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西友、楽天との新しい協業策を発表! 大久保恒夫社長が語ったOMO戦略と西友の最新業績とは

2022年3月10日、西友(東京都/大久保恒夫社長)は、楽天グループ(東京都/三木谷浩史会長兼社長)と共同で進めるOMO(オンラインとオフラインの融合)戦略について明らかにした。国内で盛り上がるネットスーパー市場をどのように取り込むのか、そしてデジタルマーケティングを活用して、リアル店舗でどのように集客を図っていくのか。

3月10日、西友と楽天グループは新たなOMO戦略を発表した。写真左は楽天グループの三木谷会長兼社長、右は西友の大久保社長

空白だった西友の業績が明らかに

 ウォルマートの子会社になって以降、西友は業績の公開を行っていなかった(正確には既存店売上高対前期比のみ公開)が、この度初めて公開された。

 21年度実績の売上高は7373億円。キャッシュベースの本業の儲けを表すEBITDA(利払い前・税引き前・減価償却前利益)は419億円で、売上高対比で5.7%となった。コロナ禍で売上が跳ね上がった20年度は「イレギュラーな年」だったとして、21年度は過度な価格競争には参入せず収益確保を優先する戦略を採った。結果、売上高は対前年度比で微減となったものの、利益面はウォルマート傘下の過去16年間で最高を達成した。

 22年度の目標売上高は同2.6%増となる7562億円。営業利益は226億円で、営業利益率は食品スーパー業界でも及第点といわれる3%をめざす。

 西友は今後さらなる成長を図るべく、ネットスーパーをさらに強化するとともに、楽天と共同でデジタルマーケティングを推進し、日本を代表する「OMOリテーラー」になることを目標にしている。
 では具体的に、どのような戦略でネットスーパー事業の飛躍と同時にOMO戦略を実行していくのか?

ネットスーパーの流通総額
1000億円を前倒しで達成へ

 まず西友のネットスーパー事業について簡単にまとめておきたい。同社は2000年に国内で初めて「ネットスーパー」事業を開始。長らく単独で事業を展開してきた。その後、18年に楽天と共同で「楽天西友ネットスーパー」を始めている。

 現在は店舗出荷型(124店舗)と倉庫出荷型(千葉・柏、神奈川・港北、大阪・茨木、千葉・松戸<23年稼働予定>の計4箇所)のハイブリッドで事業を進めている。店舗出荷型は「多くの店舗で黒字化を達成している」(西友の大久保恒夫社長)そうで、21年度実績の流通総額は対前年度比26%増の500億円。うち倉庫出荷型は同79%増を達成している。
 西友は、24年までに流通総額1000億円をめざしており、計画を前倒しで達成する予定だ。

「楽天カード」、新規アプリを導入
楽天IDで店舗とネットを紐づける

 この度発表された西友のネットスーパー戦略、並びにOMO戦略は以下の通りだ。

 主な内容は、楽天の“エコシステム”を活用し、オンラインとオフラインのデータを統合してデジタルマーケティングを展開。ネットスーパーの利用者を拡大するとともに、リアル店舗における客層拡大を進めるというものである。

食品スーパーでは初の取り組みとなる「楽天カード」である、「楽天カード 西友デザイン」を導入する

 まず西友は4月1日より、食品スーパーでは初の取り組みとなる「楽天カード」である、クレジットカード機能付きのオリジナルデザインカード「楽天カード 西友デザイン」を発行。また同月5日には、付帯するプリペイド式電子マネー「楽天Edy」も西友全店で利用可能にする。

 さらに4月26日には、現在の「楽天西友ネットスーパー」アプリに、店舗でも使える機能を追加して「楽天西友アプリ」としてリリースし、ネットスーパーでもリアル店舗でも利用できるアプリに進化させる。

「楽天西友アプリ」のイメージ。リアル店舗、ネットスーパーの双方で楽天ポイントを貯め、使用もできる

 これら施策により、従来西友はハウスカードを導入していなかったため顧客ごとの購買履歴を取得・分析することはできてなかったが、これが可能になる。楽天のIDによって店舗とネットスーパーのデータも紐づくため、一人ひとりの店舗・ネット双方の利用動向に沿ったマーケティング施策が可能になるというわけだ。

  このOMO戦略を軌道に乗せるために西友・大久保社長は「アプリのダウンロード数を増やすことが重要」と語り、その数を22年中に120万超、25年までに500万超に伸ばしたい考えだ。そして「楽天カード 西友デザイン」の利用者数については、22年中に500万人、25年までに700万人の達成をめざす。

 

リアル店舗の
客層を拡大する

 大久保社長が説明する、西友が楽天との協力関係を強化する理由は大きく3つだ。

①楽天経済圏は会員数が多く、IDでつながっている。その経済圏にリアル店舗とネットスーパーを展開する西友が入ることで、より大きな経済圏ができる。
②楽天経済圏の客層と西友の既存客層が違うため、客層の広がりが見込める
③楽天は膨大なデータと、ビッグデータを分析して消費行動を理解するAIツール「Rakuten AIris(楽天アイリス)」を持っており、デジタルマーケティングを強化したいと考えている西友にとってメリットが大きい。

大久保社長は楽天グループとの協業強化で、デジタルマーケティング領域でも業界ナンバーワンの食品スーパーをめざす

 とくに客層の拡大について言えば、西友でもリアル店舗の客層の高齢化は深刻な課題となっている。20〜50代女性の顧客比率は、西友店舗ではわずか34%だが、楽天西友ネットスーパーでは73%を占める。このことから大久保社長は「今のリアル店舗の客層をネットスーパーとデジタルマーケティングで拡大していけば、企業を発展させられる」と説明する。

 21年3月に大久保氏をトップに据え、新たなスタートを切って以降、着実に成長を遂げている西友。楽天との新たなOMO施策により、デジタルマーケティング領域についても弾みをつけることができるのか、業界中が注目している。