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そごう・西武、イトーヨーカ堂のゆくえを井阪社長が言及! セブン&アイ2022年決算解説

セブン&アイ・ホールディングス(東京都/井阪隆一社長)は4月7日、2022年2月期通期決算を発表した。米投資会社バリューアクト・キャピタルからの経営改善要求が取り沙汰されるなど、アクティビスト(物言う株主)への対応が注目されるセブン&アイ。電話会見形式で開催された決算説明会で井阪社長は何を語ったのか。

セブン&アイは4月7日、決算説明会を開催した

連結決算は増収増益、海外CVS事業が牽引

 セブン&アイの2022年2月期通期決算が発表された。連結営業収益は対前期比51.7%増の8兆7497億円、営業利益は同5.8%増の3876億円、経常利益は同0.3%増3585億円、当期純利益は同17.6%増の2107億円と、減収減益に沈んだ前期から一転、増収増益を果たした。

 セグメント別に業績を見ていくと、セブン-イレブン・ジャパン(東京都:永松文彦社長:以下、セブン-イレブン)を中核とした「国内コンビニエンスストア事業」の営業収益は同1.7%増の8732億円、営業利益は同4.4%減の2233億円。既存店売上高は弱含みで推移したものの、前期がコロナ禍の影響を強く受けたこともあり、営業収益は前期実績を上回った。ただ、商品粗利益率の低下(同0.3%減)と販管費の上昇(同2.8%増)により、営業利益は前期を下回った。

 なお、セブン-イレブンのチェーン全店売上高は同1.7%増の4兆9527億円、期を通しての平均日販は前期実績から4000円増の64万6000円だった。セブン-イレブン・沖縄を含めた期末の国内グループ総店舗数は2万1327店舗となっている。

 セブン&アイがグループの成長ドライバーと位置づける、7-Eleven,Inc(セブン-イレブン・インク)を中心とする「海外コンビニエンスストア事業」の営業収益は130.5%増の5兆1943億円、営業利益は62.0%増の1598億円だった。21年5月にマラソン・ペトロリアムより買収したガソリンスタンド併設型コンビニ「スピードウェイ」事業の業績が加算されたことにより、大幅な増収・営業増益を果たしている。

 これにより「国内コンビニエンスストア事業」と「海外コンビニエンスストア事業」の合計営業利益は3831億円。連結営業利益は3876億円であり、国内外のコンビニ事業でグループ全体の営業利益の約98.8%を稼いでいることになる。

スーパーストア、百貨店は苦戦続く

 祖業の総合スーパー(GMS)のイトーヨーカ堂(東京都/山本哲也社長)、東北地盤の食品スーパー企業ヨークベニマル(福島県/真船幸夫社長)、首都圏でスーパーを展開するヨーク(東京都/大竹正人社長)などからなる「スーパーストア事業」では、営業収益が前期から横ばいの1兆8107億円、営業利益が同36.7減の187億円だった。

 このうち主要事業会社の業績を見ていくと、イトーヨーカ堂は営業収益が同1.2%減の1兆675億円と減収、営業利益も16億円と低水準でなんとか黒字を維持したという格好となっている。ヨークベニマルもコロナ特需の反動を受け、営業収益は4781億円と横ばいだったものの、営業利益は147億円と同11.1%減と減益となっている。

 そごう・西武(東京都/林拓二社長)を含む「百貨店・専門店事業」も営業収益こそ同4.0%増と前期を上回ったものの、81億円の営業赤字を計上している。

事業ポートフォリオ見直しでそごう・西武はどうなる?

 さてセブン&アイは決算発表と同日に、株主をはじめとしたステークホルダーに向けて「世界トップクラスのグローバル流通グループへの進化を目指して」と題した経営メッセージを発信している。

 セブン&アイの経営を巡っては、22年2月に米投資会社のバリューアクト・キャピタルがそごう・西武の売却、イトーヨーカ堂の売却・スピンオフを提案する公開書簡を発表。“稼ぎ頭”であるコンビニ事業に経営資源を集中させるよう、事業ポートフォリオの見直しを迫っている。

 セブン&アイの井阪社長はメッセージ発信の背景について「当社は22年に入ってから、社外取締役も交えながら株主との面談を重ねてきた。その結果を踏まえ、改めて当社の経営の現状にご理解をいただくためにこのようなメッセージ発信に至った」と話す。

 注目されるのはそごう・西武、イトーヨーカ堂についての方針だが、同メッセージでは「事業ポートフォリオの見直しと最適運営に向けたアクションの加速」(資料より)を進めていくとし、そごう・西武については、「構造改革を進めながら、並行してベストオーナーを探すことも検討していく」(井阪社長)とのことで、初めて公式に売却の可能性を示唆した。

 そごう・西武では現在、ファイナンシャルアドバイザーを起用し、「ストラテジック・レビュー」(事業の戦略的見直し)を実施しているとのことだが、条件さえ整えば売却に至る可能性が高そうだ。

縮小続くイトーヨーカ堂の未来は

 一方で、イトーヨーカ堂については、「22年度(23年2月期)中に構造改革にメドをつけ、次年度以降は新たな成長ステージにしていく」と井阪社長は述べている。

 セブン&アイは「中期経営計画」の中で、食品事業を戦略的な成長領域と位置付け、その強化を図っていく方針を打ち出している。そしてその中ではイトーヨーカ堂が有する産地把握、商品調達、生産管理などの知見が不可欠であるとし、「イトーヨーカ堂を中心としたスーパーストア事業とコンビニ事業がグループ内にあることが将来の成長に資する」(井阪社長)と、売却は考えていないことを強調した。

 

 今後のグループの事業方針では、国内外のコンビニ事業の連携により利益成長を加速させるとし、セブン-イレブン・インクについては昨年買収した米スピードウェイとの統合シナジー発揮に力を入れる。セブン-イレブンとの連携によるバリューチェーンの構築、PB商品やフレッシュフードの拡充、レストラン事業拡大などにより、セブン-イレブン・インクでは25年度まで年平均の純利益成長率20%超を見込む。

 そのほかグローバル戦略としてセブン-イレブンとセブン-イレブン・インクとの共同出資で7-Eleven International LLC(セブン-イレブン・インターナショナルLLC)を21年に設立。詳細なロードマップは今後公表するとのことだが、30年度までに全世界30の国と地域での事業展開をめざすとしている。

 株主に向けたメッセージで掲げたとおり、「世界トップクラスのグローバル流通グループ」になるべくアクセルを踏み込んだセブン&アイ。グローバルリテーラーをめざす中では、そごう・西武やイトーヨーカ堂などグループ内で燻る事業会社の行方がやはり焦点になりそうだ。