日本百貨店協会によれば、2021年の年間売上高は、4年ぶりに前年実績を上回り、対前年比5.8%増の4兆4182億円となった。ただ、コロナ禍前と比較すると年間売上高は21.5%減と、1兆5000億円も売上高を落としている。一時期、百貨店業績の回復を引っ張ったインバウンド売上も、19年のピークから86.7%減と減少に歯止めがきかない。
地方百貨店の閉店相次いだ2021年
店舗数の減少も続いている。2020年1月に207店あった店舗数は、21年1月には196店、22年1月時点では189店まで減少(いずれも日本百貨店協会公表資料より)。21年は、「西武そごう川口店」「三越恵比寿店」「三田阪急」「松坂屋豊田店」など地方店舗の閉店が続いた。
電鉄系百貨店でも、建て替えにより小田急百貨店が22年9月末で、新宿店本館の営業を終了。建物跡地には地上48階・地下5階、高さ約260メートルの高層ビルが29年竣工予定だ。東急百貨店も、東急本店を23年1月の閉店を発表している。またセブン&アイ・ホールディングス(東京都)傘下のそごう・西武(東京都)は売却先の選定に入っており、従来型百貨店モデルの厳しさが日々、明らかになっている。
間もなく、2月決算、3月決算企業の2022年決算が発表になる。インバウンドなき後、百貨店業界は新たな業績回復テーマを見つけることができたのだろうか。各社の決算発表を待つ前に、21年決算での売上ランキングはどうなっていたのか、ここで振り返っておこう。
上位30社すべてが減収、波乱の2021年決算
百官店の2021年決算では、売上上位30社すべての企業が減収、そのうち22社が20%以上の減収幅を記録した。最終利益面で黒字を確保できたのはわずかに3社で、そのほか27社は最終赤字を計上している。
とくに、事業規模の大きな上位企業の売上・利益の落ち込み幅が激しかった。売上上位5社の顔ぶれと通期売上高は、髙島屋(大阪府)が5407億円、そごう・西武(東京都)が4404億円、大丸松坂屋百貨店(東京都)が4346億円、三越伊勢丹(東京都)が4330億円、阪急阪神百貨店(大阪府)が3481億円となっている。
いずれも前年から20~30%台の減収で、全社とも最終赤字を計上した。赤字額は髙島屋が336億円、そごう・西武が172億円、三越伊勢丹が137億円と中堅以下と比べて桁違いの額に上っている。
2022年も厳しい状況は変わらず
22年決算の進捗状況は、期中で個別の業績を明らかにしている主要百貨店のうち、営業黒字は阪急阪神百貨店の1社のみとなっている(約10億円)。
売上業界トップの高島屋は第2四半期時点で営業赤字68億円、三越伊勢丹は第2四半期の営業赤字は48億円になり、同時に業績の下方修正も行った。そごう・西武は第3四半期累計で営業赤字63億円、大丸松坂屋百貨店は同時期の累計で収益状況を大きく改善させているが営業黒字への反転にまでは至っていない。
百貨店主要各社は、第4四半期に業績回復を見込んでいる。しかし、多くが営業赤字幅の縮小にとどまり、通期予想で営業黒字を見込むのは阪急阪神百貨店だけだ(2億円)。同社では建て替え工事を進めていた「阪神梅田本店」が、22年春に地下食料品売場を拡大し、いよいよグランドオープンする。
日本百貨店協会の公表資料によると、22年に入ってからの状況は、どん底状態からは少しずつ脱しかけているとんことだが、高級ブランド、時計、宝飾品など高額商材が大きく伸長し、大都市店と地方店との格差も拡大するなど、百貨店が高質な商品とともに文化の香りを広く伝えてきたモデルに別れを告げ、ごく一部の限られた層に依存するモデルに向かってしまうのだろうか。