経営統合も控えています。そのなか、現在は何を意識し経営にあたっていますか。

平田 今年度、当社がテーマに設定するのは「活」。つまり常に店舗、売場、人のほか、ひいては地域も「活性化」できればと考えています。お客さまのニーズは変化しており、これまでどおりの事業を続けていたのでは支持を得ることは難しいでしょう。まったく新しいSMを創造し、事業を再構築するつもりで日々、改革を続けています。

「超Deli化」率の目標は20%

──コーポレートメッセージとする「Design Your Eat」のもと、現在、どのような施策を実施していますか。

平田 まず、その前提である、当社の商勢圏である近畿エリアについて説明します。日本全体の状況と同様、長期的に人口は漸減すると予想されています。とはいえ都市圏以外のローカルエリアと比較すれば、人口密度はこれからも高い水準を維持すると考えられます。さらに詳しく分析すれば、単身世帯とその食品消費高は伸びると予想されます。一方、高齢化や有職女性も増加する傾向にあります。

 これらを受け、当社では「即食」が特徴の商品に力を入れる考えです。従来から重視している青果、鮮魚、精肉といった生鮮食品を大切にしながら、調理時間が減少している現代人がすぐに食べられる商品の拡充を図り、支持獲得をめざします。

──「即食」は、どの程度拡充する計画ですか。

平田 重点施策のテーマとしているのは「超Deli化」。これは、総菜部門に加え、生鮮各部門でも商品の加工度を上げた即食商品をどんどん増やしていこうという施策で、これを進めています。総菜の売上高構成比は全社平均で10%台前半で推移していますが、そこへ今説明した各生鮮部門の即食商品を付加することにより、全体で20%となることを目標にしています。

今年4月、リニューアルオープンした「KOHYO SENRITO店」。「超Deli化」のもと、即食商品を強化している

──実際、店舗ではどのような商品があるのでしょうか。

平田 青果部門では、カットフルーツやサラダ、鮮魚部門では寿司や刺身のほか、焼き魚や煮魚といった魚総菜、また精肉部門においてはローストビーフなどの品揃えを充実しているところです。モデル店に位置づけているのは今年4月、リニューアルオープンした「KOHYO SENRITO(センリト)店」(大阪府豊中市)。それら生鮮素材系の即食商品を積極的に投入しており、お客さまからは好評をいただいています。今後、同店の成功事例を新規出店のほか既存店にも少しずつ波及させていく計画です。

青果部門では、カットフルーツが充実していた
総菜部門は、できたて商品を提供する方針だ
鮮魚部門では、焼き魚や煮魚の魚総菜を集めたコーナーを特設する

──一方、商品のおいしさそのものを追求する取り組みはありますか。

平田 そもそも味は、人の感覚によるものであるため、絶対的な尺度がないのが特徴です。当社では現在、商品の味付け、香り、食感のほか、できたての要素である温度も重視する一方、天候や気温といった環境的要因、またお客さまが住む地域で好まれる味も勘案しながら、基準を定めているところです。

 単純に「店内加工だからおいしい」という、従来の考え方をそのまま踏襲するのではなく、アウトパックやキット商品も取り入れながら、当社が持つ経営資源を活用し品揃えを再構築していく考えです。

人の意欲喚起がキーポイント

──イオングループが全国のSM事業会社の再編を進める過程で、今年3月、マックスバリュ西日本(広島県/加栗章男社長)から兵庫県内の8店を承継しました。

平田 競争の激しいエリアに立地し、また長らく手を入れられていなかったこともあり、いずれも現状は赤字です。下期から本格的に活性化を図るための施策を打つ計画を立てているところです。

 ピーコックストアを黒字転換した経験を通じて得たのは、再生のポイントは店舗で働く従業員のモチベーションであるということです。いうまでもなく店を運営しているのはヒトであり、彼らの意欲を喚起することこそが重要だと強く再認識しました。

──実際、ピーコックストアではどのような取り組みにより従業員の意欲を喚起できたのでしょうか。

平田 不足していた人員を投入したのは前述のとおりですが、さらに店舗へこまめに足を運び、従業員とコミュニケーションを積極的に図りました。従来、慢性的な赤字にあり、現場の雰囲気は疲弊していると感じました。それに対し、「売りたい商品を売ってもいい、つくりたい売場をつくってもいい」というメッセージを地道に伝え続けたのです。徐々に、成果に結びつき、それを見た他店も同調するように業績は上がっていきました。

──ダイエーとの経営統合に関して、課題は何ですか。

平田 互いに、立地により規模や売場が異なるマルチフォーマットを持っている点です。当社はSM、ダイエーは総合スーパーであるため、幅広いフォーマットをいかにまとめるかは重要なポイントとなります。一方、当社についていえば既存店の競争力強化、また都市部向けの小型モデルの完成など、クリアすべき課題は多くあります。

 当面は、新たなSMづくりを志向し、現在力を入れる新たな品揃え、店づくりを進める一方、教育にも力を入れることで、店舗網の強化を図っていく考えです。

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