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販売員が年収1000万円超を目指せる!EC売上500億円超のベイクルーズが店舗接客を重視する理由

コロナ禍による生活様式の変化により、店舗への来客が減っているアパレル各社。その中で500億円を超えるEC売上高を記録しているのがベイクルーズ(東京都/杉村茂CEOだ。しかし、ECが好調である同社が重視するのは、意外にも店舗接客だという。その理由や、同社の販売スタッフのキャリアについて、広報の菅悦子氏と、Deuxieme Classe (ドゥーズィエム クラス)」有楽町店の販売スタッフ阿部栞氏に聞いた。

販売のキャリアを極めることで、年収1000万円を目指せる

「Deuxieme Classe(ドゥーズィエム クラス)」有楽町店内観

 アパレル販売員のキャリアは副店長になり店長になるというのが定石で、それ以外のキャリアが描きにくく行き詰まりを感じる人は多い。給料を上げるためには、バイヤーやプレスなどほかの職種に転向し、本社に行かなくてならないと考える販売員がかつてはほとんどだった。

 しかし、「ベイクルーズでは販売はクリエイティブな仕事であり、プライドをもって続けてもらえる仕事だと考えている」と、広報の菅悦子氏は話す。同社は、販売員の給料体系を変えるなどさまざまな取り組みを行ってきた。その取り組みのひとつが『ベイスター制度』だ。

 ベイスター制度とは、約2000名の販売員から優れた販売成果を出したスタッフを選出する制度のことで、2014年にスタートした。一定の予算、エントリー募集をクリアした対象者は希望すれば、ベイスターの選考を受けられる。役員面接を行い、販売に対する考え方を確認し、接客にクリエイティビティや独自性があるか、といった観点で選出される。現在は、約50名のスタッフが認定されている。

 ベイスターに選ばれると、毎月の給料に加えてランクごとに手当が支給されるので、給料アップにつながる。ベイスター制度は販売員が対象となるベイスターFA(ファッションアドバイザー)と、店長が対象となるベイスター店長の2種類があり、店長職は両方を兼任することも可能だ。ベイスターFAとベイスター店長の両方で最高ランクに認定された場合、年収は1000万円を超える。販売のキャリアを極めることで年収1000万円以上も目指せるのだ。

「ベイスター」を目指すことが、販売スタッフの目標に

阿部氏のスタイリング

 2021年前期、ベイクルーズ全社の個人売上1位を記録した「Deuxieme Classe(ドゥーズィエム クラス)」有楽町店の阿部栞氏は、ベイスターに認定された一人だ。  

 「ベイスターになることを目指して、日々頑張ってきた。一定の売上を達成するとエントリー資格があるという通知がくる。1度めは落ちてしまったが、2度めに受かり、その後は2年連続でベイスターになることができている」。

 ベイスターになって良かった点について尋ねると、「接客において自分が大切にしてきたこと、毎回お客さまに伝えていることなど、これまでの行動を改めて振り返って、自分の販売スタイルを深掘りするきっかけになった」と話す。また、「普段は関われない、ベイクルーズ グループのほかのブランドの販売スタッフとも交流し情報交換ができることで、接客スキルが上がったと感じている。自分の販売スタイルや事例を発信したり、後輩にロープレなどで指導する機会も増えている」と言う。

 菅氏によると、ベイスターには非常に個性的なスタッフが選ばれているという。「ベイクルーズには接客マニュアルがない。型にはまった接客ではなく、自分の考えを持って接客をしているか、ブランドの垣根を越えて影響力を持ちたいという意欲はあるかなど、ベイスター制度は毎年新しい制度を作るかのように、選考内容を検討しアップデートしている」。優秀な販売人材を会社が見出し評価することで、販売員はパーソナルスタイリストのプロとして、接客に特化した新しいキャリアを描くことができる。

電話接客やSNSの活用 販売現場は変化しても、最重要は店頭接客

 リモートワークが定着したことで、人びとの生活や消費スタイルは大きく変わった。販売のプロフェッショナルはコロナ禍による変化をどう感じているのだろうか。阿部氏は「有楽町店の場合、以前は銀座界隈で働く方々が仕事帰りに寄られていたが、出勤回数が減り、洋服を購入する機会も減ったという方が多い」と話す。

 こうした変化によって、最近増えているのが電話での接客・販売だ。「ECではわかりにくいサイズ感や素材感を知りたいと、お問い合わせがある」(阿部氏)

 こうした電話には従来の顧客だけでなく、新規客もいるのだという。「お客さまの身長や体型、好みなどを聞きながら電話接客している」(同)

 ブランドの公式SNSを活用して、コーディネート例を見せることも増えた。

 このように、接客スタイルや販売ルートは多様化しているが、ベイクルーズが一貫して最重要視しているのは店舗接客だ。「ベイクルーズは店舗こそがブランドの表現の場だと考えている」と菅氏は語る。

 「アパレルはECシフトだとよく言われるが、売上の半分以上がECになった私たちの考えは真逆。ECで購入してもらうには、店舗で接客を受けてお客さまにブランドの世界観に触れていただくというステップが欠かせないからだ」(菅氏)。実際に、ベイクルーズのEC売上は店舗があるエリアで多く、店舗のないエリアでは少ない傾向があるという。

 現場の最前線で活躍する阿部氏に、接客において大事にしていることを聞いた。「まずは、自分自身がヘアメイクを含めて毎日のスタイリングにこだわること。自分のマインドもよくなるし、自分がお客さまなら、おしゃれで輝いている人に接客をされたいと思うから」。

 阿部氏はスタイリング提案にも力を入れている。「この色や形は似合わないからと決めつけてしまっているお客さまは意外に多い。私自身、思いもよらなかったスタイリングを先輩に提案され、ファッションの幅が広がった経験がある。お客さまにもファッションの楽しさを実感してほしいので、ニーズ以外でも必ず似合うと思ったアイテムを理由を添えてご紹介している」。

 こうした接客にプライドをもって働く販売のプロフェッショナルがいるからこそ、ベイクルーズの快進撃があるといえるだろう。