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オススメの一冊、『関西スーパー争奪 ドキュメント 混迷の200日』

『関西スーパー争奪 ドキュメント 混迷の200日』
『関西スーパー争奪 ドキュメント 混迷の200日』
日本経済新聞社=著(日経BP、日本経済新聞出版刊/1600円〈本体価格〉)

 2021年、小売業界で最も注目を集めた再編といえば、百貨店や食品スーパー(SM)を抱える関西地盤のエイチ・ツー・オー リテイリング(大阪府/荒木直也社長:以下、H2O)と関東地方でディスカウントSMを展開するオーケー(神奈川県/二宮涼太郎社長)による、関西スーパーマーケット(兵庫県/林克弘社長:現・関西フードマーケット、以下、関西スーパー)争奪戦だろう。

 関西スーパーは21年8月、H2Oとの経営統合を発表したが、株式の約8%を保有していたオーケーがこれに反対。TOB(株式公開買い付け)による完全子会社化の意思を表明した。最終的に法廷闘争にまで発展したものの、最高裁判所がオーケーの抗告を棄却し、当初の予定どおりH2Oによる買収が決定した。22年2月、関西スーパーは関西フードマーケットに商号変更し、事業を承継させた新生関西スーパーマーケット(兵庫県/福谷耕治社長)、H2O傘下のSM企業イズミヤ(大阪府/梅本友之社長)、阪急オアシス(同/永田靖人長)の3社を傘下に抱える中間持ち株会社となった。本書は、この一連の騒動の舞台裏を、日本経済新聞社が関係者への独自の密着取材によりまとめ上げた一冊だ。

 本書は8章構成で、H2O、関西スーパー、オーケー3社それぞれの思惑から法廷闘争にまで発展した株主投票の裏側、3社のこれまでの歴史と今後の展望に至るまで綿密な取材で明らかにしている。

 2章「スーパーの教科書」では、H2Oとオーケーがこれほどまでにほしがった関西スーパーの歴史を解説。同社は、もともと問屋業を営んでいた創業者の北野祐次氏が取引先に同行してセルフサービス式のSMを訪れたことをきっかけに設立された。1959年12月に1号店をオープンして以降、青果の鮮度管理などSMの運営手法を確立。65年から北野氏はオール日本スーパーマーケット協会(AJS)の会長を務め、同業他社に自社のノウハウを惜しみなく公開し関西スーパーは「スーパーの教科書」と呼ばれた。このとき同社から経営ノウハウを習得したSMの1つがオーケーだ。

 本書は3社の関係性や思惑を明らかにするとともに、株主総会の運営方法などの問題点も明らかにしている。企業運営に関しても参考になることが多い一冊だ。 

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