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店選びの基準になる感染対策、来店客の目はさらに厳しく

コロナ禍ではハードとソフトの両面から感染予防を推進してきたサラヤ。消費者と事業者のニーズに応えたコロナ対策を提案する一方、2021年6月にHACCP(ハサップ)が完全義務化されたことを受け、衛生管理の見える化システム「GRASP-HACCP」を開発。衛生分野のトップ企業として、小売業の衛生対策を全方位でサポートしている。

小売業の衛生対策を全方位でサポートする

 1952年、赤痢予防のために日本初の薬用石けん液と容器を開発し、日本に手洗いの文化を広めたサラヤ。コロナ禍では感染症の専門家と連携しながら、持続可能な感染対策を提案し、小売業をサポートしている。

 「コロナが猛威を振るい始めた当初から、食品スーパーの来店客に対してアンケート調査を定期的に実施してきました。9割以上の人が『店舗の感染対策が店選びの基準になる』と回答しており、この割合は今もほとんど変わっていません。いかに感染対策が重要であるかがわかります」

「サニテーション事業本部本部長戸室 淳治氏」

 こう話すのは、サニテーション事業本部 本部長の戸室淳治氏。同社が実施した調査によれば、店舗選びの基準が満たされていない場合、その店を「訪問しない」と回答した人の割合は、当初は10%程度だったが、直近では約20%に倍増しているという。

 「長引くコロナ禍で消費者の目は厳しくなり、感染対策に求める水準も高くなりました。最近では、手で押すポンプ式のアルコールボトルよりもオートタイプのディスペンサーのニーズが上がっています」(戸室氏)

 こうした消費者の声を拾い上げるとともに、同社では小売業側の要望も広く集めている。たとえば、「アルコールボトルの補充が大変」、「大型の消毒器は設置が難しい」、「スタンドが高すぎて、アルコールが子供の目に入る危険性がある」などだ。

「消費者と事業者のニーズに応えたディスペンサー「UD-1600」」(写真:左)と「「UD-1600」の設置イメージ。スタンドの高さが調節できる」

 そこで同社では、従来のアルコールボトル(容量1L)から容量を1.2Lに増やし、スタンドの高さが調節できるオートタイプのディスペンサー「UD-1600」を新たに開発した。「UD-1600」はアルコールが真下に吐出される設計のため、従来タイプよりも液の飛び散りが少ない。また、同社が開発した手指消毒ローション「アルソフト」(手に取るときにはジェル状で、塗り広げることで液体へと変化するアルコール消毒剤)にも対応しているため、アルソフトを充填すれば液の飛び散りはさらに軽減される。

 「感染対策は店選びの基準になっており、いまや無視することはできません。これからもエビデンスを重視しながら、消費者と事業者のニーズに応えた感染対策を提案していきたいと考えています」(戸室氏)

 

衛生教育の動画配信サービス「おしえて!さらちゃん」

HACCP運用を支援する「 GRASP-HACCP」

 世の中がコロナ対策に明け暮れたこの2年の間に、実は食品スーパーにとって重要な制度がスタートした。「HACCP(ハサップ)」である。2018年6月に可決した改正食品衛生法によって、20年6月1日よりHACCP導入の義務化が始まり、1年の猶予期間を経て、21年6月からはHACCPの完全義務化がすべての食品関連事業者に求められるようになった。

 そもそもHACCPとは、「Hazard(危害)」「Analysis( 分析)」「Critical (重要)」「Control (管理)」「Point (点)」の5つの単語の頭文字に由来する、衛生管理の手法のこと。具体的には、原料の受入から製品の納品まで、食品製造における1つの作業を「1工程」として区切り、各工程から食中毒や健康被害を引き起こす原因(危害要因)を見つけて危険性を減らす対策を考えて管理するシステムである。WHO(世界保健機関)とFAO(国連食糧農業機関)が合同で運営している食品規格委員会によって発表されており、国際的に認められているものだ。すでに韓国や中国などでは導入されており、食品の流通・製造のグローバル化を背景に、ついに日本でもHACCPが制度化された。

 「従来の検査とは異なり、HACCPでは記録が重要になります」(戸室氏)
 これまでは抜き取り検査が主流だったため、問題が見つかれば、すべての商品を廃棄する必要があるものの、問題のある商品が検査対象から漏れてしまう場合もあった。

 一方、HACCPでは全工程において危険を予測し、それらを防止するために継続的に管理して記録に残す。そうすることで、問題のある商品の出荷を防げるだけでなく、万一、問題が発生した場合も、どの段階でその要因があったのかを迅速に調べることができる。だが、記録に残すことは事業者にとっては容易なことではない。手間がかかるうえ、うっかり忘れてしまう場合もあるだろう。

 そこでサラヤが提案するのが、記録管理を省力化するシステム「GRASPHACCP(グラスプ-ハサップ)」だ。HACCP運用で重要な温度管理や帳票記録を各種測定器と連動し、自動で記録・管理を集約化する。IoT技術を活用したクラウドサービスであるため、記録したデータはパソコンやスマホからいつでも確認ができる。

 「もっと楽に効率よく記録管理できるようにGRASPを開発しました。今後はさらにシステムの機能を拡充していく予定です」(戸室氏)

「衛生管理の見える化システム「GRASP-HACCP」の機能イメージ」

※出典:スーパーマーケットにおけるHACCPの考え方を取り入れた衛生管理のための手引書

現場の衛生教育をサポート
動画配信サービスも実施予定

 HACCP義務化にあたり、サラヤではハード面だけでなく、ソフト面でのサポートも行っている。その一つが、全国17拠点100人以上の衛生インストラクターの存在だ。これまでも顧客に合わせて現場の衛生管理をサポートしてきたが、HACCP運用に合わせて、よりきめ細かな支援体制を敷いている。

「衛生教育を支援する動画配信サービスのイメージ図」

 「食品衛生の専門家の先生方にアドバイザーになっていただき、HACCPに対応したチェックリストを作成し、現場に適したマニュアルづくりとその運用を支援しています」(戸室氏)

 さらに、事業者へのヒアリングから「衛生教育の機会が少ない」「教える人の衛生知識が少ない」といった声が聞かれたことから、今秋より衛生教育の動画配信サービスを開始する。

 「コロナ禍で感染対策に関するWebサービスを実施したところ大変好評だったため、この仕組みを生かして、幅広く教育支援も行っていきます」(戸室氏)

 衛生分野のトップ企業として、サラヤではコロナ対策もHACCP対応もハードとソフトの両面から小売業の衛生対策をサポートしていく考えだ。

 

衛生教育の動画配信サービス「おしえて!さらちゃん」