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『覚悟と義務 突き付けられた薬剤師たち』著者・玉田慎二氏が込めた思いとは

ダイヤモンド・ドラッグストア誌連載の「行政ニュース」の執筆者、玉田慎二氏(医薬経済社)が新著『覚悟と義務 突き付けられた薬剤師たち』(評言社MIL)を上梓した。前著『医薬分業の光と影 薬剤師、官僚、医師会のインサイドストーリー』(ダイヤモンド社:以下、『医薬分業の光と影』)の続編と位置づける。著者の玉田氏に出版の経緯や薬剤師への思いについて聞いた。

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医薬経済社の玉田慎二氏

医療保険制度は社会主義、統制経済の世界

──『覚悟と義務 突き付けられた薬剤師たち』出版の経緯を教えてください。

玉田 「評言社MIL新書」という薬剤師、薬学生に向けたレーベルを企画したエニイクリエイティブ(東京都)の高見澤秀幸社長からの依頼でした。拙著『医薬分業の光と影』を読んで、「ぜひウチでも書いてほしい」と頼まれたのです。業界紙誌仲間から乞われたわけですからね。お引き受けしました。本書は『医薬分業の光と影』の続編です。前作では1974年前後から2020年2月頃までの出来事、行政施策、政変、スキャンダルなどをクロニクル的に綴っています。今回は、そこから後の22年2月頃までに起きた“今”のテーマをピックアップしました。前作で好評だった裏話を集めた「エピソード」も引き続きいくつか披露しています。

──タイトルの『覚悟と義務』にはどのような思いを込めたのですか。

玉田 私はここ数年の薬剤師・薬局のテーマは「覚悟」だと思っています。行政が突き付けている。けれど、現場にその感覚は薄い。ダイレクトにタイトルに記すことでキャッチーに訴えたかった。そのほうが断然売れるでしょう(笑)。義務は、覚悟と“対”になる考え方として盛り込みました。

──読者に対していちばん伝えたかったことは何ですか。

玉田 この国の医療保険制度は自由経済ではない社会主義、統制経済の世界です。このことを自覚している当事者は案外少ない。とくにドラッグストア(DgS)関係者は認識していない人が多いのではないでしょうか。行政がつくる制度は統制経済を前提に成り立っているのです。
本書で取り上げたテーマは「薬剤師のワクチン注射」や「リフィル」「敷地内薬局」「管理薬剤師の要件」「スイッチ緊急避妊薬」などですが、こうした制度は統制経済の中で動いています。そこは押さえないといけない部分です。医療保険制度の中で生きていることを、現場の薬剤師や企業経営者は決して外してはいけないのです。そのことを、政策制度や法案議論を取材してきた者として伝えたかったですね。

これからの医薬分業は若い人たちにかかっている

──印象に残る章やエピソードを教えてください。

玉田 個人的な好みでいえば、プロローグやエピローグ、エピソードといった本編からは外れた“物語が動かない”部分は結構気に入っています。ただ、書き終えた原稿は、もう自分の手を離れてしまっているので、読者それぞれが自由に面白さをくみ取ってくれればいいというのが本音です。

 ただ今回は、結構意見をしていますね。私自身の個人的な見解、希望、願望、妄想なんかを盛り込んで大風呂敷を広げています。パート6の「改正薬機法がもたらす新たな世界」などは、賛否両論があるかもしれません。でも私の大法螺がそのまま終わらないと信じています。

 当たり前ですが、これからの分業は若い人たちにかかっています。「Old soldiers never die, they just fade away.」(老兵は死なず、ただ消え去るのみ)です。若手がつくっていく“時”です。
 話はそれますが、私は若い人たちと語りたい。近い将来、薬学生あたりとゼミナールをやりたいですね。その中で、今後の分業について考えたい。22年度改定で導入されたリフィル処方ですが、この薬剤師の武器をふんだんに駆使して医師と対等に渡り合う。そんな薬剤師になるための方法論を一緒に考えたいです。大学関係者の皆さん、いつでも私への“招しょうへい聘”をお待ちしています(笑)。

 分業への参入が本格化しているDgS業界の方々は、もっと業界紙誌を読んで制度や業界のウラ事情を知ってほしいですね。そのためには、われわれ業界紙誌記者との付き合いはマストです。

(書籍情報)
『覚悟と義務 突き付けられた薬剤師たち』
著者 玉田慎二
発行所 評言社
定価 1,210円(本体1,100円+税10%)
発売日 2022年7月6日
判型 新書判
頁数 192