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赤字幅縮小も5期連続の最終赤字、岐路に立つミニストップ2022年2月期決算

ミニストップ(東京都/藤本明裕社長)が4月8日に発表した2022年2月期連結決算は、営業総収入が1836億円(対前年101.9%)、営業損失が31億円(前期は55億円の営業赤字)、当期純損失が38億円(前期は64億円の純損失)と前期に続いて最終赤字となった。

赤字圧縮も5期連続の最終赤字

 18年2月期より5期連続で赤字決算が続いているミニストップ。この間に純資産は587億円(18年2月期)から284億円(22年2月期)に減少、自己資本比率は24.3%にまで減少した。仮にこの状況が続くとすると、同社は5年後に債務超過に陥ることになる。

 国別の営業利益(損失)の概況を見ていくと、国内事業は13億円(前期から18億円改善)の営業損失と赤字幅を大きく縮小させた。コロナ禍の生活様式に対応した店舗・商品施策により既存店日販は41万2000円と、コロナ前(42万6000円:20年2月期)には届かないものの、前期(40万5000円)を大きく上回った。加えて事業構造改革により、販管費を合計で23億円削減した。

 海外に関しても、韓国事業は11億円の営業損失(前期から1億円改善)、青島事業は3億円の営業損失(同2億円改善)、ベトナム事業は4億円の営業損失(同2億円改善)といずれも赤字を圧縮させている。

加盟店契約を見直し、セルフレジ導入も推進

 22年2月期は、日販の回復を図るため、「毎日行きたくなる食事のデスティネーションストア」を掲げ、こだわり商品を軸とした商品政策に尽力してきた。とくに主力として期待するのが、昨年3月にスタートした「やみつキッチン」だ。「チャーシュー弁当」や「ずっしり極!タルタルチキン南蛮弁当」など、値段も手ごろでボリュームもありさらに付加価値も実感できる商品が話題を呼んだ。

 店舗数は絞り込みを続け、22年2月末時点の期末店舗数は前期より40店減の1959店舗となっている。

 店舗との契約も見直し、新たに「ミニストップパートナーシップ契約をスタートさせた。今までは「店舗売上-本部収入-人件費・廃棄費用」を店舗が取るマージンとしてきたが、新契約では「店舗売上-人件費・廃棄費用」を本部と加盟店で分け合うかたちとする。つまり人手不足に伴う人件費負担や廃棄ロスの問題を、本部と店舗が一緒になってめざす契約形態に改めたのだ。

 さらには店舗のローコストオペレーションの実現をめざし、セルフレジ導入を積極的に進めた。22年2月末における導入実績は600店舗を超える。

韓国・フィリピン撤退で経営資源を国内とベトナムに集中

 23年2月期の業績予想では、営業赤字2億円(前期からが29億円増)、当期純利益102億円(前期から140億円増)をめざすミニストップ。これを実現すべく、同社は今年1月に発表したとおり、3月に韓国・フィリピンからそれぞれ撤退。韓国事業に関してはロッテグループ、フィリピン事業は合弁先の地元企業にそれぞれ売却する。

 とくに韓国事業はミニストップにとって国内を上回る主力事業で、店舗数も日本より多い。撤退により営業総収入が単純計算で半分以上落ち込む。それでも売却せざるを得なかったのは、収益性の悪化にある。

 韓国は、日本を上回る“コンビニ社会”で、人口5000万人に対し店舗数は4万を超える。1997年のIMF危機以降、サラリーマンの多くが起業に流れ、コンビニ経営者が乱立した。

 一方で、韓国の上位コンビニ企業は、トップのCU(シーユー)が普光グループの傘下にあるように、どこも財閥グループがバックに控えており、資金力を背景に体力勝負を仕掛けてくる。結果として、競争は激化し、マージンは低くなる。以前、同国に進出したファミリーマート(東京都)とローソン(東京都)も14年までに撤退している。

グループ内でゆらぐミニストップの立ち位置

 ミニストップは23年3月期、国内とベトナムに経営資源を集中する方針を打ち出している。ベトナムではイオン(千葉県)グループ支援のもとでプロジェクトを発足、現地とグループのノウハウを集約させ新しいワンストップ型のコンビニ店舗確立をめざす。

 国内コンビニの日販は前期比104.0%をめざし、営業赤字の圧縮につなげる。純利益に関しては、韓国事業譲渡益により大幅な黒字を確保できる見通しだ。

 ミニストップが打ち出す店内調理拡充・デリバリー強化・冷食の充実……といった施策は、いずれも競合他社も手掛けている。レッドオーシャンの戦いは体力のある方が圧倒的に優位だ。

 ミニストップの店数は2000店前後と、国内2万店舗体制を築いた「セブン-イレブン」はもちろん、ファミリーマート(1万6000店前後)、ローソン(1万4000店前後)にも遠く及ばない。日販もセブンイレブン(64万6000円、22年2月期実績)、ローソン(49万8000円、同)に水をあけられている。体力的にはミニストップは間違いなく不利だ。

 とくに店内調理に関しては、コンビニだけでなく食品スーパーも注力しているほか、外食産業もテイクアウトを強化している。しかもコンビニ事業は、同じイオングループのまいばすけっと(神奈川県)とも一部競合する。まいばすけっとは同グループが大都市圏を中心に展開する小型スーパーで、大手コンビニからも「コンビニキラー」として怖れられている。

 まいばすけっとの台頭で、グループ内でのミニストップの存在感はますます薄くなる。イオングループのコンビニ事業として、ミニストップは大きな岐路に立たされている。