パートタイム労働者、とくに配偶者のいる女性パートタイマーは、小売企業にとって重要な戦力である。だが、パートタイム労働者の就労には103万円、106万円、130万円、150万円といった“壁”があるといわれる。それら“壁”を下回る年収に抑えるよう就労時間を調整する就労調整が行われることは、小売企業にとって頭の痛い問題である。本稿では、パートタイム労働者に立ちはだかる収入の「壁」をあらためてまとめ、その対処法について考えてみたい。
パートタイム労働者の「3つの壁」とは
パートタイム労働者の就労に際して収入の「壁」があるのは周知のとおりだが、そもそもこの「壁」は大きく3種類ある。1つめが「税金の壁」、2つめがパートタイム労働者の配偶者の勤務先が支給する「配偶者手当の壁」、そして3つめが「社会保険料の壁」である。
1つ目の税金の壁の歴史を振り返ると、1961年に「配偶者控除」が創設され、納税者と生計を一にする配偶者の年収が所定の金額以下の場合に所得税と住民税の控除が受けられるようになった。しかし、収入が所定の金額を超えると控除が適用されず、世帯の手取りが減少する「手取りの逆転現象」が生じてしまう。そこで「配偶者特別控除」が87年に導入された。収入103万円を超えても141万円までならば、収入に応じて控除額を段階的に引き下げて適用する措置がとられたことで「手取りの逆転現象」は解消された。
その後、時代の変化とともに、パートタイム労働者の時給が上昇したことから、配偶者控除が見直されることになった。2018年1月施行の税制改正によって、満額の配偶者控除を受けられる収入の上限額が103万円から150万円に引き上げられ、税金面での「手取りの逆転現象」の解消状態は保たれている。
一方、「配偶者手当の壁」は、依然として就労調整の要因となっている。
人事院の21年調査によると
・・・この記事は有料会員向けです。続きをご覧の方はこちらのリンクからログインの上閲覧ください。