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無人ミニコンビニを年内1000カ所設置へ! ミニストップ、マイクロマーケット開拓に本腰

ミニストップ(千葉県/藤本明裕社長)はマイクロマーケット(超小型商圏)の開拓に本腰を入れる。企業のオフィス内などに設置している職域(職場)内の無人ミニコンビニ「ミニストップポケット」を年内にも1000カ所に拡大する。ヤマハ(静岡県/中田卓也社長)の音響通信技術を活用し、スマートフォン(スマホ)でドアの解錠ができる実証店舗を7月4日に開設した。不特定多数の人が利用できる無人ミニコンビニを低コストで導入できるようにすることで、設置拠点の拡大に拍車をかける。

今回新たに実証する「ミニストップポケット」。最小構成は左の冷蔵庫と右のゴンドラが1台ずつ。冷蔵庫上の左にあるのがセルフレジ、その右がスキャナー

オフィス内に700カ所、月3500万円を販売

 ミニストップが2020年秋から本格的に始めた「ミニストップポケット」とは、専用に開発したセルフレジを利用し、キャッシュレス決済で24時間利用できる職域内の無人ミニコンビニだ。企業のオフィスの休憩室など関東地方を中心に約700カ所で展開。月間3500万円程度を販売している。

 最小構成は冷蔵庫とゴンドラが1台ずつで、飲料や菓子、カップラーメン、日用品など約100アイテムを扱う。就業者人数100人以上を目安に、1坪のスペースから設置が可能で、週1回から隔週の頻度で商品を補充する。基本的に設置先の初期費用はゼロで、電気代や水道代(コーヒーマシーン設置の場合)のみの負担で運用できる。

 「プレミアムプラン」と位置づける最大構成では、おにぎりやサンドイッチ、弁当といったデリカ商品やデザートなどを含め300アイテム以上の展開も可能。就業者人数400~500人以上を目安に、5坪から設置でき、商品補充は毎日行う。この場合は月10万円からの利用料を徴収する。

 現在は防犯上の理由から、社員だけが出入りできるオフィス内のスペースに設置するケースが大半で、一部で工員だけが利用する工場や看護師が使う病院のナースステーション内にも置かれている。

コンビニ各社がマイクロマーケットに侵攻! ネックとなるのは?

 オフィスや病院、駅構内施設、工場、学校、ホテル、休憩所といった「マイクロマーケット」と呼ばれる限定小商圏を巡っては、そのポテンシャルに期待し、大手コンビニが取り組みを進めている。

 先行するファミリーマート(東京都/細見研介社長)は、貯金箱型の売上回収箱を使った「オフィスファミマ」を展開する一方で、セブン-イレブン・ジャパン(東京都/永松文彦社長)は自動販売機を拡大している。そのほかにも、カメラやセンサー、顔認証システムなどデジタル技術を活用した省人型店舗を実験展開するなどの取り組みを各社が進めているが、一部では撤退の動きもある。

 ネックとなっているのは高額の初期費用だ。高度なデジタル技術を活用した省人型店舗はもちろん、比較的低コストで済む職域内店舗でも、オフィスなら取引先の人、病院なら患者や面会者など外部の人が利用する場合は閉鎖空間をつくらなければならず、出入り口ゲートの設置費用もかさむため、設置先を広げる障害になっていた。

セキュリティの課題をクリアする出店方法

 こうした課題を解決するため、ミニストップは7月4日、スマホでドアの解錠ができる実証店舗を東京・高輪の「ヤマハ東京事業所」内に開設した。

 この実証店舗では、ヤマハが開発した音響通信技術「SoundUD」を活用する。新たに開発した入口のボードにスマホをかざすと、解錠画面が立ち上がり、画面上のボタンを押すと音声が再生されて、それをトリガー(引き金)に施錠が解除され、入室できる。

スマホの解錠画面からボタンを押せば音楽が流れ、ドアが開く

 専用アプリや事前登録は不要で、利用者は初回入店時に顧客属性を入力するだけで利用できる。音を信号にするため、実際に来店した人しか開けられず、防犯効果も高い。

 設置先としては使用していない会議室、あるいは簡易なドアを付けたパーテーションを設置したスペースを想定しており、先述の最小構成なら利用料もかからないため、初期投資が抑えられる。

導入のハードルが下がることから、外部からの入館者など不特定多数の利用者も想定した場所に設置できるなど、ミニストップとしては出店の選択肢が広がる。コロナ禍で企業や病院の売店の運営が困難になり、「代わりにミニストップポケットを導入したい」という引き合いもあったが、これまではセキュリティが担保できないことを理由に断っていたという。

年内1000カ所に拡大、将来は5000カ所も

 ミニストップは現在展開している約700カ所の設置拠点を年内にも1000カ所に拡大する。今後は「マイクロマーケットはまだまだ伸びる」(ミニストップ職域マーケット部部長の原田浩一氏)とみており、「次の戦略は実証店舗の利用状況を踏まえた上で組み立てるが、事業として成立させるためには将来的に3000~5000カ所に広げていかなくてはならないだろう」(同)と話している。

 なお、7月4日に開設した「0号店」のスペースは約10㎡。20年に閉店したヤマハ東京事業所の売店跡に透明パーテーションを6枚組み立てる形で設けた。パーテーション1枚当たりのコストは約2万円。冷蔵庫とゴンドラを2台ずつ設置し、冷蔵庫の上にキャッシュレス決済ができるセルフレジと商品のバーコードを読み取るスキャナーを置いた。飲料や菓子、カップラーメン、ティッシュペーパーなど約100アイテムを扱う。

 実証店舗は今後数カ所に設ける予定で、利用状況を分析し、「スムーズな入店動線をどう確保するか」「場所に応じて利用者の属性情報を取得する場合、どんな仕組みの連携が必要か」などを検証するとしている。