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ヤオコー旗艦店内にも! 無印良品のSM隣接出店の効果は?

「無印良品」を展開する良品計画(東京都/堂前宣夫社長)が、食品スーパー(SM)に隣接する店舗の出店を加速させている。これは、2030年までの長期ビジョンの1つとして掲げた、日常生活の基本を支え、地域課題の解決や活性化にも貢献する「地域への土着化」を達成するための施策の一環だ。本稿では、同社の228月期第1四半期の業績と、決算発表会で言及された地域密着戦略の状況について解説する。

良品計画の堂前宣夫社長

1四半期は増収減益

 良品計画の228月期第1四半期の連結業績は、営業収益1229億円(対前年同期比6.9%増)、営業利益111億円(同15.3%減)、経常利益117億円(同12.9%減)、四半期純利益78億円(同36.0%減)の増収減益だった。国内外の出店数の増加によって、営業収益は過去最高の実績となった一方、「衣服・雑貨」の販売が低調で営業総利益が伸び悩んだことなどにより、営業利益以下の段階利益はすべて減益となった。

 国内事業のECを含む部門別の既存店売上高対前年同期比をみると、「衣服・雑貨」は同13.8%減、「食品」は同7.1%減と低調な一方、「生活雑貨」は9月に価格改定した羽根まくらやタオルなどが好調だったほか、ヘルス&ビューティ商品も伸びたことにより、同3.2%増となった。食品の低調について、堂前社長は「去年の同時期、食品は非常に伸びた。コロナ禍の影響だけではなく、いろいろなメディアに取り上げられたという要因が大きい。今期はそのブームが落ち着き、想定まで戻っている」とコメントした。

日常商品の訴求で客数・客単価アップを図る

 注目したいのが、既存店の客数と客単価だ。客単価は同6.1%減である一方、客数は同1.6%増と伸びている。良品計画は日常的に無印良品を利用してもらうため、靴下や下着、タオル、洗濯用品・掃除用品など、普段の生活に必要な基本商品群の品揃えを拡充している。この施策が消費者にも徐々に浸透しつつあり、日常的に無印良品を訪れる人が増えているとのことだ。

良品計画は生活に必要な基本商品の拡充を進めている(写真は2020年10月に撮影)

 堂前社長は「こうした商品群はお客さまに支持されてはいるが、価格が低いため必然的に客単価も下がることになる」としながら、「今後もこういった商品を使っていただくため、カレーなど他の商品を買いに来た人にも伝わるように売場で訴求しなくてはならない」と、客数・客単価はまだまだ伸びる余地があることを示した。

新店の約7割がSM隣接型に

 日常的に使用する商品を拡充するほか、これまで以上に地域や生活者に身近な存在になるために良品計画が近年注力しているのが、SMに隣接する立地への出店だ。2111月には、埼玉県を本拠とするSM企業ヤオコー(川野澄人社長)の新たな旗艦店「ヤオコー和光丸山台店」(埼玉県和光市)の2階に「無印良品ヤオコー和光丸山台」(同)を出店するなど、SMの店内や敷地内への出店を加速。こうしたSM隣接型店舗の業績は好調に推移しているとのことだ。

ヤオコー和光丸山台店の2階に無印良品が出店した

 堂前社長は「(SM隣接型店舗は)非常に可能性が高い。同じ建物内や別棟での出店など、さまざまなパターンの出店形態がある。現時点では、別棟で出店しながら、1階など同じ階層で買い回りしやすく、われわれとSM以外のテナントも入る『コミュニティセンター』としての出店はとくに業績がよい」と、ある程度の「勝ちパターン」が見え始めていることを示した。

 228月期通期の計画では、営業収益4800億円、営業利益450億円、営業利益率9.4%、当期純利益320億円と、期初計画を据え置く。国内出店は前期末差45店舗増の501店舗を計画。新店のうち、約7割がSM隣接型を予定するという。SM隣接型店舗は良品計画のさらなる成長に必要不可欠な存在となりつつあるようだ。